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日本美術史botのゴールについて

TwitterがXとかいう名前になって、ほんとかどうか知らないけど全部有料になるなんて囁かれている。

今年の初めには、ボットを動かしたり外部サービスと連帯したりするAPI機能が一部有料化された。突然の告知で外部サービスを連帯しているアプリ開発者や、bot運営者といったAPI利用者たちは寝耳に水を食らい、無料で利用できる範囲で活動を続けられることが判明するにも時間がかかり、二転三転する仕様変更の対応に追われた。

たいへん迷惑なことだったが、それでもTwitter(Xと表記するつもりはない)での日本美術史botの運営は続けられている。しかし、Twitterを利用したいならクレジットカードで金を払えと言われたら、たとえ少額だとしてもさすがに考えてしまう。

カードの番号をいまのTwitterに渡して大丈夫か?というのはもちろんだが、それよりも、ふだん美術へのアクセスが難しい層に無料で楽しんでほしいというbotのコンセプトにTwitterはもう適さなくなってしまう。

日本美術史botはまだ完成していないのだが、このままでは先にTwitterがいろんな意味でおしまいになってしまいそうだ。

仮にTwitterがダメになったとしても、Wikimedia Commonsで画像のアップロードを続けていくつもりなので、計画が中断される心配はしていない。とはいえ、できれば成果をbotのほうで形にしたいところではある。

いちおうbotの完成の基準となるおおまかなゴールは設定している。ただそこに到達するにはまだ当分かかりそうだ。ゴールとして考えているのは、とりあえず日本美術史の通史を記述する書籍で言及のある作品のうち、著作権保護期間が満了しているものを可能な限り網羅すること。

具体的な書籍で言うと、小学館などの『日本美術全集』、辻惟雄『日本美術の歴史』、美術出版社の『日本美術史』、古田亮編『教養の日本美術史』、山本勉『日本仏像史講義』などだ。

すると取り上げる作品は膨大な量になり、書籍からスキャンしてネットにアップロードするだけでも、個人ではものすごく時間がかかってしまう。とくに『美術全集』は収録作品数が膨大なため、ここをまずどうにかしなければと、ここ2年くらいの間、中断を何度も挟みながら、ちまちま作業を進めているが、まだまだ終わる気配がない。

次に問題になってくるのが、仏像写真の著作権問題だ。日本美術の前半を占める仏教美術のうち、立体造形の仏像は、写真の著作権がまだある場合は画像の利用ができない。そこで写真の著作権もすでに満了している限られた仏像写真をできるかぎり探し出してゆく作業が必要になってくる。

これは幸い、国会図書館デジタルコレクションが著作権フリーになった膨大な書籍を順次公開しているため、作業の効率化が期待できるだろう。とはいえ、まずは美術全集を片づけなければならないので、たまに息抜きにやる程度で、まだ本格的には手を付けられていない。

仏像写真はその歴史の蓄積が長い割にはあまり顧みられることの少ないジャンルであるため、研究というのは大げさかもしれないが、少し掘り下げてみたいとも思っている。

そして、日本美術史の周縁に位置づけられてきたアイヌや琉球といった文化圏、帝国主義や植民地主義などの議論をどう取り入れられるのか、また、東アジア美術や西洋美術との関係をどう考えるか、といった課題がまだ残っている。

西洋美術に関しては構想として、美術雑誌などに掲載された西洋美術の複製図版も、あえて日本美術史の中に位置づけ、画像を収集したいと考えている。日本人が書籍の図版を通して、西洋美術のマスターピースにいつ出会ったのか。それも一つの歴史として捉えてみたい。こちらはまだ調査がほとんどできていないし、どこまでできるのか、どのように扱うのが適切か検討を要するだろう。

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