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奥会津を想う

毎年6月、只見川沿いの町で開催される物作りのイベントに参加させていただく時は、閉校した小中学校の校舎のお宿にお世話になる。地域の女性達が用意して下さる食事がとても美味しく、いつも楽しみにしている。

朝食前に、周辺の集落を散策するのも楽しみのひとつ。この地方独特の美しい建物、どの家周りにも丹精込めた花が咲いており、始末の良い暮らし振りがとても清々しく感じられる。冬場の除雪のために塀がないのも景観に統一感を与えている。

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近くの山を少し入った所にあるキャンプ場でテント泊をしたこともあるが、町役場の管理人さんが夕方、「獣除けに花火を上げときますからねー」とさらりと言って帰られた。えっ?獣?…!!    東京モンがビビる事も、地域の人々には日常の暮らしなのだ。

会津人は苦労をあまり口にしない。山深くに素材採取に行く時、背中に猟銃を担いで行く、と何年も前からの知り合いが話してくれたのも、つい最近のことだ。

この地域で、かつて山仕事や山菜採りに使われた葡萄蔓の籠が、近年都会の女性達に大人気で、イベントには全国から多くの人が集まる。葡萄蔓の籠だけでなく、ヒロロ、アカソ、マタタビ等地域の植物素材で編まれる笊やバッグは本当に美しい。

(終戦直後に葡萄蔓で編まれた山仕事の背負い籠)

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(地元の方に頂いたアカソのポシェット。アカソはいい香り。ガラケーを入れて長く愛用)

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夏の旅で泊まった温泉宿の女将と、互いの布仕事の話で盛り上がり、翌年の出店を誘われてから15年通うことになった。当時はまだフルタイムで勤務していた頃だったけれど、このイベントに出ることが、大きな目標となり、ものつくりを続けてこられたと、ご縁を感謝している。

感染者ゼロを守ってきた集落だが、昨年に続き今年も集客を伴なうイベントは中止となり、出店者はもとより、住民の方々もどんなにがっかりされておられるかと思う。

只見川沿いの町村はどこも超高齢化、過疎化が進んでおり、私が初めて訪れた頃の2500人を超えた町の人口は、この夏には1500人を下回っている。

若者が都会に出、高齢者が亡くなり、子供達と同居の為に町を去り…おそらく今、日本のあちこちで起きていることだろう。

毎年、土日の二日間で2万人を超える遠来のお客を、町の住人総出で迎えるイベントは、人口減少が急速に進む現実がありながら、頭の下がる見事なチームワークで、日本全国からやってくるお客さん、この日を目標に物作りに励む出店者、本業の合間に丹精込めて作り上げた作品を並べて迎える地元の作り手、皆んなが楽しみにしているまつりである。

震災とそれに続く風評被害、同年夏の只見川の氾濫等、様々なご苦労を乗り越えて守ってこられた伝統行事や地域経済に更なる水を差す、この感染症が早く収束して、来年こそは再開、再会出来ますようにと祈るばかりである。

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めだかに遊んでもらった夏が終わる。                   そろそろ仕事モードに移らないといけない。

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