はじめに
皆さんは「ケンカ」をしたことはありますでしょうか。
この問いに対して口喧嘩なども含めると大体の方が「はい」と答えると思います。では、これが「相手のことを想って喧嘩したことがあるか」になるとだいぶ変わってくるのではないかと思います。
今回はそんな「ケンカ」のお話から1人の少女、及びアイドルについて自分なりに考えたことや感じたことなどを書いていこうと思います。
拙い文章になりますが、少しでもお楽しみいただけたら非常に幸いでございます。
(※個人の解釈の都合及び分かりやすくするため、以降アプリ内に出てくるマネージャーのことを「牧野航平」として一部記載、取り扱っていきます。)
”早坂芽衣”と”成宮すず”
今回取り上げるイベントは2023年10月3日〜10月13日に開催された「迷走ピリオド 涼やかな青春」になります。
物語は早坂芽衣と成宮すずの2人にマネージャーから「2人組ユニットバトル大会」への参加募集の連絡が届くところから始まります。この大会は以前早坂芽衣が一ノ瀬怜と「マカロンドーナツ」として「ココロDistance」を引っ提げて出場したものと同じ大会になります。
(ちなみに今回同じ大会に佐伯遙子と一ノ瀬怜もユニットを組み出場するのですが、そのお話はまた別の機会に…)
その一報を受け、芽衣は早速すずをすごい勢いと圧で誘います。すずも「いい成長の糧になるかも知れない」とその誘いを受けます。
この流れだけでも2人の仲の良さ、早坂芽衣が成宮すずに寄せる感情をなんとなくでも理解していただけたかと思います。
この関係色はアニメ部分から既に強く出ており、その時から「めいすず」の名称で親しまれていました。ある時はビニールプールで水鉄砲を撃ち合いすずをノックアウトさせてたり、またある時は2人寝ていたところを怜に叩き起こされ荷物要員として買い出しに連行されていたり、最終回では結果発表後「すずにゃんありがとう、すずにゃんのお陰でみんな楽しく歌えたよ」と優しく言葉をかけてくれてたりしてました。(ここマジで好きです)
この2人の仲の良さはアプリになってからより多く見られるようになり、ある時は芽衣がかき氷を食べさせていたり、またまたある時は2人で怜の家に上がり込んだり、2人でラジオ出演した際には「双子みたいに息ぴったり」と称される程。すずも「芽衣との付き合いが一番濃密なのは私」と発言してたりもしてます。
そんな仲の良い2人がユニットバトルに出場することになったのですが、楽しさMAXの芽衣とは少し違い、すずは自由奔放な言動を見せる芽衣に少し不安を抱いており、自分がしっかりしてユニットの要とならないと、と責任にも似たような、はたまたちょっとしたお姉ちゃんにも見えるような気持ちを持っていました。
この作品に多少でも触れたことのある方なら分かる通り、早坂芽衣という少女は猫のように自由な子で、公式サイトにも「何をしでかすか予測不能で無邪気な少女」と書かれる程。しかし芽衣はただ自由で愛嬌があるだけではなく、かなり周りが見れていて、気遣い人を思いやり、心を寄せることができる優しさを持っています。
早坂芽衣という人物がわかりやすく出ているものの一つとして、上記にも出ている以前一ノ瀬怜とユニットバトルに出場した際のイベントコミュ「夢踊るステージに架け橋を」が挙げられます。このコミュでは怜が父親にダンスやアイドルといった芸能活動に反対されて関係が冷え切ってしまっている中、芽衣がすずを連れて怜の実家に突撃しライブに来てもらうよう直談判をしに行くシーンがあったりします。(この一連の件に関しては実際にイベントコミュを見ていただいた方が一番良いかなと……すずもめちゃくちゃ凄いんだ……)
他にも「隠しきれない顔の火照り 早坂芽衣」のコミュでは腰が痛そうな海の家のおじいさんを心配し、ライブ前に楽屋を抜け出し海の家のお手伝いをしていたり、「ドーナツ山盛りバースデー 早坂芽衣」ではお誕生日プレゼントの代わりにアイドルがやってみたいことを叶える「ミラクル☆アイドルバースデー!」という雑誌企画でやってみたいことの欄に「ファンの人達にも大好きなドーナツをいっぱい食べてほしい」という案を入れていたり、要所要所に優しさが垣間見える少女です。
