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飼育日記「めだかのきもち」⑰種の存続のために

水草の根元に小さく動くものが見えた。目を凝らすと、孵化直後の針子だった。稚魚と一緒に貰ってきた水草(アナカリス)に卵が付いていたのだろう。

出てきたものの、どうしたものかと底砂の辺りでウロウロしている。ガラスを指でつつくと、フワッと浮き上がった。針子を横から見るのは初めてだ。すでにメダカの形をしている。

個体の強さや運やいくつかの条件が揃って、無事泳ぎ出した針子だ。数日間の水槽内の様子から、食べられたりイジメられることはないだろうと、そのままにすることにした。針子はもう一匹見つかった。

外のメダカ鉢からはここのところ針子が上がってこない。下の方で息を潜めているのだろうか。あの目敏いボス♀が自分で食べてしまうんだろうか。

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種の存続の為に、生き物は様々な知恵や能力を使う。観察で見る限り、メダカやミナミヌマエビの場合:

○旺盛な繁殖。ボス♀は1ヶ月、ほぼ毎日10個以上抱卵している。ヌマエビは2ヶ月で50倍に増えた。

○敏捷な運動能力。針子の泳ぎ方はぎこちないが、敵の気配には瞬間移動する。ヌマエビも触ると仲間もろとも瞬間で姿を消す。

○カモフラージュ。メダカ鉢(黒)では、黒メダカはくっきりとした黒の模様に辛子の地色がうっすら浮き上がる。(ガラス鉢に隔離されるとだんだんグレーに変わっていく。)  ヌマエビは焦げ茶だが、水草の中や浮き葉に乗り上げた時は草色に。

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ガラス鉢の黒メダカ稚魚は上から見るとごく薄いグレーだが、水中では目玉と内臓以外は透明である。ヌマエビは細い背骨しか見えない。

短い寿命のどの瞬間も、懸命に生きようとする意思が伝わってくる。                                     8.  16

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