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茨城ロボッツの新本拠地 アダストリアみとアリーナに行ってみた

水戸市にフランチャイズを移転してからこれまで、茨城ロボッツは市内にある「青柳公園市民体育館」を本拠地としてきました。
2019年に茨城県で行われる国体に先立ち、かねてより建設が進んでいた水戸市内の新体育館がいよいよ落成しました。

アパレル企業「アダストリア」が命名権を獲得し、その名を「アダストリアみとアリーナ」とした新体育館のレビューです。

なお、アリーナやその設備の紹介が主であり、こけら落とし試合の内容については薄めです悪しからず…。

※注
これからご紹介する内容は、2019年4月6日に行われたアリーナ落成記念試合当日のものです。試合により会場の運営状況や駐車場情報は異なるほか、今後の状況により変更も発生し得ることをご了承ください。当日の試合情報はクラブ公式サイトなどでご確認いただき、常に最新の情報を入手し来場されることを強くお勧めします。

今回はクラブが公式に許可していた偕楽園の桜山無料駐車場に駐車し、そこから徒歩でアリーナに向かうことにしました。

4月6日。桜が見頃を迎えており大変綺麗でした。

駐車場から5分程ほど歩くと、常磐線を跨ぐ高架橋の上から線路向こうに白い建物が見え始めます。水戸は東西に伸びる台地の稜線上に中心部がありますが、アリーナはその台地の緩やかな斜面に建設されました。

さらに10分程度歩くとアリーナに到着します。
開場前ですが、1階の事務所脇入口は開放されており、トイレへもアクセスできるようになっていました。入場待機時、困ったらすぐ駆け込めるのはありがたいです。試合がない日の正面入口は1階。その上にはデッキが設けられています。

開場までまだ時間があるので、周囲の散策に入ります。

本日は使用しませんでしたが、広大な駐車スペースが敷地内に設けられています。なお、茨城ロボッツでは有料で駐車場の事前予約サービスがあります。

先述のとおりアリーナは斜面に建てられているため、駐車場も段々畑のような構造です。

階段を降り、駐車場から建物を望んだところ。栃木でいえば、TKCいちごアリーナ(※フォレストアリーナ鹿沼)と似た構造です。市街地側の正面入口は1階に対し、反対側の斜面側から見える一番下のフロアは建物の地下(B1)にあたります。"B1 We Must" ですねわかります←

内部にはジムもあり、市民が使用できるようです。鍛えればキミもPerfect Body、センチュリートゥエニワン。

斜面側にはテニスコートも設置されていました。せっかくであればバスケットボールコートも欲しいところですが、ここまで立派なアリーナを建ててもらえれば無理強いはできまい…。

斜面側の外観には、アリーナ名が誇らしげに掲示されています。今回ネーミングライツを獲得した「アダストリア」は、「global work」や「niko and ...」などのブランドを全国に展開するアパレルブランドで、水戸市が創業の地です。茨城のユニフォームスポンサーでもあります。

さて、正門を抜けて進むと、2階デッキに伸びる幅広い階段が設置されています。ここから一度2階に上がり、2階の入口から会場内に入ります。なお、他にももう2か所、1階と2階デッキを繋ぐ階段があります。

一通り周囲を確認したところで、入場待機のためにデッキに上がると、待機列は広い2階スペースを利用し、蛇の字に長く伸びていました。

デッキから正面側を見下ろしたところ。屋内にも飲食ブースがあるのですが、屋外のケータリングも充実しています。

試合への来場でTポイント付与されるサービス(!)がこの日から開始され、地元のツタヤスタッフの方が待機列の方々にアピールしていました。
スタッフの方は来場ポイントを「リーグ初の試み」とアピールしていましたが、島根が発行するTポイントカードのサービスとは異なるのでしょうか。

そうこうしているうちに入場が始まりました。先々行入場に20分、先行入場にさらに20分。時間差が大きく、一般入場と明確に差別化できているところがポイントです。入場のペースを制限しているため、入場時に慌てるようなこともありません。

2階入場口で手荷物検査とチケット確認を済ませて、いよいよロビーに入場したところ。今回は一般で入場したため、私が入場した頃にはすでにロビーは各ブースやイベントを楽しむ先行入場者の方々で賑わっていました。
この2階ロビーでは、グッズ売場、地元自治体や名産品のアピール、各種サービスブースなどが展開されていました。