その根底には「幽霊が見える」という体質が絡んできます。アニメでも重要なポイントになっている通り彼女には幽霊が見え、作中で牧野航平以外に唯一幽霊となって彼の前に現れた長瀬麻奈と会話できる存在でした。しかしそれが判明した際、芽衣は「よく嘘つきって言われた」と話していました。「見えないものが見えてしまう」ということ自体に関して芽衣自体は恐怖に感じてはいない様子ですが、周りから理解されず否定されてしまうのは非常にきつい経験だったと思います。実際そのせいもあってか小学生時代は幽霊を友達と呼び、「お友達」や自身が学校の子から馬鹿にされるなんて経験をしていました。
そのような苦い、辛い経験があったからこそ周りに目を配らせることができ、偽りのない真っ直ぐな気持ちと愛嬌で周りを照らし、笑顔に出来る子に育ってくれたのだと思います。
しかし優しいだけではなく上記の通り本当に猫みたいな行動をしでかすような一種の問題児である芽衣なので、すずも本当に手放しにしたら大変なことになりかねないと考えるのも無理はありません。ユニットを組むと決まるや否や早速すずの部屋にて作戦会議を開きます。どのようなユニットにするかで「2人の大好きなものをいっぱい詰め込みたい」と話す芽衣に、「ただ詰め込めばいいというわけではない、軸となるコンセプトが重要」「意外性と新たな魅力をポイントにかっこ良さをコンセプトにする」とすずが話をまとめて行きます。
”早坂芽衣”と”長瀬麻奈”
コンセプトが決まり、この後の流れを最初とは違い芽衣が次々と段取りを組んでくれます。衣装や振付師と打ち合わせをしていこう、その際に「それぞれの『かっこいい』をイメージした案」を持ち寄ろう、歌詞は自分たちで作ろう、打ち合わせの日程のすり合わせもしないと、と手際よく進めていく芽衣に、自分が要にならないとと意気込んでいたすずは戸惑いと寂しげな悲しい表情を見せます。
「夢踊るステージに架け橋を」で怜と組んだ際、怜が率先して話やスケジュール管理等を進めてくれた為、今回自分が頑張りたいと話す芽衣。対してインタビューの際に来ていく服の件を先に話されてから思い出すなどして、すずは先を越されていくような気持ちになっていきます。
衣装担当との打ち合わせ、すずは何日も考え兵藤雫から大量の資料も借り、大量の資料案を用意してきました。対して芽衣はかっこいいとは少し違う、芽衣とすずの2人に似合うと考えたかわいい方向性の衣装案を提出、結果衣装担当は芽衣の案を採用します。
納得のいかないすずは振り付けに関して2人で擦り合わせをしようという芽衣の話を断り、「私は既に一敗している、次こそは芽衣よりも良い案を出す」と怒って買い物の約束も放り投げ帰ってしまいます。
すずの案はかっこいいユニットというコンセプトには合っていましたが、芽衣とすずのユニットではなく、芽衣と怜に寄せたようなものになっていました。今回は「早坂芽衣と成宮すず」のユニットだった為、そこをしっかり意識して考えられていた芽衣の案が採用されたわけですね。
1人でインタビュー用の服を探しにきた芽衣はなぜこうなってしまったのかを考えながら、長瀬麻奈と出かけていた時のことを懐かしみます。
芽衣と麻奈が出かけていたりしてた頃……まだ事務所や寮が星見市にあった頃、麻奈が見える、麻奈と話すことができる人物は牧野と芽衣の2人だけでした。かつ同性で年齢も近い芽衣が現れたのは麻奈にとってとても大きく、服を見に行ったりするのにも何かオセロなどのボードゲームをするにも芽衣と一緒に行動したり、牧野に協力してもらって遊んでたりしていました。周りには麻奈が見えない中、女性ものの売り場に牧野と行ったら牧野が不審者扱いされてしまいますし、物に触れられないのでゲームなんてもってのほか。その為、芽衣が現れてくれたおかげで麻奈も生前忙しくて中々出来なかった友達とのショッピングなどを楽しむことができました。
早坂芽衣の登場により長瀬麻奈に大きな影響がもたされましたが、芽衣自身にも、特にアイドルに対しての、大きな気持ちの変動がありました。
