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わたしにつきまとう土地/台東・長浜微住(前編)

文:HuiChia Chao 翻訳:田中

友人の高耀威さんが台東県の長浜という場所に小さな本屋「書粥」をオープンしたことをFBで知った。高さんは私が特に注目している友人。彼はもともと台南の正興街というストリートにお店をオープンし、その後何人か友人たちとこのストリートに軒並み様々なお店をつくり、面白い企画を始めた。
例えば日本のオフィスチェアーリレーをこの街でも開催したり、
「世界で最も視野が狭い出版社」という名でZINE『正興聞』を発行、表紙はこのまちに住むおばちゃん3人を「正興三妹」としてデビューさせ、台南政府のPR動画にも出演しネットを沸かせ、デビュー当日に3人のおばちゃんは即引退という面白い仕掛け…などなど、常に素晴らしい企画を考えている人だ。

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▲右から二番目が高さん

念願の本屋の店長になる

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今回彼はただ辺境に本屋をオープンさせてだけではない。
この店の店長を解放している。期間は基本7日間がひと単位。
高さんは、是非みなさんに日常のリズムからしばらく離れ、ここ長浜で生活をしてもらおうという企画である。そして生活の中で新たなインスピレーションを得るかもしれないということです。そんなとても面白い考えに共感に迷いなく、私は1ヶ月申し込んだ。

長浜郷は台東県の最北端に位置し、海と山に囲まれた自然が広がる場所。長浜行きを決めた私はアクセス情報を調べるがなかなか見つからず…。どうもここは「台湾で最もいきづらい場所」とも呼ばれているそうだ。長浜は在来線でも直通はなく、もし自分で運転できなければ、まずは最寄りえきの玉里駅(最寄りというが長浜から30kmもある駅)、そこからバスかタクシーに乗り換える。台北からであれば少なくとも半日はかかるし、日本へ行くよりも遠い気がする。長浜行きのタクシーの中で、運転手は私がこの地で書店の店長として生活することを知り、「長浜のような辺鄙なところ何が面白いんだ?」と不思議そうに話をしていた。

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運転手の話は全然頭に入ってこない。目に見える山林の緑と無限に広がる海の何層にもわたるグラデーションに私の頭の中はすっかりやられていた。この景色に価値がないはずなどない。長浜での生活への期待と興奮が膨らむばかりだ。

本屋「書粥」は長浜の市内に静かに佇み、店は全て高さんが自分の手でリノベーションした。達筆な字体で店名が書かれた看板。自家製の木の本棚、天井には手書きの台湾の地図が描かれ、お店の持つ温度や空気感が店の所々から感じられ、賞賛の気持ちを抑えることができなかった。





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