#57 太陽電池・リチウムイオン研究者にいろいろ聞いてみた

太陽電池・リチウムイオン研究者の方とツイッターで知り合うことが出来まして、私の長所は「知り合ったばかりの人に有料レベルの情報を躊躇なく聞く」ことなんでインタビューしてみました。名前は出さない約束なので研究者Aさん(文中敬称略ご容赦ください)とさせて頂きます。


ビッポ「今研究されているテーマはなんですか」

研究者A「会社ではリチウムイオン電池関連の研究開発をしています。大学・大学院では太陽電池の研究室におりましたので、研究分野は多少の知識があります。」



ビッポ「そもそも太陽光はどうやって発電してるのですか ?」

研究者A「シリコン基板などの半導体に太陽光を当てると、そのエネルギーを吸収して正孔(+)と電子(ー)に分かれます。その電子を電流として受け取ることで電気エネルギーをえることができます。種類によりますが、おおよそ入射する太陽光のエネルギーのうち15~20%を電気エネルギーに変えることができます。」



ビッポ「菅首相のエコ発電政策で御社に何か影響はありましたか 」

研究者A「弊社は太陽光電池よりもリチウムイオン電池に関する事業があるため、そちらの影響が大きいです。エコ発電そのものよりもカーボンニュートラルやEV化の政策が追い風になっております。ただ、現状の事業の利益には繋がっておらず、将来への期待値が上がった程度です。」



ビッポ「日本では自然エネルギーは高いという印象ですが今後価格はさがりますか?また伸びていくと思いますか?」

研究者A「金額としては下がっていくと思いますが、欧州と比べても安いレベルになることはないと思います。世界的なカーボンニュートラルの流れを受けて、自然エネルギーの割合は伸びていくと思いますが、日本は自然エネルギーの活用できるところが限られておりますので、2030年に電源構成の20%までは伸びないかな、と思っています。(政策で無理やり伸ばすことも想定されますが、そうなると電気代が高くなるので産業界から反対が出ると思います)」



ビッポ「風力、太陽光、原子力などこれが伸びてくるというお考えはありますか?」

研究者A「カーボンニュートラルの達成のためには原子力を伸ばすのは必須だと思います。政策としては風力が伸びてくることが予想されますが、絶対量は限られます。太陽光ももちろん伸びてくるとは思いますが、限定的だという認識です。」



ビッポ「今後どのようなエネルギー構成が適正とお考えですか? 」

研究者A「電源構成として答えると、特定の電源によらないベストミックスが適正だと思います。そのためには原子力は必須で、原子力30%、LNG火力25%、石炭火力15%、再エネ30%(水力含む)が理想だと思います。現実的には原子力と再エネ。現実的には原子力と再エネをここまで伸ばすのに世論と戦う必要があるので、政府の力の入れ方次第、だと思います。」



ビッポ「ペロブスカイトという太陽光発電膜について御社では何か研究していますか?」

研究者A「弊社では研究されていないと思います。(昔はCIS系や有機系の太陽電池の研究をしていたようですが、事業化するのが難しいという判断になったようです)」



ビッポ「ペロブスカイト太陽光発電膜は伸びると思いますか?」

研究者A「ペロブスカイトは私が研究室にいた時(約8年前)から学会で大ブームとなり、各大学や研究機関で挙って研究していました。そして次々と変換効率などの記録が更新され、凄まじい勢いで東芝での量産開始にまで至っています。それほどまでに注目されている技術であることは間違いありません。

ただ、ペロブスカイトといえども現行主流のシリコン系に置き換わって主役になることはないと思います。製造コストや変換効率で勝ることは難しいためです。ペロブスカイトの特徴は薄くできることにあり、ビルの窓や壁、車の上など通常は太陽電池が置けないような場所に設置することが最大のメリットです。

よってペロブスカイトのメガソーラーなどはおそらくできないと思います。あるとすると、住宅やビルの建造時にペロブスカイトの太陽電池を壁にめぐらさせて自家発電をすることができる、といった使い方になると思います。小泉大臣が住宅やビルには自家発電の設置を義務付ける、といったことを考えているようなので、これが現実化すればペロブスカイトは大きく伸びると思います。」



ビッポ「今後、蓄電池は需要あるとおもいますか? 」

研究者A「蓄電池の需要は間違いなく伸びると思います。自然エネルギーの活用のネックは電源の安定性であり、蓄電池はそのために必要なものになります。これまでは蓄電池の値段が高く、なかなか投資に踏み切れないところが多かったのですが、EVの普及などで電池メーカーのリチウムイオン電池の製造コストが抑えられる、あるいはEVで使用した電池をESS(定置型)にリサイクルする、といった要因で価格が大きく下がり、自然エネルギーと組み合わせる蓄電池の値段も大きく下がると見込まれています。個人的には太陽電池そのものよりもこちらのほうがおいしい市場のように感じます。」



ビッポ「あなたが今後伸びると思うエネルギー技術を教えてください」

研究者A「上の質問で既に答えてしまいましたが、ペロブスカイトと蓄電池のセットは大きく伸びる可能性を秘めています。(電源構成に影響を与えるほどではないかもしれませんが)エネルギーの割合でいうと、海上の風力発電がもっとも影響が大きいでしょう。水素発電、アンモニア発電、バイオマス発電も注目されると思いますが、主流になることはないと思います。あるいは自然エネルギーでできた電力を貯める方法として蓄電池ではなく水素に変換して貯める技術も注目されています。」



感想。

エコエネルギーへの移行政策が国の目標になりつつある現在、メーカー研究者としてはイケイケなのかと思いきや、政策に無理があると電源構成などはけして楽観視していない研究者としてのリアルな回答を頂きました。

リミポの社外取締役で経産省OBの石川和夫氏も「原発の無いエコエネ100%は狂気の沙汰。絶対不可能」と言ってますからね。

「EVで使用した電池をESS(定置型)にリサイクル」は全く考えになかったので驚きと日本企業の技術の高さに嬉しい気持ちでした。

ペロブスカイトに関してはこれさえくればゲームチェンジャーになりうるという自分の認識は甘すぎました。研究者の方々はもうとっくにコスト高であることを見て研究を辞めている会社も多々あるということですよね。しかしコスト面に関しては未来は下がっていくと思うし、東芝が本気なのは利益化できる目処があるのだろうと思っているので失望はしていません。

例えば携帯電話でも、最初は初期費用15万、通話1分100円だったわけで便利だと思えばどんどん参入は増えサービスも安くなるわけですから。これは蓄電池にもいえること。

また蓄電池、ペロブスカイト+蓄電池に関しては商業的に伸びると思うという答えを頂き「リミポの進路はやっぱり間違えていない」と嬉しいきもちで一杯です。詳しくはいえませんがリミポはペロブスカイトに関してちゃんと準備していると思います。

ツイッターって本当に素晴らしいコミュニティツールですね。全く知らない世界の人と繋がれる。

研究者A様 本当にありがとうございました。


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