#55 EUTXOモデルとは何か? システムエンジニアから見たADA(カルダノコイン)の凄さ

ついに時価総額10兆円を超えてしまった仮想通貨ADAですが、擬似イーサリアムのなかでも特に性能が高いと評価されています。以前少し紹介しましたが今回はもっとシステムエンジニアからの目線で深掘りしてみましょう。

これを読んだらADAを買いたくなりますよ。

①画期的な会計モデル

仮想通貨では一番大事な「だれが何のコインを(いくつ)所有しているかを特定し、こうしたコインがどこに行くか、どれが使用済みであるか、どれが使用可能であるか」を追跡する会計モデルを必要とします。これが仮想通貨の心臓といっても良く、ここの出来で仮想通貨の価値が決まります。

まず従来の残高の計算方法は2種類あります。UTXO方式とアカウント方式です。

【UTXO方式】

UTXO方式は「Unspent Transaction Output」の略で日本語で言えば「未使用トランザクションアウトプット」という感じです。ビットコイン、ビットコインキャッシュ、ライトコイン、Zcashなどで使われています。これを詳しく話すと1万文字くらいになってしまうので短く分かりやすくします。

ビットコインのような世界的規模のシステムを作ったことはありませんが私も金融系のSEの経験があるのでまず頭を悩ませるのは処理速度でしょう。クライアントサーバ方式という従来のサーバにアクセスを要求し結果をもらうような形ではいくらサーバの性能を上げても世界人口の利用には到底処理できません。サーバを並列にしたとしても同じでしょう。

サトシナカモトはこれをどう処理したか?その答えが分散台帳なのです。

例えば規模を小さくして会社にしましょう。Aという会社は5社の会社と取引があるとする。従来ならばATMのように順番に並んでもらい処理を済ませていく方式でした。これだと順番を抜かすことができませんので人が増えれば何時間もまつことになるしトラブルが起こってしまえば後の人は処理で出来ません。

分散管理台帳はざっくりいうとA社が使える残高を計算して開示しそこから勝手に引いていってもらう形式です。つり銭モデルという例えが分かりやすいかもしれません。

例えばスーパーをみればよく分かると思うのですが店頭でその会社の口座金額全てを持っているわけではないでしょう。10万円を用意してもらうお金とおつりをやりくりしていたら事足りてしまいます。そのレジが10台あればお客さんを同時に処理できます。

仕組みとしては未使用の1万円をもっておりそのうち2000円で物を買うとしたら1万円のトランザクションは消え、8000円の未使用のトランザクションが生まれるのです。この未使用トランザクションをかき集めた結果を残高とします。

こうすると残高が残っている限りATMのように前の人が終わるのを待つ必要が無い(分かりやすさ重視なので細かいツッコミはなしでお願いします)わけです。これを並行処理といいます。ビットコインは本来並行処理が出来るため処理速度が速いのですが、利用者の増加で認証の難易度が上がりすぎたため処理速度に問題を抱えています。

プライバシーという観点から見ると優れており、ビットコインは犯罪者に良く狙われます。そしてスマートコントラクトには向きません。

【アカウント方式】

続いてアカウント方式です。こちらはイーサリアムベースの仮想通貨に使われています。使える残高は特定のアカウント内の残高(balance)として表現されるためデータ量は小さく、利用者が記述するプログラムも簡単になります。このためスマートコントラクトに利用しやすく爆発的に利用者が増えているのです。拡張性は低く決まったことしか出来ません。

しかしアカウントの残高の結果が確定するまで他の人は書き込めないためATM的な処理方式となります。つまり並列処理には向きません。

またイーサリアムの取引手数料(Gas:ガス代という)が問題になっています。DeFi市場の盛り上がりで数ヶ月にわたってイーサリアムのガス代が高騰し続け、2020年9月1日時点までに過去最高の11.75ドルに達しました。最低単位の350円送るのに1200円かかるのですから笑えません。

ガス代の仕組みはイーサリアムを処理したいユーザーがガス代を自由に設定できるため、マイナーはガス代の高いトランザクションから処理しようとします。そのためどんどんガス代が高騰していくわけです。

このガス代が問題でイーサリアムに変わるものとして手数料の安いADAやトロン、ソラナが注目されているのです。

プライバシーは特定のアカウントに紐付けされるため高くありません。


【Extended UTXO】

ここまで二つの認証方式を書いてきましたがそれぞれ良い点もあるけど悪い点も明らかになってきました。じゃあ良い所はまねて、悪いところは解消したらどうかなとチャールズ・ホスキンソンは考えます。UTXOにスマートコントラクト機能を加えた拡張UTXOを作ればいいじゃないかと。

そうすれば並行処理をしながら、スマートコントラクトを大量にさばけます。なおかつチャールズはNFTの一意性という性質を使ってオンチェーンに乗せる前にこのトランザクションが本当かどうか確認できるようにし、なおかつスマートコントラクトにかける条件も沢山、複雑なことが可能になるようにしました。

こうしてADAのブロックチェーンにスマートコントラクトの機能をもたらす大型アップグレードのメインネット実装日が2021年9月12日21時44分51秒に予定されています(日本時間2021年9月13日午前6時44分51秒)

これにあわせてすでに実装されているHydraはブロックチェーンの外でトランザクションを処理するオフチェーンプロトコルです。エディンバラ大学のブロックチェーン研究所の協力のもとで5年の月日をかけて開発され、理論上、1秒あたり100万件のトランザクション処理も可能にすると説明されました。決済大手VISAのようなグローバル決済のネットワークよりも速くトランザクションを処理できるとされ、注目を集めている技術です。

そして開発プラットフォームのプルートス、イーサリアムコンバータなども同時に使い始めることができるためイーサリアムのガス代を嫌って大量に流れてくることが予想されます。

そして興奮と熱気のなかでのカルダノサミット開催。きっと大きなニュースの発表があるでしょうね。チャールズ自身が「すごいことになる」と言っているのですから。

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