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小さな田舎町で起きた感動的な話 ③

子供たちが頑張って得たお金は、1週間の廃品回収で60,000円弱になったと弟から聞いた。
廃品回収でこれだけのお金を得るのは相当大変だったと思う。

町内の雑品屋さんもかなり頑張って値を付けてくれて、物によっては高く買ってくれるところを紹介してくれたそうだ。
本当に、たくさんの人の思いが込められた重みのあるお金。

私が持って行った大量のエッチぃ本は、価値の高い本が何冊かあり、全部で5,000円で買い取ってもらえたらしい・・・協力できたことは嬉しいけど、弟に「本」と言われる度に実は罪悪感と恥ずかしさで胸がチクチク痛んでいた。

感動的な話はそれだけじゃなかった。

担任の先生がそのお金を持って、注文していたK君の制服を受け取りに町内の制服指定店の呉服屋さんに行くと、そこのご主人が「こんな大切なお金はいただけません、その気持ちだけで充分です。これは私から皆さんへの贈り物です、どうか受け取ってください。」と言って、K君の制服と学生カバンをプレゼントしてくれたという!

呉服屋のご主人も、毎日頑張って廃品回収をしている子どもたちを見て、自分も何か協力したいと思っていたと先生に話してくれたそうだ。

まるで映画やドラマのクライマックスのような話だけど、これは本当にあった話!呉服屋のご主人が格好良すぎて泣けた(涙

実はK君には6歳年下の妹がいて、火事で買ったばかりの机もランドセルも燃えてしまって悲しんでいたという話も聞いていたので、K君の制服とカバンを買う予定だった60,000円は、妹の為に使ってもらう事に6年生の満場一致で決まった。

卒業式当日

真新しいちょっと大きめの中学の制服を着て、K君を含めた6年生全員が卒業式を迎えた。
全員が制服を着てこの日を迎えることは、彼らが何よりも願っていたこと。

卒業証書を手渡した後、校長先生はK君の家が火事になったことに対してK君を激励し、6年生全員に廃品回収を頑張ったことを「みんな、立派だった!その友情をいつまでも忘れないでください!」と声を詰まらせて褒めたたえた。

そして「素晴らしい卒業生にもう一度、心からの拍手をしてあげてください!」と言うと、小さな体育館がコンサート会場のように大きな拍手に包まれ、いつまでも鳴りやまなかったという。

おわりに

K君の家が火事になったのは、本当に不幸で、気の毒で、胸が痛みました。
絶対に起きて欲しくなかった事件です。
その火事でだれも怪我をしなかったのが、せめてもの救いでした。

その後の子どもたちの優しい行動は、町の人たちに感動を与え、いつしか町中の人たちも協力し合い、K君一家を見守るようになっていました。

このエピソードは昭和時代の話で、当時の廃品回収で使用していたのは、人力のリヤカー。
回収した廃品をリヤカーにたくさん積んで、PTAの親がリヤカーを引いて、子供たちが小さな手でリヤカーを押していた姿は、今でも目に焼き付いています。

これは、北海道の田舎町で起きた、その町の人達だけが知る話です。



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