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IT企業で働くサステナビリティ担当者にインタビュー【第1弾】

皆さんはサステナビリティに関する職と聞いて、どのようなものを連想するでしょうか?サステナビリティに関わることを仕事にするには、企業の「サステナビリティ担当になる」という選択肢もあります。しかし、パッとイメージする職種でありながら、まだ環境対策への取り組みをはじめたばかりの企業も多く、仕事内容などわかりづらいのが現状です。そこで、bilityでは実際に企業のサステナビリティ担当の方にお話を伺い、「気候変動領域で働くこと」を考えるインタビュー企画をスタート!

第1弾は、社員数400名規模のIT企業にて、サステナビリティ担当者であり広報も兼任している、サステナ研究部 ( @learnCircular)さんにお話を伺いました。社内のサステナビリティ担当者の立ち位置や業務内容、普段の悩みなど…サステナビリティ担当者の実態をお伝えします。




ーーサステナ研究部さんは、どのような経緯でサステナビリティ担当になったのでしょうか?

A.もともとキャンプや登山が好きで、自然の部分に関わりたいといったところがきっかけです。今まで、会社では気候変動対策について特に取り組みをしておらず、個人的に懸念を抱いていました。会社の方針変更のタイミングで、自社でもサステナビリティの話題が取り上げられるようになり、自ら手を挙げてサステナビリティ担当になりました。



ーー誰も手を挙げていない状況から、どうしてやろうと思ったのでしょうか?

A.会社の将来性を考えたときに、早く取り組みを始めないといけないのではないかと危機感を感じたからです。環境問題に向き合うことの重要性は、濃淡あれど弊社社員それぞれが感じていることだと思います。しかし、現実問題、目の前の売上やお客様と向き合うなかで、みんながみんなその時間を捻出することは難しい。このままだといつまでたっても会社が動き出せないと感じていました。

そこで、まずはボランティアでも良いから会社として動くキッカケを活動の中で作り出したいと思い、活動をはじめました。活動を通じて社内に「意外とうちもちゃんとやれるじゃん!」という空気感を作れれば、応援してくれる社員も増え、活動のための予算も確保しやすくなります。今は人もお金も限られた状況ではありますが、将来的にしっかり取り組めるよう、その下地を今固めていこうと思っています。



ーー貴社のサステナビリティ担当は、どのような組織なのでしょうか?

A.自分と上長と有志の10人ほどで、社内プロジェクトとして動いています。発足は2021年の中頃で、サステナビリティ推進のための活動を経営側に提言・促進する目的で活動を開始しました。プロジェクトの発足にあたり、参加者を全社に向けて募集をかけました。5~10人くらい集まれば良いかなと思っていましたが、いざ始めると30人以上の応募が。社内でも同じように危機感を抱き、何かをしたいと思う人が実は多かったというのは大きな発見でした。

ただ参加し続けてもらうことは簡単ではなく、30人いたメンバーも今では10人ほどに。要因はいくつかありますが、有志参加のため、時間外の扱いで仕事の評価には繋がらず、なかなかモチベーションとエンゲージメントが高まらないというのが主な要因だったと思っています。

それでも、具体的に自分たちの力でできる取り組みは少しずつ進んでいますね。タンブラーを持参したらコーヒーが30円引きになるとか、社内デザイナーとゴミの分別ポスターを作るとか…。最近はGoogle社が提供するツールを活用して、CO2排出量を可視化することにも挑戦しています。しかし、お金や手間がかかる施策になると途端に実施が難しくなります。ちょっと裏側をお話しすると、業務の売上には直結しない施策に対しては、予算が出づらいというのはありますね。



ーーボトムアップで進めていくのには難しい部分がありますよね。他にも、課題として認識していることはありますか?

A.サプライチェーン排出量の算出ですね。環境省で公開されているデータを活用して、自分たちでおおまかに算出することはできましたが、正確に出すためには外部の力が必要だと思うようになりました。それだけでなく、ただ開示するだけではむしろリスクになってしまう可能性もあり、活用の難しさを感じました。

あとは適切な予算の使い方についても難しさを感じています。今この領域について詳しい者が社内におらず、手探りでプロジェクトを進めている状態です。そのため提案しているお金の使い方がはたして有効なのか、提案をする側も受ける側も評価しづらくなっています。会社として取り組む価値のあることのリストのようなものがあったら良さそうです。



ーーなるほど!確かに新たにサステナビリティに取り組み始めたいと思っている企業にとっては有益な情報になりそうです。続いて、企業のサステナビリティ担当をやってみて分かったギャップなどがあったかについてもう少し聞かせていただいてもよいでしょうか?

A. 自然が好き、キャンプが好きというきっかけでやり始めましたが、やっぱりギャップは感じますね。正直、思っていた以上に地味な部分もあります。そんな日の週末は登山やキャンプをしてエネルギーをチャージしています(笑)。



ーーそうなんですね!仕事へのイメージと実際の業務のギャップについては、サステナ研究部さんはどのように折り合いをつけていらっしゃいますか?

A. 今のサステナビリティ担当の立場だからできる事も多いと思っています。日本の中小企業の環境対策のお手本となれれば大きなインパクトを起こせますし、世の中的な流れとしてもこれ以上にないタイミングです。もし環境から遠い企業に就職した場合でも、必ず対応しなければならないタイミングはやってきます。そんな時に内部から声を上げて、会社を変えていければと思っています。


ー ーありがとうございます。最後に、チームとしての次の目標はありますか?

A.提案を投げかけている段階ですが、2030年でCO2排出量の半分、2050年でゼロの目標を掲げたいと考えています。他にも、新しくサステナブルな営業所の拠点を作りたいと思っていて、別府と北九州に視察に行きました。コミュニティスペースやワーケーションスペースのような場所を作ったり、サステナブルなことが学べる場所などをつくりたいと思っています。例えば別府だったら、地熱を使った営業所とか良さそうだなと。個人の温泉や観光業の人に向けて、営業もできる場所として、今提案をしている最中です。



💭bilityのひとこと

以前、bilityで配信した座談会記事にて、気候変動領域で働くモチベーションについて、「自分の会社がサステナビリティを経営方針に組みこんでいるくらい取り組んでたら、モチベーションになるかもしれない。」というメンバーの発言がありました。

(→記事はこちらから 📣Z世代が『SDGsに関する調査』を読み解く。「SDGsラベリング止まりの会社はむしろ悪印象」の声

しかし、依然として一部の人の声掛けを起点に取り組みサステナビリティに取り組み始めたばかりの企業も多いのが現実です。今回は、そのようなボトムアップの動き方をしている企業ではどのようにサステナビリティが進められているのか?担当者はどんなモチベーションで働いているのか?を中心に直接お話しを伺いました。

自社の取り組みに対して漫然と悲観的になるのではなく、自分自身が会社を変えていく気概があれば変化を起こせるんだ、と今までと見え方が変わりました。できることから着実に取り組む、当たり前だけれど大切なことを改めて実感する貴重な機会となりました。

次回は、引き続きサステナビリティ担当者へのインタビュー第二弾をお届けする予定です!お楽しみに!👋

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