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同人誌即売会サークル初参加の友人を見届けた話

11月の某日、私はサークルスペースにいた。
…売り子として。

話を遡る。

コミケも終わりダラダラしていた頃に友人から「オンリー即売会で本を出してみたいんだけど」と相談があった。メジャージャンルに身を置いてはいるものの、推しキャラクターの本が少ないのだという。人口はいるものの本を出すようなアグレッシブな人は居ないんだとか。
それなら自分がだしてやらぁ!!!!!
とのこと。
そのDo it your selfの精神、とてもいいと思う。
ということで本の製作のアドバイスをしていたのだった。

端的にめちゃくちゃ吸収の早い新人作家だった。という感じ。
私や周りのアドバイスをぐんぐん吸収して「本を出したい」と言い出した頃の画力とは比べ物にならないような伸びを見せた。そしてそれを形にしていたのだ。

正直なことを言うと、そんなに描くことがあるなんて正直羨ましいと思った。私の夏の時は描きたいことがあってもひたすら明確に形にならずに苦しんだのでその時の苦い思い出がまだあった。
ひたむきに描きたいことと向き合い、それを形にしていく友人は側から見ていても楽しそうだった。

そんな本の製作も終わり、もうイベントに出るだけになった頃。
「売り子をやってくれないか」と言われた。
実は、推しこそ違うが私もそのジャンルに身を置いている。
金銭が絡むことやスケジュールの確認をして、引き受けることにした。
もう乗りかかった船だし、ここで隣にたてば初イベントに参加する友人の新鮮な悲鳴が聞ける。そう思ったから。

そして、イベント当日になった。
「どれだけの人が来るんだろう」「私の本を手に取ってもらいたい」「でも怖い」「楽しみ」そんなことを聞いていると私のイベント初参加を思い出した。
設営、そして開場。

それからしばらくして人が来て、本が1冊買われていった。
「本がお嫁に行っちゃった!」と興奮する友人。それを後方彼氏面で見る私。
うんうん、自分の作った本を手に取ってもらえた喜びとむず痒さ。わかる。よかったね、本当に。

そこからは順調に、最終的に持ち込んだ量の半分ははけていったのだった。
やっぱりアグレッシブな人がいないだけで需要自体は結構あったようだ。
ちょっと友人が不在にした間に本を買ってもらったこともあった。
手に取ってもらうたび、「なんで売れるの!?」という悲鳴が聞こえていた。側から聞く分にはちょっと楽しい。
なんで売れるの!?という気持ちはわかる。でも同人誌は自分から見た出来栄えよりも本と推しにこめられた熱が大事、なんだと思う。パッション…があれば見てくれる人もいる…んだと思う。

最後、終わってから「とっても楽しかった!!!!」と言って友人は帰っていった。今回のオンリー即売会は先に申し込んだ冬コミのリハも兼ねていたらしい。(それを聞いてちょっとたまげた、しかも配置されてた。)
即売会参加なんて大変なのに懲りずにまた即売会に参加してくれると聞いた私はどこかホッとした。

なんだか、自分の初めての参加の時をとても思い出してしまった。
初めて作ったCP解釈本、それを作るのに必要な知識と迫り来る締め切り。
刷り上がった結果を受け入れる心。
それを持ち込んだ時の「同じコンテンツを推している」人の多さ。そしてその人たちが交流しているのを見る喜び。
私はちょっと胸に燻る熱いものを抱えて、帰路についた。

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