入場後向かって右手にある、2階と1階のロビーを結ぶ階段です。こちらも広い幅が確保され、混雑時でも肩と肩がぶつかるようなことはありませんでした。

1階ロビーは主に飲食ブースです。青柳体育館と異なり、アダストリアみとでは広大なロビースペースを活用し、各階ごとにテーマを明確化、差別化できるようになりました。

飲食ブースで購入すると、購入金額に応じてTポイントのチケットが貰えます。このチケットを専用ブースにTポイントカードと一緒に持っていくと、入場ポイント以外にもさらにチケット分のTポイントがもらえる仕組みです。

トイレは1階3か所、2階に至っては5か所がバランス良く設置されています。

Bリーグが求めるアリーナ基準のひとつとして、必要充分なトイレの数を設置する、という項があります。これはスポーツ観戦時に特有の、ハーフタイムなど休憩中にトイレが集中し混雑する問題を緩和するためのもので、リーグにとっては顧客満足度の低下を防ぐ狙いがあります。男子トイレは広いところでは洗面台が8器もある所もありました。

ロビーには大きな液晶ビジョンも設置され、様々な映像が流されていました。これも入場者を飽きさせない工夫のひとつ。次回以降も継続して展示されるのでしょうか。

いよいよメインアリーナに入ります。なお、ロビーからメインアリーナへの入口も複数設けられており、入退場時の混雑緩和が期待できます。

開場入りしたときの率直な感想は「広い!」。従来の体育館の1.5~2倍の容積がありそうです。

会場内壁面にもアリーナ名が掲示されており、否が応でも視界に入るため、ネーミングライツの効果が十分あると感じます。一般的にユニフォームスポンサーも同じですが、最低限、企業名さえ覚えて帰ってもらえばよいのです。

気になったのはこの1階エンド側スタンド席の裏側。画像右側の2階席までの間に充分な空間があります。このスペースにもスタンドを設置すれば、観客数をさらに増やすこともできそうな気配です。恐るべきポテンシャル、アダストリアみと…。

自分の席を探します。席はアルファベットのブロックで分かれていました。

今回観戦したベンチ裏1階サイド指定席。
映画館と同様に折り畳まれた座面を展開するタイプの座席ですが、座面と連動して背もたれも斜めにリクライニングします。

座面を展開すると下に空間がうまれるので、リュック程度であれば置くことができます。これらの機能のおかげで、身長175cm強の私でもストレスなく腰をかけ、観戦に集中できました。折り畳み時は70cm程度の通路幅が確保されています。

1階サイド席のアームレストにはドリンクホルダーも完備。ペットボトルを床に置かずに試合中も手の届く範囲にあることは、単純ですが意外にも快適に感じられました。

1階サイド席は可動式で、使用しない場合は2階席の下側にスタンドごと収納されます。こちらはサイド席の階段。スライド収納できる感が出ています。

実際に座席が自動で展開する様子が、国体の公式YouTubeチャンネルでアップロードされています。スライドしてスタンドが展開する様子も見たい。

スタンドが収納されるとメインフロアはコート3面分の広さとなります。これはこのアリーナが本来は国体の開催を目的として設計されていることに起因します。

1階サイド席から2階席へは、この階段を使いそのまま上がれるようになっていました。栃木のホームゲームでは1階と2階を明確に仕切っているため、ここで軽く衝撃を受けることになりました。上がっていいんかい…!

※注
次節のホームゲームでは、1階サイド席と2階サイド席の間に仕切りが設けられていました。行き来は試合によって制限されることがあるようです。

2階席の座席は、前の座席の背もたれにドリンクホルダーを設置しています。

オープニングセレモニーが始まりました。証明はLEDのため、ON⇔OFFの切り替えも瞬時に行うことができます。ハロゲンランプを点消灯していた青柳よりも演出にメリハリがつき、また演出の幅が広がりました。スピーカーが天井に設置されており、どの席でも快適な音響になりました。

光と映像の演出については、クラブ公式がTwitterにアップロードしたフル動画をぜひご覧ください。0:40以降は特におすすめです。なお、Bリーグでは公式をリツイートしていただくとクラブのサポートに繋がります。

サイド席からのパノラマ画像。

2階ゴールエンドからの眺め。

同じ位置からのパノラマ画像。

先日、茨城でないB2の試合でリングが破損し、予備のゴールがなかったために試合が中断する出来事がありましたが、アダストリアみとには予備のゴールがあることを確認済みです。まぁ規定上なきゃいけないんだけど…。

オープニングゲームを記念し、会場には川淵名誉顧問と大河チェアマンが来場されていました。注目度の高さが伺えます。この画像は大河チェアマンの挨拶。

コートの画像に注目していただきたいのですが、他の競技のラインがいっさい描かれていません。バスケットボール専用のフロア、細かい点ですが見栄えが違います。詳しい設置方法はわからないのですが、体育館を流用するときにありがちな、無関係なラインをテープなどで隠すようなことはしていません。

入場者数は5041人!
B2記録を更新しました!

