デキる人材と給与水準が相関しない件

2019年2月11日 
ここ数か月、特に今年に入ってから、エントリーレベルからジュニア、シニア、マネジャー、エグゼクティブクラスまで幅広い人材の採用活動をしています。

その中で、仕事のデキる人材と給与水準はほとんど関係ないなと痛感する事が多く、今回の記事にしてみました。

貧富の格差が大きいウガンダ
まず、前提知識として、日本とは異なり、大半の途上国は貧富の格差が激しいです。

途上国に限らず、先進国でも日本ほど、貧富の差は小さいところも中々ないでしょう。

(※一般的にジニ係数上では日本は貧富の格差があると言いますが、中間層という存在が分布の多くに含まれる日本は珍しいと思いますし、私も40か国以上を訪れ、5-6か国に住んだ経験から、日本は特別だと感じます。)

アフリカの多くの国々と同じく、都市(特に首都)と地方では、全く異なる惑星なのか?くらい、生活水準が異なります。

(ざっと補足をすると、貧困国になればなるほど、一人当たりGDPと製造業における平均賃金の差が開く。確か、アフリカ大陸の場合は10倍近い差があったと記憶している。ちなみに、日本はほぼ同じ。理由は、①地方では自給自足になる事が基本であり、外部からモノを調達する事が少ないため、サバイブするためのコストが小さい。一方で都市部で暮らす場合は、自給が出来ないため、お金を出して買うものも多く、一定の報酬がないと暮らしていけない)②自国で生産しておらず、多くが外国から輸入され、非効率なロジなどから輸入品は日本よりも高くなる場合も多い。)

地方では、月10万Sh(3000円)で生活するような方もいますが、さすがにカンパラではどんなスラム街に行ってもまともな暮らしは出来ません。。

ちなみに、私が2010年にケニアの電気水道のないマサイの村で生活していた際に、地元民と比べればそこそこ裕福な暮らしをしているなと思っていた際の生活費は家賃を除き3000円でした。当時、村ではお金を出して嗜好品(ポテトチップス、チョコ、アイスなど)自体がなかったため)

もちろん、病気時の医療費、養育費、冠婚葬祭は別途かかり、それが想定以上に大きな出費かつ頻度で起こるため、生活費以上のお金は必要なのですが。。

カンパラでは、最低でも80ドルくらいでしょうか。

(以前に、門番を月50ドルで住み込みで雇っていましたが、家賃も電気水道代も払う必要がなくとも、こちらから、たまに食料の補助をしなければ、痩せていくくらいの金銭感覚です。)

カンパラにおけるクラスにおける給与水準
そのため、給与水準についてはカンパラに限定して話します。

弊社のドライバーで、月100ドル弱からスタートとなります。競合他社と比べて同水準ですが、グローバル企業と比べれば2/3くらいでしょうか。

さて、今回はブルーワーカーは除き、ホワイトカラー(オフィスワーカー)に絞った話しとします。

大卒初任給が100-200ドル程度がカンパラの相場でしょうか。

ちなみに、日本の大学進学率5割と異なり、ウガンダの高等教育(高校以上)進学率は9-10%に過ぎません。

日本と比べると大卒はエリート中のエリートですね。

初任給(手取り)が100-200ドル程度。
3-4年目で150-300ドル程度でしょうか?
5-7年目くらいまでいけば、ボトムは150ドルで変わらないですが、上は500ドルくらいまで行くでしょう。
30代になり、マネジャーのようなポジションにつけば、1000ドルを超える人もいます。
そこそこ名の知れた企業で本部長クラスになれば、3000ドル以上になるでしょうか。
(頂点は、国際機関や国際NGOなどの職員で、マネジャークラスは3000ドル-5000ドル-7000ドルになると言われています。)
※上記はあくまで相場であり、本当に優秀な方、外国帰りのディアスポラなどは、初任給で1000ドル超える人も当然おります。

※また、累進課税のハードルが低いため、上記は手取りであり、総額はずっと高くなります。手取り300ドルを超えると、所得税、社会保険(雇用主負担も含む)を含む総額は500ドルくらい。手取り1000ドルだと、総額は1900ドルくらいになります。)

大卒エリートと言えども、100ドルから3000ドルと30倍も差があるのは、やはり多いなと思います。

(3000ドルクラスの人もごく一部ではなく、ちらほらおります。)