芽衣は楽しそうだから、と言ってしまえば本能の赴くままアイドルを始めていました。しかし、麻奈と出会ったことにより、麻奈と牧野との秘密の関係、そこから改めて見えた長瀬琴乃の気持ち、そして「アイドル 長瀬麻奈」に触れることによって彼女の中でのアイドル像に大きな影響を与えていきました。早坂芽衣にとって長瀬麻奈は、短くもとても大切な時間を共に過ごした一友人としてだけでなく、大きな目標になっていったのです。
一人、そんな時のことを思い返す芽衣、麻奈とショッピングをしに来た時麻奈は「芽衣に似合いそうな服」を選んでいましたが芽衣は「麻奈が着たい服を選んで欲しい」と話します。自分が実際に服を着ることが出来ない麻奈の代わりに、麻奈が着たい服でオシャレをして楽しんでほしい、と。
あの頃を思い出し、芽衣はあることに気づき始めます。
”早坂芽衣”と”優しさ”
振付師との打ち合わせに向け研究を重ね、すずは「芽衣に負けたくない、対等でいたい」という思いを胸に案を練っていました。
やっと組むことができた、楽しみにしていた、2人のユニット。芽衣だけの、芽衣だけが主役ではない2人が主役のユニット。
だからすずは負けたくなかった、すずなりのプライドが故の対抗心で案を練っていましたが、そこに芽衣が「やっぱり2人で考えないか」と提案してきます。
麻奈との思い出から気づいた芽衣の「すずも自分のことを考えて行動している」という読みは合っていました。ですが優しさというのは時に他人のプライドを傷つける刃となってしまいます。
そして翌日の振付師との打ち合わせ当日、「高難易度かつ見栄えのいい振り付け」を提案したすずと違い「ファンのみんなも真似できるような、楽しくて簡単な振り付け」を提案した芽衣の案が採用されました。
最初のコンセプトの「かっこ良さ」を前面に出すよりも2人らしさを尊重した芽衣の振り付けに、すずは違和感を強く感じていました。
そして、その不満が芽衣の言葉によってついに爆発してしまいました。
この芽衣の「運」という言葉選びについては、相手を傷つけてしまう結果となっていますが「芽衣なりの気遣い」と「今回はテーマに沿っていなかったが、心からすずの案が良いものだと感じていたから」の2点があったのかなと感じました。今回はとても辛い結果となってしまいましたが…。
気まずい空気になってしまい、別れて帰宅する芽衣。すずとこれからどう話せばいいのか悩みながら商店街を歩く中、ある音楽が流れてきます。
優しさと自己犠牲の釣り合いというものは本当に難しいものです。道徳的な話になってしまいますが、優しさと自己犠牲は当人の捉え方次第で変わっていくものと考えてますが、同時に発生してしまう、「優しさ」だと思っていても知らない間に心にダメージが蓄積されて行って「自己犠牲」になってしまう時がある、とも考えています。
そしてその蓄積されたダメージを思いっきりぶつけ合える仲というのも、一つの友情の形、お互いを想いあう優しさ故のダメージのぶつけ合いが正しい「相手のことが本当に大切な人だと想ってるが故のケンカ」なのかなと考えています。
早坂芽衣は本当に優しい女の子です。彼女の「優しさ」は「自己犠牲」ではなかったかも知れません。ですが彼女も一人の人間です、心のどこかにダメージやもやもやは溜まっていたはずです。その胸の心がいっぱいになってしまった時の本気で言い合える、ぶつけられる、受け止めてくれる相手が、本当の友達が、目標となる相手とは別に彼女には一番必要だったのかもしれません。
アイドルを始めてからそんな相手が現れるとは、彼女自身一番思いもがけない出会いだったのかもしれません。
”早坂芽衣”と”ケンカ”
一方その頃、同じく一人で帰ったすずは自分がぶつけてしまった言動に対し落ち込み悩んでいました。その中、芽衣はやってきます。二人だけのケンカをするために。
急に現れケンカを申し出た芽衣の顔に怒りの感情はなく、非常に晴れやかなすっきりとした表情をしていました。
今まで言えなかった、溜め込んでいた、相手への不満や想いを、少し乱暴な心のキャッチボールのようにお互いにぶつけていきます。
知らず知らずのうちに胸に溜め込んでしまっていた、仲が良くても伝えられずにいた気持ちを言い合う二人。永遠のような、かけがえのない時間は過ぎていきます。
そしてケンカの後には、お決まりのようについてくるものがあります。
お互いに気持ちを吐き出し、お互いにちゃんと謝ることができた二人。そして芽衣の口から続けて本当の気持ちが漏れ続けます。
