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大哺乳類展で鯨偶蹄目を学ぶ/おじぼっちの流儀

「おじぼっちの流儀」をもっとコンスタントに更新する予定だったのに、間があいてしまった。
 フリーランスで仕事への欲もなくなったおじぼっちは縛りがなく、自由すぎるため、毎日毎日野菜を売ったり、あるいは牛の世話をしたりとか、そういう決められた作業がまったくできない。定期更新もできない。

 家庭を持たないロンリー遊民は何が便利かというと、混雑を避けながらいろんなイベントに出かけられることだ。例えば百貨店の北海道物産展も平日の空いている時間帯に行けるし、桜の花見も週末の人混みを避けて、ちょうど満開宣言が出た晴れのウイークデイに楽しむことができる。
 ひとりで花見して楽しいかって? うるせえ。桜は人生の儚さを思いながら見るもんだ。

 先日、国立科学博物館の「大哺乳類展3」へ行ったついでに、上野公園の桜の花見をしてきた。いや、違う。ついでは花見のほうで、メインの目的は大哺乳類展だ。これが面白かったから、今回はそのレポートをしよう。
「平日の博物館でにわか勉強をする術」の回。無理して名前をつけなくてもよろしい。

 展覧会にもネタバレはあると思うので、これから見に行く予定でネタバレされたくない人は、注意してください。

 最近はクラウドファンディングで億単位のお金を集めたことも話題になった国立科学博物館。大哺乳類展は今回で3回目になる。
 小学生の春休みを避けて行ったつもりだったのに、それでもたくさんの親子連れで賑わっていた。

 母と子供の会話なんて普段聞く機会がないから、聞いていると面白い。
 動物に詳しい男の子が展示に興奮しながらお母さんに話しているのに、お母さんは興味なさそうに相槌を打つだけだったり、逆に教育熱心そうなお母さんが一生懸命、娘に説明していたり。
 美魔女のようなきれいなお母さんがいたから横目で見ていたら、子供に「おばあちゃん、こっちこっち」と呼ばれて、ええ、マジすか? おばあちゃんすか! と驚いたり。
「親子連れの群れに迷い込んだ、はぐれオスの狼狽日記」の回かも知れない。さっさと本題に入りなさい。

 今回の「大哺乳類展3」は、分類(=わける)と、系統(=つなぐ)がテーマ。
 ハリネズミとヤマアラシは見かけは似てるけどまったく違う種の収斂進化だとか、以前は奇蹄目と偶蹄目という分け方だったのが、現在はクジラやイルカを偶蹄目と一緒にして鯨偶蹄目と呼ぶようになったとか、そんなこんなの分類学がテーマだ。

 もうちょっと丁寧に説明しよう。
 収斂進化(しゅうれんしんか)とは、異なる系統の生物が環境要因などによって似た形態へと進化すること。似たような環境に生息し、似たようなものを食べて、似たような敵から身を守ろうとすれば、もともとは違う種の生物が、似たような形へと進化していく。サメとイルカとか、アルマジロとセンザンコウも収斂進化の例だ。

 だから見た目だけで判断すると、お、こいつら同じ仲間だろうなと思ってしまうけど、調べてみたら全然違う種の生き物だったという例がちょくちょくある。DNAを調べてゲノムがわかるようになって以降は、特にその発見が相次ぎ、これまでの分類や系統が見直されているという。
 この辺は素人の説明なので、正しい知識を身につけたい人は自分で調べてください。

吊るされているのがクジラの骨格標本

 偶蹄目とクジラ目を一緒にして、鯨偶蹄目(げいぐうていもく/くじらぐうていもく)と呼ぶようになったことは、初めてちゃんと認識した。
 偶蹄目とは、ウシ、シカ、カバなどのグループ。これとクジラやイルカのグループが近いという話は、ぼんやりと知っていた。「クジラはカバの親戚と判明した」というニュースだったか、ネットの記事を読んだ覚えがある。祖先が共通だという。

