「ディメンシャーズ」本編

大群を圧倒しキングに犬を手渡すアジア人の映像を見つめるメーロン。彼の名は一郎。すぐロサンゼルス郊外の邸宅に呼び寄せた。屈強だが、彼が複合型若年性認知症であることはわかっている。
メーロンは世界規模のオンラインドクター育成アカデミーを主催するゲーム会社社長。医療業界や製薬業界からの寄付により、無料で世界中から学歴や年齢・貧富・道徳心関係なく老若男女誰でも学べるチャンスを与えている。労働力として使われていた子供に教育を与える目的で設立されたアフリカの学校、東南アジアの孤児院、南米のスラム街に作られた保護施設、欧米のホーミレス施設や退役軍人施設などあらゆる機関に通信環境や機材を提供もしていた。
参加者(プレ・ディメンシャーズ。以下PD)は医学をゲームルールとして学びながら、日々治療ゲームの腕を磨いている。そして卒業試験を突破したものだけが、医師になることなく、医師と現場で一緒に実務が出来る“ディメンシャーズ”に選ばれる。つまり”ディメンシャーズ”養成学校だ。
校長が卒業試験開始を宣言した。
敵となる議題は最難関「認知症」である。現時点で不治の病であり、PDが勝てるとは思えない。が、固定概念にとらわれない戦法を見つけたいのだ。
スーパーコンピューターに一郎を接続、一郎のデジタルクローンを作るメーロン。
やはりクローン一郎にはバグが有る。メーロンはオンラインRPG化したVR(仮想現実)でクローン一郎データを開放、世界中からPDが一斉にログオンした。
「おいおい。糖尿病の血管ってこんななのかよ!血管が詰まって進めない」
特攻隊長となったのは、学校に通えないほど自宅から外出できないながらもレースゲームや戦争ゲームが大好きなヤングケアラーズ。ドロドロで動脈硬化が進んだ血管を突破する。ようやくたどり着いた脳でバグの原因一つ一つを確認していると、見る見るうちにシミのようなタンパク質”アミべー(元アミロイドβ)”の擁壁に囲まれてしまう。
アリセプ(元アリセプト)ガンで破壊を試みるも次々増えてなかなか脳にたどり着くことさえできない。ドネペジ(元ドネペジル)弾の容量を3mgから5mgに増やしてみても撤退は時間の問題だった。
それはクローン一郎に巣食う全認知症軍団を支配するババニカシェイシェイ(以下BBSS)の仕業である。このラスボスを倒さなければ、着実に一郎が支配されていく。一郎をまるで操り人形のように凶暴化させたり、無力化させるのである。
メーロンは、より強力なマシンと武器の開発のため認知症関連の論文を武器に変換する翻訳AI機能を開発、漢方から西洋医学、単なるアイデアを問わず武器翻訳化しPDに提供した。
脳コロシアムに陣営を貼りながら全身を支配する四天王すべてを倒すことがBBSSを倒すことにつながる。彼らは長い時間をかけて一郎に時限爆弾をしかけている。倒すだけでなく、復旧も行わなければラスボス“BBSS”に勝てない。
四天王は脳に領地を分けて陣取っていた。
幻覚攻撃を行う将軍レビ(以下DLB)は脳の後方、人格を変化させ異常行動をさせる将軍フロテン(以下FTD)は脳の前方と側面、記憶障害を引き起こす将軍アルツ(以下AD)は脳の深部を、感情失禁を中心にあらゆる攻撃をしかける将軍ヴァスキュル(以下VaD)は脳の全体を使用し、陣営場所によって攻撃方法を変えた。
ついに始まる戦い。
生活習慣によって引き起こされる高血圧、糖尿病、心疾患、脂質異常症、喫煙などをエサに動脈硬化を発生させ脳血管障害を起こすVaDを薬弾で倒す生徒たち。抗うつ弾や抗血小板弾で修復も行う。
それを見ていたBBSS。
DLB&FTDの連合軍を投入する。
本戦が始まった。
幻覚や暴力の限りを尽くす攻撃。DLBは相手に幻覚を見せることで、不安を煽り、恐怖心を埋め込みうつ状態へと追い込む戦法を得意とし、FTDはとにかく戦闘的で暴力を好む。PDたちはクローン一郎の中で、見た目をコピーされたクローン一郎軍団相手に戦わされていた。助ける人と見た目が同じ敵と戦うなんて…
最終的にADが投入されたときにはあの屈強なクローン一郎に既に生気が無い。
ADはアミべーの擁壁とタウ軍団を使って血管以外の神経通路を断ち切りPDの突入ルートを無くし、コロシアム自体の崩壊も進めるため、PDが戦うすべもない。
「もう手がない…」
全滅・全面撤退させられてしまったPD。つまりメーロンを筆頭とした全世界の敗北となったのだ。
立ちはだかるババニカシェイシェイ。
そのメーロンに一郎が言った「Send me in!(俺を送り込め!)」

#ジャンププラス原作大賞

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