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「仕事はおしまい!ご飯だよ!」ユニークなお昼の時報/河和田微住

文:魏 曉恩(BuBu)
攝影:Jerry Wang
翻訳:伊藤ゆか

午前11時のPARKオフィスはいつものように明るく清々しかった。すっきりシンプルな白壁と、明るい色のデスクが作業空間を軽やかに見せていて、示し合わせたかのように皆んなが持ってきていたMacbookがあちこちに置かれている。チームごとに別れて議論に没頭していた11時30分。外で激しくサイレンの音が鳴り響いた。大空に鳴り響くそれはちょうど台湾の軍事演習で聞くような音で、耳をつんざくようである。気づかなかったら耳がどうかしている音量だ。

「何が起こったんだ?」と、そのサイレンを聞いた私は手を止めて外を見やった。後で知ったのだが、これは福井特有の「時報」であり、毎日午前11時30分と午後17時、仕事中の人々に「ご飯の時間だよ!」と知らせるのだ。

全国の90%以上のシェアを誇る眼鏡の産地鯖江では、少し前まで住民たちの多くが騒がしい機械音が響く環境で仕事をしていた。そのため、大きなサイレンの音で働く人々に休憩時間を知らせたのだ。今もなお時報を鳴らすことは続けられ、日常生活の一部となっている。ここへ来た人しか気づくことができない、隠された特色だろう。

「ここがかつて如何に活気があったのか、見えてくるね」
京都の隣にある工芸の郷には、100年連綿と続く伝統文化が息づいている。私は街のあちこちで出会う手工芸の職人を思い浮かべ、PARKのピアノを弾いて幻想に浸る。私は今このまちの生活の“職人”。TSUGIの仲間と共に一つのものをつくる。同じ世代、趣味も似ていて、言葉が聞き取れなくても笑いあえて、言語はハードルにならない。タイムカードが打刻する「ガチャッ!」という音がすると、毎日新たな幻想の世界に入りこむことができる。

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面白おかしい仕事の日々では、時折、笑えることが起きる。ゴミ袋が福井の資料を入れる袋にされてオフィスを担ぎ回られていたり、翻訳機が持ち込まれ言葉の救世主になったり、ストーブのそばに身を寄せ合って手足を温めたり。仕事の時の顔つき、朝のコーヒーの湯気。ホワイトボードに企画内容を書き表し、夕食後にwebページの構成を考え、好きな韓国グループの歌を流して鼻歌を歌い……まるで生活と仕事が再び融合したようだ!
私は福井に来た最初の日に自分自身に問うた───「明日はどんな仕事があるだろう?」。すぐにその考え方は田中祐典によって正された。なぜなら取り掛かった仕事は、微住中のなりゆきまかせなのだから。

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この数日、私はPARKのオフィスの窓辺が一番好きになった。外を走る車が眺められ、空は昼間の明るさから宵闇へと移り変わり、窓ガラスは徐々に鏡のように私たちを写すようになって、そのうち車のライトが灯される。また福井の一日が過ぎゆく。

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