 ただ、それは「DNAを調べたら、近縁とわかった」という程度の知識だった。でも、今回の哺乳類展を見て、どうやらDNAの分子系統学だけでこの分類にしたわけではないと学んだ。

 胃がひとつなのか、胃が複数なのか。
 食べ物を反芻するのか、しないのか。
 これも哺乳類を分類する上で重要な要素であるらしい。

 ウシの胃が複数(4つ)あるのは、焼肉好きなら知っているだろう。
 ミノ、ハチノス、センマイ、ギアラ。焼肉上の呼び名では、この4つだ。なんだ、焼肉上の呼び名って。
 牛は4つの胃を使って食べ物を消化し、反芻しながら食べる。

 奇蹄目のウマは、胃がひとつしかない。競馬ファンはろくにこういうことを知らないが、盲腸ががんばって食べ物を消化する。

 さて、そこでクジラである。哺乳類展では巨大な胃が展示されていた。
 クジラの胃は4つある。なかには3つのクジラや、13個の胃を持つツチクジラのような例外もあるが、複数の胃を持つ。この点はウシと近い。
 一方、反芻はしない。ここはウシとは違う。

 そこでカバである。
 カバの胃は3つある。複数だ。そして、反芻しない。おお、クジラと近い。
 と、これもクジラがカバの近縁と認定された理由のひとつなのかはちゃんと理解していないが、DNAだけで分類が決まるわけではないと、少しだけ理解した。内蔵や、食べ物の消化の仕組みによって分けることで、生物の進化(分化)の枝分かれが見えてくる。というより、それをDNAと答え合わせする感じなんだろうか。

 もしかして、専門家が読んだら「おいおいおい、違う違う!」とツッコミくらうこと書いてるのかな。まあ、いいや。おじぼっちは恥を恐れない。
 私が今回かじったことを整理して伝え、また誰かが興味を持つきっかけになればいい。生物の分類はアリストテレスの時代から存在し、今後も変わりながら続いていくと、大哺乳類展にも書いてあった。

 ちなみにオスの陰茎も、偶蹄目とクジラ目は近いと、別の文献で読んだ。ウマやサイなどの奇蹄目はペニスをぶらぶらさせ、交尾の際に勃起させるが、鯨偶蹄目のペニスは折りたたんだ状態でしまってあり、普段は外から見えない。
 言われてみれば、ウシやシカのペニスは見たことがない。クジラも外に出ていたら泳ぐのに邪魔になる。この点でもクジラは偶蹄目の仲間なのだ。

 もうひとつ気になったこと。

 上の画像はヒト科の展示で、真ん中の二本足で立っているのはチンパンジーだ。
 チンパンジーの骨格標本が二足の直立姿勢というのはチャレンジングな展示だったりするんだろうか。別に珍しくもなく、深い意味はないのかな?

 詳しい人がいたら、コメント欄で教えてください。
 Xの王様アカウントも貼っておきますので、上記のクジラの話なども含めて、間違いなどあれば遠慮なくコメントしてください。

 大哺乳類展を見終えて、常設展示の地球館へまわり、いつものようにティラノサウルスやトリケラトプスの恐竜たちをながめてから外へ出ると、上野公園は一段と花見の人たちで大賑わいだった。

 外国人の観光客も多く、おお、これもまた「見かけは違うけど中身は同じ」様々な人種が混在する哺乳類展ではないか! と、ゴチたのだった。

●補足の追記4/8。
 鯨偶蹄目に関しては、この説明テキスト画像を貼っておきます。

 要約「形態的特徴は偶蹄目との近縁な関係を支持していたが、1997年に発表されたDNA解析により、クジラとカバが姉妹関係にあることが明らかになった。今回の哺乳類展ではこのDNA解析の結果を、骨格や内臓の特徴からも検証してみよう
 という順番のようです。

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