気になる試合展開ですが、茨城は一時は群馬に離されかけていた点差を詰め、4Q終盤に追いつくことに成功、なんと土壇場でオーバータイムに持ち込みます。会場はこの日一番の盛り上がりを見せました。
今回は間違いなく初観戦の方もいるわけで、バスケットボールというスポーツをアピールするに相応しい展開となったのです。

しかし反撃もここまで(NHKサタスポ風)。終盤力尽きた茨城は残念ながら勝利を収めることはできませんでした。それでも5千人の観衆を魅了し、来場者にとってはアリーナスポーツを十分堪能できた試合でした。

このアリーナの驚くべき点は試合後にもありました。観客が退場する際には1階だけでなく2階のドアも開放され、退場時の渋滞はほとんど発生しませんでした。従来の体育館を使用する場合、会場のどこか1か所がボトルネックとなり、退場にかかる時間が大幅に増えてしまいます。5千人を収容したとは思えないほどスムーズに退場できました。

通常1500~2000人前後を集客するB2クラブが、B1クラブでもまだ実例の少ない5000人の対応をしたわけですが、それでも全体的に見て大きなトラブルは運営面では見当たりませんでした。クラブ側がしっかりと準備してきたことが伺えます。

一方で設備については追第点もあります。センターハングの4面ビジョンはなく、仙台ゼビオアリーナのようなリボンビジョンも構造上設置が難しそうです。いかに来場者全員に対し快適かつ十分な情報提供ができるかが今後の課題です。
現状のアダストリアみとでは、両ゴールエンド側壁面にディスプレイを設置し対応しています。サイズは260インチだそうです。

ともあれ、北関東でBリーグのアリーナ基準を達成したクラブは初めてであり、ここまで協力をしながら今日にこぎつけたクラブや自治体など関係者の功績は称賛に値するものです。
今後はチームの成績が要求される立場になりますが、それが叶えば更なる設備投資も期待できるのではないでしょうか。

試合後、観客の方の一人が「ここまで茨城のアリーナにお客さんが入ることは今後は二度とない」と話しているのを耳にしました。茨城が集客力を継続できる状態ではない、とみなしている来場者もいたのかもしれません。
しかし実際に「プロスポーツ不毛の地」と呼ばれていたすぐ隣の栃木でも、今では継続して4千人以上の集客ができるようになっています。一度5千人を集めた茨城が、今回と同じように集客できるのも遠くはないでしょう。成功を繰り返し経験していくことで少しずつ定着していくのです。
地方を本拠地としているクラブでも、集客に苦戦しているところがあります。しかしながら、何かがきっかけで大きく前進することもあり得ます。
男子日本代表の中国W杯本選出場、男女日本代表の東京五輪出場権の獲得。ここ最近の国内バスケットボール情勢の見通しは、今までになく明るいのです。

ここからは少し私見が入りますが、Bリーグのアリーナは次の3つのフェイズに分類されると考えています。
(1) 既存の体育館
(2) Bリーグの求める基準を満たした、屋内スポーツ観戦に対応した設備をもつ体育館
(3) 屋内スポーツやコンサートなど、エンターテイメントに適した専用アリーナ

現在ほとんどのBクラブは自治体の協力を得ながら、(1)既存の体育館 で興行しています。平成から令和に移りかわる今、(2)スポーツ観戦に適した新基準の体育館 が登場しつつあります。今回のアダストリアみとアリーナに加え、直近では秋田の由利本荘アリーナ、すでに着工している栃木県新体育館も(2)に分類されるでしょう。
沖縄がつい先日から、専用アリーナの建設が始まりました。2023年に同アリーナで開催される頃には、全国で他にも(3)専用アリーナの新たな計画発表や着工があるでしょう。
このアダストリアみとアリーナは、まさしくこれからの屋内スポーツにおいて、成功事例の第一歩となるべき重要な存在なのです。

アリーナはクラブを表現する演出の場であり、クラブの顔そのものでもあります。今回B1基準を満たすアリーナを確保できたことで、茨城はB1ライセンスを満足する設備を手にいれただけでなく、演出も強力な武器とすることが可能になりました。

Bリーグ黎明期の今、クラブのこのような進化をアリーナ視点で見ることができるのは、大変興味深く感じました。

※20190419
加筆訂正、YouTube動画リンク追加。

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