水素サプライチェーンをつくる褐炭水素プロジェクト
水素のようなクリーンなエネルギーの時代が必ずくると就職したガス会社に入社したのは90年代でした。水素ステーションの開設が話題となり、トヨタの水素自動車ミライもない時代でした。
水素は、コストが高く、全国に水素ステーションを設置している岩谷産業では、国内で製造した水素の販売価格を1立方メートル当たりおよそ100円に設定しています。水素を普及させるため、採算を度外視した価格にしていますが、発電単価に換算すると、1キロワット当たり52円と、一般的なエネルギーよりも割高です。
さらに、水素をつくる際、同時に二酸化炭素が発生しています。
大気中に放出されないよう処理しようとすると、さらに多くのコストがかかります。
そこで、コストをかけずに水素を安定供給するのを目指した褐炭プロジェクトが発足しました。
HySTRAは、褐炭を有効利用した水素製造、輸送・貯蔵、利用からなるCO2フリー水素サプライチェーンの構築を行い、2030年頃の商用化を目指した、技術確立と実証に取り組む企業団体です。
世界の石炭埋蔵量の約半分を占める褐炭は、低品位な石炭です。水分や不純物を非常に多く含むため、重くかさばる割りに発熱量が低い。さらに空気にふれると自然発火する恐れがあるため、輸送や保管に適さず、現地での利用に限られている。この未利用資源から安価で大量の水素を製造できないかというところから、水素サプライチェーンの確立がスタートしました。
水分量が多く、品質が安定しない褐炭からガス化するには、様々な技術を駆使した挑戦が必要で、将来の大量製造にも見据えた取り組みが行われます。
褐炭はラトロブバレーでガス化され、水素を含むガスに形を変えます。そして水素の精製を経てトレーラーに載せられ、150km先のヘイスティングス港へ移動します。
空気から取り出した窒素や酸素は、酸素は-186℃、窒素は-196℃で、液化して日本全国へ流通しています。水素は、-253℃の極低温にすることで、気体から液体に変わり、体積が800分の1に減少します。
液化した天然ガスであるLNGの運搬船建造技術、および陸上における液化水素輸送•貯蔵技術をもとに、液化水素専用の極低温蓄圧式の貨物格納設備として新たに開発しているようです。
液化水素運搬船が約9,000kmにも及ぶ旅路を終え、神戸港に到着したら、ローディングアームシステムが船から水素を抜き取ります。-253℃を保ちながら陸上の液化水素貯蔵タンクに充填していきます。
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