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今井雅子原案「いしぶみ姫」を肥後琵琶風に!

「いしぶみ姫」経緯

この度、clubhouseで人気の「膝枕」を書かれた、脚本家である今井雅子先生の「世にも奇妙な埋蔵プロット」より、「いしぶみ姫」というプロットを拝見しました。

これは肥後琵琶語りにするならば楽しいことになりそうだと作りましたのが、今回の肥後琵琶「いしぶみ姫」異聞伝です。

今井先生のプロットから匂い立つエッセンスを肥後琵琶風に仕上げました。

よろしくお願いいたします。

肥後琵琶「いしぶみ姫」異聞伝

国を申さば 玉石の国 岩砕き右大臣の一人姫
いしぶみ姫と申する姫がおわしたもう。

そのいしぶみ姫の出で立ちは
月の光に照る石の水面に映る星々か
かんばせそれは傾国の楊貴妃にもぞ勝ると声ある美しさ
心根やさしき姫なれば
わずか3歳で観音経を読み上げる観世音菩薩の生まれかわりと申される

さて姫様も12歳となり
まだ幼いといわれども
そのあまりの美しさに縁談の声やむことをしらず

ほとほと困る岩砕き右大臣
「これ、いしぶみよ!そなたは亡き母玉依によく似て
玉の瑕すら見当たらぬ。
されど真にそなたを幸せにしてくれる男を婿にとりたい。」
いかがしようと右大臣思案しておりましたが

いしぶみ、ここでひとつ計らいをと
「我が名、いしぶみにあやかって、
我の心を石文にて射止めた男を婿殿にお迎えいたしましょう」
と一思案
それはよき計らいとすぐさま回状巡らして
求婚もとめる殿方にすぐさま知らせたもう

噂のいしぶみ姫君に石を送れば、傾城の姫君と巨万の富が
手に入ると、日本六十余州、津々浦々の殿方は
様々な石を送り給う

東方 子孫繁栄安産祈願にご利益あると言われる石仏
南方 古代に通貨とされし富に困ることなき穴あき石
西方 天竺アンデスヒマラヤの水を包みし心清しの水晶から
北方 きらめく姿は水晶か食してはじめて塩としる食うに困らぬ岩塩まで
いとめずらしの石どもを姫にいしぶみするも
その心そよとも動かぬ様子なり

さては石のめずらしではないようだと

石を用いた趣ある雅な品をご所望と
春の花散る桜を模したる石文箱
夏菖蒲の勢いを形どりたる石硯
秋の紅葉が舞い給う石机
冬雪舞い散る雪原を見事に彫りし石筆まで
粋をこらした一品にも
ちらとも興味を見せぬ いしぶみ姫

これは石とは申せど、金銀財宝のことであろうと
金剛石に瑠璃珊瑚、金銀真珠と積み重ねども
いしぶみ姫はため息ばかり

一人二人と諦めて
ついに人々、姫は気が狂われたのだと
姫は人とは趣を異なるのであろうと
恨みや諦め込めて噂する

時の流れは光陰矢をいるごとし
それから5年いしぶみ姫17歳
誰もがいしぶみ姫の計らいを忘れたころに
ついに姫の婿殿が決まったと知らせある

昔、石を送りし殿方たちは一体どんな石文であったろうか
どんな奴が婿殿かと披露目の屋敷に駆けつける

いしぶみ姫の横に並ぶ男は
醜男とはいえないがパッとさえない男なり
一同これはいかなることか
姫に問えば

「この方はわたくしに時を宿す石を石文としてくださいました!」
とただの変哲もない石を掲げて、凛と答える

一同これは姫が不憫じゃおかしなことじゃと口々に言いあえば

姫がすらりと開けき、中庭の障子
「これがこの庭すべてが、時を宿す石でございます。
この方は5年もの間
ただ一日たりとも欠くことなく私に石文をくださいました。
これぞ、私の心を射止めた石文でございます。」

と一同これはかなわぬあっぱれじゃと
代わるがわるに褒めたたゆる

元の話は今井雅子作いしぶみ姫
またのご縁を あいお粗末様でございます!

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