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核の恐怖

(故、星新一氏に献呈)

 20XX年。人類の悲願は達成された。
 平和を希求する各国の国民の声はそれぞれの政府を動かし、その流れは世界中に広がった。
 そしてついに、全世界の完全な核兵器の廃棄が決定されたのである。
 すべての核兵器は、国連の建造した超大型ロケットに積み、宇宙の彼方へと廃棄されることになった。
 このロケットが地球を飛び立ち、光の尾を引いて地球を離れていく光景を見たすべての地球人は、「もう、われわれは核の恐怖におびえることはないのだ」と、笑顔で肩を叩きあった。
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 このロケットは、精密に計算された軌道で、他の星に衝突することなく宇宙の彼方へと飛び去る計画であった。
 しかし、その軌道上にラロ星人のスペース・コロニーがあることは計算外だった。
 スペース・コロニーのレーダーは、核物質を満載したロケットの接近を捉え、ラロ星本部へ緊急連絡。ラロ本星からの迎撃ミサイルによりロケットは未然に破壊された。
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 軌道の計算から、このロケットを発射した地球の位置は特定された。
 「このような危険極まるものを撃ち込んでくるとは、地球人とはなんというやつらだ」
 「お返しに、こちらも特大の核ミサイルを撃ち込んでやろう」
 「一発で地球を破壊しても面白くない、すれすれをかすめる軌道で次々に発射してやろう」
 「まあ、運が悪ければ命中するかもね」
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 以来、地球人は、核の恐怖におびえながら暮らしている。

(了)


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