藤の花
例年ならば、関東は4月から5月にかけてのゴールデンウイークが見頃の亀戸天神の藤。境内に咲く藤の花は見事だ。今年はかなり早まってしまい、4月上旬から中旬が見頃となって、今はすでに散ってしまったという。関東で藤の花というと最も有名なのは、足利フラワーパークの大藤だろう。
実際に見てみると、樹の大きさといい房の長さといい、その迫力に感動する。藤はマメ科つる性の植物。花が枝の先端に出て次第に垂れるように伸びていく。豆の花に似た花は紫色で、藤色というのは、この花の色から名がついたもの。学校や公園の日当たりのいいところによく藤棚があるが、これは藤が日当たりのいいところを好み、つるで棚を覆い尽くして日陰を作ってくれるから。歌舞伎(日本舞踊)で藤娘という長唄があり、美しい娘が藤の花の精となって踊る演目である。この演目、元々は近江国の大津絵から舞踊化したものらしい。藤の枝を担いで現れる姿は、思わずため息が出てしまう。満開になって垂れ下がる美しい藤の花を見ていると、歌舞伎俳優、坂東玉三郎さんが華麗に舞う舞台が浮かんでくる。こうして藤の花は、万葉集で詠まれていたり、日本舞踊の題材に出てくるので、日本の花だと思っていたが、フランスやカナダで藤を見たときは、驚いた。と言っても一般的な藤の原産国は日本。欧米の花とは種類が違うらしいが、明るい紫色の花は、フランスに似合うような気がした。
藤の種類も日本では、本州から九州に「ノダフジ」、兵庫県以西の本州・四国から九州に「ヤマフジ」の2系統の種類が自生する。一般的に藤と呼ばれるものはノダフジを指す。他にも中国で「シナフジ」欧米で「アメリカフジ」などがある。4月から5月にかけて、車で山道を走っていると薄紫のヤマフジがところどころに咲いている姿を見つけると心和む。
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