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長い台詞を喋ること。

2023/05/17のtweetより

長い台詞を喋るのは難しい。特に普段の生活で長々と話をするタイプではない人にとって、イプセン劇のような三行、五行と平然とひとり語りが続く戯曲は非常にやっかいに感じられるだろう。そこで、すごくシンプルな対策として「考えた結果を話すのではなく、考えながら話をする」てのはどうだろうか。

戯曲というのは、俳優がそれを読む時には最後まで書かれていることが多いので、あらかじめ決められたもの、固定されたものとして俳優に受け取られることが多い。しかし、そこには誤解がある。長い台詞を喋る登場人物たちは「決められた台詞」を読んでいるわけではない。彼らは、自分で言葉を紡ぎ出しながらその都度、喋っている。

だから、いつだって長い台詞というのは「結果として長くなってしまった」だけであって、最初からたっぷり話してやろう、なんて考えているわけじゃない。俳優は長台詞をうまく演じたいと思って、うっかり最後までの計画を立て、あらかじめ話す内容、話し方を決めて、話し始めてしまう。

つい、話が長くなってしまったり、言いたいことが沢山あり台詞なんていうのは、話しながら次々に言いたいことが湧き出てきたり、変化したりするものだ。途中で思いついたり、忘れたり、迷子になったり…。だから俳優は、いい意味で「無責任」であってほしいと願う。

この長台詞をうまく演じたい、とか、こんな演じ方じゃ飽きられちゃうかな? 成立しないぞ、この長さは! とか。そういう責任感は確かに大事だが、実際にノーラやヘルメルがその状況を生きた際にはそんなことを考えていたはずがない。彼らは、自分で言ったことを吟味しながら、すなわち「考えながら」話していたんじゃないだろうか。ならば、俳優もそうすればいい。

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