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春咲く雑草10種の観察 生物基礎の授業の一コマ

 春は、1年間で一番、雑草や野草の花がみられる季節です。冬から少しずつ暖かくなり、草が伸び始める春は、草丈の低い雑草や野草の花が目立ってきます。
 毎年、この時期に、生徒たちを教室から校庭に連れ出しています。今回は「生物基礎」という授業の一コマの話になります。

実物を、生育している状態で見せたい!

 「生物基礎」では、最初に生物の共通性と多様性を扱います。この単元では、具体的な個々の生物について知る必要があり、「○○○」という名前の生物を例に挙げても、その生物を知らない生徒がいると話がすすみません。生徒たちに共通の認識、知識が必要です。そこで、「春咲く雑草10種」の登場です。実物を生育している状態で見てもらいます。
 10種は1時間の授業で認識できそうな切りの良い数と思ってください。選ぶ10種は、学校によって、同じ学校でも年によって変わってきます。管理の行き届いた学校は、観察できる雑草は少ない傾向です。学校の技能員さんに少し間、草取りをしないでとお願いすることも必要になってきます。
 最近は、温暖化の影響か季節の移り変わりが早いので、ヒメオドリコソウやオオイヌノフグリなどは、4月下旬では花の時期が過ぎてしまうことも多いです。
 今年度選んだのは次の10種です。
 セイヨウタンポポ、雑種タンポポ、ノゲシ、ハルジオン、オオジシバリ、キュウリグサ、カラスノエンドウ、ナガミヒナゲシ、ヘラオオバコ、チガヤ

近年タンポポの様子が変化 少し複雑に!

 この中で雑種タンポポについては、少し説明が必要です。1990年代に全国でタンポポ調査が行われました。在来種と外来種の割合が環境の指標になるということで、近隣のいくつかの高校でも実施され、私も当時、ゴールデンウィークに生徒の課題として課したことが何度かあります。当時、総苞外片が反っているか否かで、在来種と外来種の見分けができたのですが、2000年代以降、あまり反っていないセイヨウタンポポのような個体が見つかり、生徒たちが区別するのが難しくなりました。そんなこともあり、少なくとも周辺の高校ではタンポポ調査が下火になったようです。

総包外片が反り返らないタイプのタンポポ


 数多くのタンポポを観察すると総苞外片の反り返りの程度は連続的です。反り返らないのは 在来種と外来種の雑種という研究もあり、遺伝子の分析が必要だとか。今回は、写真のように反り返っていないタンポポを雑種タンポポとしました。

10種の観察ポイントは?

ヘラオオバコの花

 観察項目は、実際に観察してわかるもの①、②と、図鑑を見るとわかるもの③、④にしています。雑多な項目ですが、これならなんとか調べることができます。
① 合弁花、離弁花、花弁なしのいずれか。実際に花を分解しないとわからないものもあります。前の授業で、一見離弁花に見えても合弁花であるツツジの花を観察し、実際によく観察するように伝えてあります。ヘラオオバコもよく見ないと花弁の有無はわかりません(上の写真)。今回キク科植物が多くなったので、頭状花かどうかも項目の一つにしています。
② 草丈は、くるぶし、ひざ、こしの高さの3段階にしています。種類によってほぼ決まっている場合もありますが、踏みつけや生育場所の違いの影響を気づかせたいです。
 図鑑は「野外観察ハンドブック 校庭の雑草」(岩瀬・川名・飯島共著、全国農村教育協会刊行)を使用しています。図鑑では、
③外来種・在来種のいずれか
④何科に属しているか
を調べます。 

2,3人のグループで校庭を探索

 生徒たちは外に出るのは大好きです。春の天気の良い日、グループで協力しながら探究する、みんな熱心に取り組んでいます。うまく進まないグループには、私はヒントは出しますが、答えは自分たちで考えてもらうようにしています。
 分類の単位である種、類似の種が集まって科をつくることの確認もでき、具体的な生物、校庭の雑草をクラスのみんなで知っている状態をつくれると、以後、授業の進み方がスムーズになります。

 この調査から、生物と環境との関係、「生物基礎」では、最後に載っている章につなげます。草丈や外来種・在来種の調査項目は、そこを考えてのものです。
 とにかく、実際に生育している状態の生物を見てほしい。協力して学んでほしい。これが私の願いです。準備は大変ですが、生徒にも人気のある授業の1コマでした。








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