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U-18 Review 2020

スーパープリンス関西の開幕前にSeasonPreviewをまとめたのが8月の終わり。いまこの記事を書いている12月半ばから振り返ってみると、約4か月があっという間に過ぎていった感がある。この期間の公式戦は、スーパープリンス関西が順位決定戦を含めて7試合、クラブユースU-18選手権関西大会が3試合の合計10試合。例年ならプレミアウエストだけでホーム&アウェイの計18試合あるのだから、チームの活動期間が短縮されたとはいえ、彼らの成長のサイクルに欠かせない公式戦という場がいかに少なかったか分かってもらえると思う。

例えばサンフレッチェ広島では、今シーズンはユースからのトップチーム昇格を見送るという報道があった。昇格させるかどうかをJクラブが判断するのは一般的に夏頃だと言われるが、コロナ禍でどのトップチームも厳重な衛生管理を強いられたことから、それまでに下部組織の選手を練習参加させてテストする機会がほとんどなかったという。じゃあ大学に進学と言っても、選考のスケジュールや受験環境が例年と大きく異なっていたであろうことは想像に難くない。実際、各地域の大学リーグもコロナ禍で無観客試合を余儀なくされるなど難しい運営が続いている。これまで許されていた生活ができなくなるストレスは進路を考えるうえで相当なものだったろう。

理不尽な災厄によって、多くの若者たちにとって可能性にチャレンジする場が失われてしまったことが悲しい。それでもサッカーができることに感謝しなければならないという背反するような感情を抱えながら、皆がこれからを生きていく。

それぞれの試合の所感です。丸数字は学年を示します。

2020.8.30
スーパープリンス関西 第1節
vs大阪桐蔭高 0-3
Jグリーン堺で集合開催となったスーパープリンス関西の初戦。テンションの高い大阪桐蔭のプレスを真に受けて、ミスからの失点を重ねてしまい敗戦。チーム自体が浮足立つとか緊張していたとは思えなかったが、マンツーマンのシーンで容易に剥がさせない粘りなど、メンタルとコンディションのピーキングに成功したのは明らかに大阪桐蔭だった。神戸が高体連に負けるとしたらこんなパターンというまさにお手本のようなかたちで1ゴールも奪えずぐうの音も出ない完敗。初戦にしていきなり全勝の夢破れる。

2020.9.5
スーパープリンス関西 第2節
vs大阪仰星高 1-1
いぶきCグラウンドでの有観客開催。チームは前週の轍は踏むまいとホームではあるが慎重な立ち上がり。我慢比べのような時間が続いたが、どうしても中盤から後ろ、グループでの守備に緻密さもしくは豪胆さを欠く印象で、よい奪い方ができないまま先に折れたのは神戸。失点した後も燃費が悪いとしか形容できない苦しい展開が続いたが、運良く得たPKを佐伯清之助③が決めて追いつく。これでようやくポジティブなムードが漂い、少しはエンジンが温まってきたかなと思いきや、とんでもない豪雨と落雷で試合途中で20分ほどを残し中断。後日、再開せずにそのまま終了扱い(1-1の引き分け)とすることが発表された。

2020.9.13
スーパープリンス関西 第3節
vs三田学園高 2-2
ユニバー記念競技場での有観客開催。スタンドに広大なスペースはあれど横断幕は貼れず。保持する時間はいいものの、そうじゃない時間にバックスの押し上げが足りず、間延びした不安定なプレッシングに陥ってしまう悪癖がなかなか修正できない。センターラインの要である尾崎優成②のコントロールミスから失点し、そこから慌ててしまいカウンターを浴びて失点を重ねるいかにも苦しい試合に。ただ、負傷明けで途中起用された左サイド佐々木貴哉③のスラロームドリブルに火が着いた終盤は大攻勢。その佐々木が1点を返した後は相手の足が止まり一方的になり、終了間際に冨永虹七①の2ゴールで何とか追いついた。

2020.9.27
スーパープリンス関西 第6節
vs阪南大高 3-1
4節が延期となったことにより仕切り直しとなった試合。佐々木が左から突破して先制ゴール。エリア内ハンドで奪ったPKを佐伯が決め、前半終了間際にはトップ下で先輩に見劣りしない切れ味をみせる永澤海風①が追加点という理想的な展開。後半はややトーンを落としたものの、阪南大高の反撃を1点に抑え、安定した試合運びをみせて会心の勝利。サイドの強みが噛み合ってようやく反転攻勢な雰囲気に。

2020.10.4
スーパープリンス関西 第7節
vsガンバ大阪ユース 2-1
アウェイOFAでの試合、スーパープリンス関西はこの試合のみ無観客開催のため観戦できず。そんなときに限って勝つという。押富大輝と佐々木のゴールで2点を奪い、ガンバ相手の公式戦としては久しぶりの勝利を挙げた。

