小さな田舎町で起きた感動的な話①
まだ雪の残る3月、深夜に突然消防署のサイレンがけたたましく鳴った!
サイレンは何度も何度も繰り返して鳴らされ、消防署が近い我が家からは、消防車が何台も出動していくのが分かった。
翌朝、テレビのニュースを見て驚いた。
火災が起きたのは、弟と同じクラスのK君宅の店舗兼住宅で、火災の原因は保険金狙いの祖父による放火だった。
私と両親が「K君の家はお店屋さんなのに、家もお店も無くなってこの先どうするんだろう?放火だったら火災保険出ないし気の毒だね。」と話している横で弟が呟いた。
「K君、(中学の)制服も燃えちゃったよね?卒業式どうするんだろう?」
実は、卒業式を間近にひかえていた時期だった。
その日、弟のクラスでは自分たちがK君に出来ることは無いかと話し合い、その結果、「廃品回収をしてK君に制服と学生カバンをプレゼントしよう」ということで意見が一致した。
さっそくその日から、先生も含めクラスの生徒全員とPTAの数人のお母さんで1週間の廃品回収が始まり、町内のあちこちで小さな子供たちが一件一件家を訪問して、頭を下げて廃品を集めて歩く姿を見かけるようになった。
いつもなら学校から帰ってくるとコタツに入ってテレビゲームに熱中して母に怒られていた弟だったが、その日からは帰ってくるなり「行ってきます」と言って廃品回収に出かけて行った。
しかし、廃品回収と言っても夏とは違い、北海道の3月はまだまだ冷え込む日が多く、その年は昼間でも手袋を履いても手が冷たくかじかんでしまうほど寒い日が続いていた。
それでも彼らは「卒業式には全員で中学の制服を着て出席するんだ!」という気持ちだけで、誰一人弱音を吐かずに頑張った。
子供たちが寒さで冷たくなった手に息をかけて温めている姿や、冷たい空気で顔を真っ赤にしながら頑張っている姿は、町の人たちに感動を与えた。
どの家でもありったけの古新聞、古雑誌、空き瓶などを提供してくれて、中には「寒いからこれ飲んであったまりな(温まりな)~」と言って温かいココアを飲ませてくれた家もあったという。
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