1話の箇所で書いたところに対しての良くない蛇足になってしまいますが、周りから理解されず否定されてしまっていた過去を経験していても他人を思いやれる心を持てる芽衣だからこそ、人一倍誰かに嫌われることに恐れを抱いていたのだと思います。皮肉な話ですが、その嫌われたくないという思いから優しさの根本が生まれたのかもしれません。
そんな芽衣の口から思わず零れ落ちた「嫌われたくない」の気持ちに、すずは「そんなことを」と返しました。
"早坂芽衣"と"二人の大好き"
大好きが故のケンカをし、溜め込んでいた想いを吐き出し、泣いて、泣き疲れた二人。お互い気持ちを新たにし、二人だけのユニットの打ち合わせを始めます。
その中で最初の段階でお互いの「かっこいい」の認識のずれが起きていており、すずが芽衣を前に出すような、譲ったような形の構成を考えていたということを話します。
相方のポテンシャルを最大限に生かそう前に出そうと行動した結果、二人のユニットとして頑張ることを疎かにしてしまっていたすず、奇しくも同じようにユニットバトルに出場していたとある姉妹のような道のりを辿っていましたが、これに芽衣がある意見を投げかけます。
今度こそ方向性の擦り合わせが出来た二人、ゴタゴタにより後回しにしていた作詞の作業にお互いの意見を話し合いながら取り掛かっていきます。
着々と作詞作業が進んでいく二人でしたが、あるところが思いつかず悩んでしまいます。それは曲の中でも特に重要なサビの箇所。
考える中、芽衣がある一言をつぶやきました。
サビのフレーズに入れる二人の大好きなもの、それは芽衣にとって大切な友達でもあり、すずにとって最大の憧れでもあり、二人にとっての目標でもある、長瀬麻奈でした。
芽衣がすずと気まずい空気になってしまい、これからどうすればいいのかを悩みながら商店街を一人歩いてる時に励ますかのように流れてきた曲がPrecious、以前長瀬麻奈のトリビュート企画番組に出演したすずが歌唱し「自称」ではない「二代目星降る奇跡」を名乗った時の曲もPreciousでした。
こうして早坂芽衣と成宮すず、二人の真っ直ぐな気持ちと大好きを思いっきり詰め込んだ最高にかっこ可愛い曲が完成しました。
そうして迎えたユニットバトル大会、二人は遂に決勝戦まで上り詰めます。決勝戦のステージのMC、芽衣は笑顔で話し始めました。
おわりに
私自身の早坂芽衣という少女の第一印象は「誰にでも好かれそうな元気で適当な天才肌の子」といったものでした。実際星見プロに加入した当初、ユニット名の提案で「めいめい芽衣ドーナツ」とか言い出したり牧野さんと塀の上でデートしたとか言い出したり結構飛ばしてたりしてましたが、物語後半に入ったりアプリがリリースされてから当初の印象とは大きく変わっていき、担当ではないもののたくさん楽しませていただき、応援させていただいてます。
見てきた例に関しては既に記事内にて書かせていただいたため割愛しますが、そんな優しい彼女の、彼女の大好きな人たちの物語や良さが少しでも感じていただけたのであれば幸いでございます。
他の記事でも書いていましたが、私はこの「shiny shiny」が好きだと言ってくれる人やライブで盛り上がってくれる人たちが大好きです。この曲で会場のみんなが笑顔になり、盛り上がっている空間が本当に大好きです。二人の大好きが、三人の想いがこもったこの曲が本当に大好きです。
Zeppツアーの羽田公演の夜の部で「shiny shiny」が披露された時の景色はずっと脳裏に焼き付いています。それまでの地方公演では赤と黄色の照明だったのに対し、この時だけピンク色の光がメインとなっていたのを見て、関係者の皆様の三人に対するリスペクトや想いに涙が止まりませんでした。
時間はかかってしまいましたが、そんな感謝の気持ちも込めて今回の記事を書かせていただきました。早坂芽衣と成宮すずのことや、彼女らの大好きな長瀬麻奈のことを、これからも大好きでいようと思います。
今回は僕のそんな大好きな曲の歌詞の一部を引用して締めさせていただきます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。