2020.10.25
クラブユースU-18選手権関西大会
vsセレッソ大阪U-18 2-3
例年なら5月頃、関西4クラブのユースチームで出場権をかけて争うクラ選関西大会。まずはプリンスリーグ関西Bリーグで好調なセレッソとの公式戦。自信を持って臨んだはずが、セレッソの前線から喰いにくるプレッシング戦術にバイタルの争いを制されてゲームプランが破綻。我慢できず3失点を喫して敗色濃厚になってからの最終盤、ようやくBチームから昇格して出場機会を得た仁科星哉②が得意とするミドル弾、さらに終了ホイッスル寸前に三浦敏邦③のゴールで1点差に迫るなど意地をみせた。だが、さすがに反撃が遅すぎた。

2020.11.1
クラブユースU-18選手権関西大会
vs京都サンガU-18 2-0
2戦目は舞洲の人工芝グラウンド。ガンバを破って勢いに乗るサンガとの一戦。硬い試合になるかと思いきや、開始直後の相手クリアミスをハーフボレーで振り抜いた佐伯のゴラッソがレーザービームのように突き刺さる。タレントが揃うミドルゾーンで対面を捕らえ、斜め切りパス一発でショートカウンターに持ち込みたいサンガの狙いをいきなり挫く。右サイドの五味郁登③が前半から攻守の拠点となり、永澤の2点目につながる裏街道などストロングを発揮。右の仕掛けが増えると左のスペースも活きる。村井清太①が左ワイドで抜擢され、モチベーション高く攻守に貢献してレギュラーに値するプレイをみせた。

2020.11.8
クラブユースU-18選手権関西大会
vsガンバ大阪ユース 2-1
クラ選の最終戦はガンバとのリターンマッチ。前半途中のコーナーキック、佐伯のインスイングが相手キーパーのファンブルを誘い直接ゴールイン。U-23に招集されている3年生を欠くとはいえ、ガンバ相手にポゼッションリードを確保し、バックス中央に入った田代紘①のフィードから両サイドで好機を作り出す。が、あっさりと言っていいのか、これしかないと言っていいのか、カウンター単独突破からの折り返しに一発回答され同点に持ち込まれて前半終了。後半は互いに伯仲する展開。相手のフリーキックを高橋一平②がマーベラスなセービングで弾き出すなど、チャンスも作るが耐える時間も長くなる。このまま同点でも2位以上が確保できるシチュエーションだったが、攻め疲れて相手のバランスが崩れた終盤、ディフェンスラインのブロックをかいくぐった押富がキーパーとの1on1を見事に制して勝ち越し。勝ち点6のグループリーグ1位で関西大会を終えた。

2020.11.29
スーパープリンス関西 第4節
vs大産大附高 2-0
延期された試合がリスケされてリーグ自体の最終節となった。大産大附は選手権予選を終えて3年生が引退していたらしく丁寧さや強靭さに欠けるきらいがあったとはいえ、冷静に90分をコントロールして失点しそうな危ういシーンはほとんどなし。前半から左右の幅を使って揺さぶりをかけたかと思えば、ボールを回してその隙間に縦パスを刺していく理想的な仕掛け。藤本颯真③の強いフィードに反応した佐々木のゴールと、左サイドをコンビネーションで攻略した村井のクロスがファーに流れたところを三浦のヘディングゴールで2点先行。後半も余裕を持ってチャンスメイクしたものの、少しずつクオリティが落ちていき決めきれずそのまま終了。スーパープリンス関西は3勝2分1敗の勝ち点11、7チーム中2位となり、最後の公式戦である順位決定戦に臨む。

2020.12.5
スーパープリンス関西 順位決定戦
vs履正社高 0-1
最終戦は選手権大阪代表でもある履正社。相手にとって不足なし。ベストに近いメンバーの神戸、前半からフルスロットルで裏スペースを制した右サイドの五味が決定機を作り出すが、こちらのシュートはキーパーに凌がれる。チームの狙いである幅を活かしたポゼッションはできるものの、ストロングポイントであるサイドからのチャレンジが徐々に封じられていく嫌な展開。あえてスローペースに持ち込みこちらの気勢を削いだかと思えば、狭い局面では譲らずタフに守り切るなど、さすが強豪校らしいインサイドワーク。後半ものらりくらりとした流れが続いたものの、クリアが甘くなったところで履正社の波状攻撃、シュートをブロックしたものの、リフレクションしたボールがキーパーと逆に流れてゴールイン。結局その1点が決勝点となり悔しい敗戦で今シーズンの公式戦を終えることとなった。

1年生の抜擢が目を引くシーズンだったと言える。中3で関西を制覇したチームの主力のほとんどが昇格し、彼らのそのポテンシャルが通用することを証明してみせた。半面、チームの成熟度という点では少しデメリットになった印象は否めない。2年生や3年生にもうちょいチャンスがあってもいいのにと感じる一方で、とはいえ公式戦が限られているなかでまんべんなくテストさせるような運用や編成はどうしても難しいよなと思わざるを得ない自分もいたりして。プレミアウエストが開催中止となり、いわゆる降格がないシーズンだったからこそ出場機会という点においては大胆な種まきができたというのがチーム全体の評価なのではないかと思う。来シーズン、2種年代がどのように運営されるか単なる応援する側には見えてこないけれど、少しでも多くのチャレンジが許される佳い1年になりますように。

そして、3年生のこれからに幸あれ。

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