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21-22 UCL FINAL 〜フィジカルコンディションと回復について

チャンピオンズリーグは大方の予想を覆してレアル・マドリードが14回目の優勝。シュート数の差やクルトワのビッグセーブが取り沙汰されています。この試合から考えたことを書いておきたいと思います。

フィジカル全盛のこの時代

以前、ユベントスの試合後のnoteでこんなことを書いていました。

どのリーグもリーグ戦だけでなく、国内カップ、リーグカップ、上位チームはヨーロッパのカップ戦も戦っている。選手個人に目を向ければ、各国代表に選出されれば、インターナショナルマッチウィークもゲームがあり、世界を飛び回っている。疲労が蓄積しない方がおかしい。しかも、その上でハイプレス全盛の現代フットボールにおいては、毎試合強度の高いプレスを求められ、もしくは強度の高いプレスに晒される。とにかく速いプレスがトレンドとなっている。中でも海外資本が流れ込んで選手も監督も世界トップクラスが集まっているプレミアリーグが時代を牽引している。ジャッジもプレミア仕様のハードなフィジカルコンタクトを容認する方向になってきている。背後からのチャージも流されることが多くなっている。猛スピードでボールホルダーにプレスに行くため、アフター気味にぶつかったり、足を蹴ったりすることも多い。しかし、ボールは展開されているのでアドバンテージをとって、結果として何のお咎めもないケースが多い。挙句、ハイプレスを外されそうになったら相手を抱え込んで止めてしまう選手も大勢いる。そうなったらもうラグビーではないか。過密日程で披露が蓄積した上、激しいフィジカルコンタクトに晒される。怪我をするなという方が酷な状況ではないか。

ズバリ、現代フットボールにおいては、選手は消耗品なのだ。怪我をして離脱するのは当たり前。監督には重要な選手を怪我させないためのマネジメントが求められる。大幅なターンオーバーを行うなどの対策が必要となっているが、そのためには高いレベルで選手をそろえる財力がどうしても必要となってしまう。その意味で最近のCLをプレミア勢やPSG、バイエルンが席巻しているのは当然だろう。

ケガが少なく無理が効く若い選手が重宝されるのも必然だ。ブラホビッチ、ムバッペ、ハーランドらを筆頭に、高額の移籍金を支払ってでも有望な若手の獲得に乗り出すのは、将来性だけでなくフィジカル面でも価値を見出しているのだろう。世代交代を迎えたユベントスが19-20シーズンから苦しんでいるのも当然と言えば当然なのかもしれない。今後は、これまでよりも世代交代や若手の登用を積極的に行うチームが生き残っていくようになるだろう。

また、替えのきかない絶対的な選手に頼ったチーム作りも危うくなってきている。数シーズン前のシティがいい例だ。デブライネのケガで不調に陥り、リーグ戦でリバプールの独走を許してしまった。怪我による離脱やターンオーバーを敷くために毎試合特定の選手をピッチに送り出すことは、もはやできない。絶対的な選手がピッチにいるかいないかでチームがガラリと変わってしまうようでは安定して勝ち点を積み重ねられない。ロナウドやメッシのように、守備を免除されてフィジカルの負担が少なく、かつ熱心にトレーニングに打ち込んでコンディション調整に余念がない稀有な選手以外は中心に据えることはできないだろう。

レアルとリバプールのフィジカルコンディションについて


さて、ここでレアルとリバプールの状況について考えてみよう。レアルはバルサとアトレティコが自滅してくれたおかげでリーガを独走。早々に優勝を決めてリーグ戦は消化試合とすることができた。また、国王杯は敗退。UCL以外では週の合間の試合はなくなっていた。フィジカルコンディションを整えるだけの時間を確保して、UCLの勝ち上がりに集中できる状況が整っていた。ベンゼマ、モドリッチ、クロースはベテランの域に入ってきているとはいえ、うまくターンオーバーを使ってコンディション調整は行ってきていた。さらにアンチェロッティがバルベルデ、ヴィニシウス、ミリトン、メンディら若手を積極的に起用してきており、スピードや疲労の回復を含めたフィジカルで相手を圧倒できるポイントを用意していた。カルバハルやカゼミロもフィジカル系の選手で、コンディション調整さえうまくいけばフィジカルなチームにもなれる。そこにアラバ、クロース、モドリッチ、ベルゼマがテクニックと経験値をプラスする。おそらく、レアルは決勝に向けてフィジカル的には万全の状態で臨むことができたのだと思う。

一方のリバプール。FA杯ではチェルシーと延長PK決着。リーグ戦では最終節までマンチェスター・シティとデッドヒートを繰り広げ、主力を休ませる暇はなかった。サウサンプトン戦には大幅なターンオーバーを敢行してきたものの焼石に水だったかもしれない。ましてリバプールが日々鎬を削っているのはあのプレミアリーグだ。ハイスピードのプレス合戦、球際のバトルも激しく、フィジカルの消耗は激しかっただろう。また、ハッキリと若手と言えるのがディアスとコナテだったことも効いているように思う。やはり、リバプールの主力はいわゆる中堅世代が多く、連戦を余儀なくされた中でコンディション調整が難しくなった可能性はあると思う。最終節で惜しくもプレミアリーグの優勝を逃したことからメンタル的な回復も必要だったはずだ。また、マネ、サラー、ファビーニョ、ヘンダーソン、ファンダイク、アーノルド、ロバートソン、チアゴと必要不可欠な選手が多かった点もレアルと異なる。彼らの年齢も考慮すると、フィジカルコンディションの回復が間に合わなかったかもしれない。実際のところはわからないが、これまでの連戦などを考えると彼ら不可欠な主力メンバーの何人かのコンディションが良くなかった可能性は十分あるだろう。16-17シーズンのユベントスもコンディションが最悪だったとアッレグリがのちにコメントしていた。今季のリバプールが歴史に残るレベルの素晴らしいチームだということは誰もが認めるところだ。しかし、コンディションが悪ければアッサリ負けてしまうこともあるだろう。サラーやマネにあまりキレを感じなかったが、実際のところはどうなのだろう?


世界最高峰の舞台だからこそ、互いの実力は伯仲している。勝敗を分けるのは、本来の力を出せるかどうか、フィジカルコンディションにかかっているのかもしれない。

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