日本だと大卒初任給300万円だとして、さすがに年俸手取りで9000万円の人はチラホラはいないかと思います。。

デキる人材と給与水準が相関しない
さて、前置きが長くなりました。

ここ数か月、別々のポジションですが、100ドルクラス、300ドルクラス、500ドルクラス、1000-3000ドルクラスの人材の採用活動をほぼ同時期にしています。

午前中に100ドルクラスの新卒の面接をして、午後に1000ドルのエグゼクティブクラスの面接をする等、頭の切り替えが重要になります。。

その中で、薄々感じていたのですが、『給与がある一定水準を超えると、仕事がデキるかどうか、全く比例しない。。』事を痛感します。

その基準は概ね手取りで80-100万Sh(250-300ドル弱)でしょうか。

100万Sh貰っていた人でも、当事者意識をもって自立した仕事をしていた人もいれば、

400万Sh貰っていても、100万Shの人と同じような事しかしてない、もしくは言われた事しか出来ないの??みたいな人もいます。

そして、60万Shの人で、ビジネスの基礎知識(MoUとは、相見積とは、メールの書き方、Invoiceとは)を知っている人もいれば、250万Shの人でも、その辺の知識を持ち合わせていない人もいます。。

(さすがに、マネジャー層で雇った人に、この辺りの基礎知識を伝えなければならないのは、がっくり来ます。。)

なぜ、相関しないのか?
なぜ、給与水準と優秀な人材が相関しないのでしょうか?

もう少しちゃんと言うと、

『なぜ、優秀なの人、相場水準の高い給与を貰えていない人が多いのでしょうか?』

『なぜ、仕事が出来ないのに、そんなに高い金を出して雇われていたのでしょうか?』

個人的には以下4つの理由があるのかなと思います。

1.極端かつ長期的な需給バランスの崩れ(失業率5-6割)
エリート中のエリートとなる大卒でも、正式な会社に就職できるのは5割を切るウガンダ社会。

需給のバランスが崩れているため、相場というものが起きません。。

これだけ見ると、超買い手市場なのですが、

実際は、多くに人が世界的な相場に見合った仕事が出来ない場合も多く、50人面接しても妥協しないと一人も残らない場合もあります。(この辺りは以前に採用のコツの記事で記載しました。)

そのため、手っ取り早く、ケニア人、インド人を雇っている会社も多いですね。。

2.国外(外資企業や国際機関、国際NGOなど)の介入により相場がなくなる。
上記の給与水準。東南アジアで一般的に言われる人材と比べると、能力を加味すると、高く感じる事はありますが、

欧米諸国、先進国と比べるとずっと安い人件費です。

国内に多くの産業がない事もあり、外資系企業がトップシェアとなる業界も多く、世界的に有名なグローバル企業も多くあります。

それらの企業の中には、相場を無視して、超高額で雇用する場合もあります。

Serena hotel(カンパラ一の高級ホテル)の清掃員が弊社のマネジャーより高い給与だった事もあります。

また、外国人Expatsが、相場を無視した超高額で、家政婦、運転手を雇う事も良くあります。

加えて、国の歳入の半分が国外からの援助で成り立っている国のため、開発援助機関も多く、特にUN関連の国際機関や欧米の大手NGOの職員の給与は高くなります。

それらの期間は、Temporaryで数か月だけ雇用する場合もあり、短期とはいえ高い報酬を得ていた人も多いです。

(その報酬と同レベルを貰えることを期待していて、全然就職できない人もよく面接に来ます。)

3.経営陣や管理職自体が、どういう人材が優秀か?を把握していない??
ここは賛否両論分かれると思いますが、大企業や大組織の管理職などで、優秀な人材を評価できているのか?と感じる事があります。

たたき上げの経営者などは、人材を適切に評価しているなと感じる事が多いですが、

組織の管理職などの方を見ていると、成果主義の環境で仕事をした事のない管理職も結構存在し、採用基準、給与体系がちぐはぐだなと感じる事があります。

その業界に長くいれば、その業界で人脈さえ持っていれば、デキる人材!として判断されている例もよく見ます。

実際に会ってみると、20年間業界で働いているのは事実なのですが、業界内の知識はあれど、業界の動向や今後のマーケット予測など、理解していないだけでなく、考えてこなかったんだろうな。というマネジャーにもよく出くわします。

上記の状況のため、前職の給与水準など当てにならず、お金を出せば良い人材が獲得できるか?というと、全くそうではないため、難しいところになります。。。

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