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東郷の初雪─寒いけれど人は温かい/河和田微住

文 : 魏 曉恩(BuBu)
攝影:Jerry Wang
翻訳:伊藤ゆか

東郷で迎える初めての早朝。私たちが布団の中でグウグウ眠っていると、伊藤さんが嬉しそうに扉を開けて入ってきて窓を開けた───「外は雪が降っているよ!」。雪は羽毛のように車の上に積もっており、私はこれ以上ないほど興奮して、一瞬で服を着ると手足が冷えるのにも構わず庭に飛び出し雪の中で跳びまわって、車の窓にハートマークを書いた。庭の松の木にも分厚く雪が積もっていて、天を仰ぐと雪花が舞っていた。ひらひらと落ちてきて、息を吹くと舞い散り、吐いた息は一筋の霧になって立ち上った。

前日は夜の10時近くになって、ようやく福井の拠点である佐々木さんの家へ到着した。佐々木さんの自宅の日本家屋は、一歩み足を踏み入れると木の良い香りが感じられた。私たちは増山さんの手作り羊羹を食べ、福井で最初の杯を挙げ、おおいに日本風の一日になった。

私が見たのは福井では今年二度目の雪で、幸運なことに雪の日に居合わせることができた。その雪は冬の妖精、羽を持った白い梨の花のようだった。防寒コート・保温手袋・毛糸に身を包んだ佐々木さんが、シートベルトをしながら私たちに「もっと綺麗な場所に行こう」と誘った。

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山に登っていくにつれ、色彩はよりモノクロに近づき、アナと雪の女王を彷彿とさせた。山や川、樹木、家屋が雪化粧をした世界で、木の枝はゆらゆらと小さく揺れ、雪の塊がはらはらと落ちる。夜明けの光が雪の田んぼや野を照らし、それはどこまでも果てし無く、眩しさに目がチラチラしてしまった。

山谷では雪がより厚く積もっていて、軒先では雪泥が混じっていた。最初に白い王国に踏み入れると、手の指が凍えて赤くなり、感覚がなくなっていくのだが、心は沸き立っていて、小さな子供のようにはしゃぎ回った。

遠くから聞こえる微かな叫び声を聞いて、心が奮い立った。進んでみると、空手道場の人々が山の中で稽古をしているのだった。「寒くないの?」───私たちはすっかり凍えて歯の根が合わない。ふと見ると、元気さかんな男性たちと何人かの子どもが、滝の傍で薄っぺらい道着を纏って手合わせをしている。心は研ぎ澄まされ、技は熟達しており、力強く、かつスマートである。目の前に広がる画面は、何かしらの日本の映画の中で見た冬の光景そのものといったかんじで、最後に武士たちは一糸まとわぬ姿で滝の下の凍えるような水に飛び込んだ───超絶coolだ。

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