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猫と金木犀と私の地球会議④

「私は初めてだけど」
そう答えると、金木犀が「お久しぶりね。元気にしてたの?最近みなかったね」と軽快に返した。
「いやー、ここに来るのは久しぶりだよ。だって君たちが引っ越してきただろ?それまではよくここで昼寝してたんだよ。金木犀の香りがよくてね」
「そうね。ここでよく、二人でのんびり地球会議していたね」
「ああ!あそこの魚屋が、毎日おいしい魚をバケツに入れて出しておいてくれる。食べていいのかと思って頂くと、ホウキを持って追っかけてくるんだぜ。まったく。じゃあ、全部きれいに食べろって話さ。まぁ、そんなボクの話を、金木犀がいつもきいてくれていたんだ」
「そうだったね」
 
私はしばらく二人の会話を聴いていた。
猫からすれば、ここは彼の住んでいた場所だ。土地が誰のものだとかそんなことは関係ない。当然そうだ。人間のルール。彼はすっかりリラックスしていた。
「で!続けておくれ。君はなかなか話の分かる人間だ」
猫はそう言うと、気持ちよさそうに毛づくろいを始めた。
 金木犀が語り始めた。
「今、未来はAIの時代と言っているよね。それも、まず最初に君が君にきいてごらん。その前に、私から一つ質問してもいい?君は、君の脳みそは、一生分、本気で使いきったのかい?想像力ってやつを目いっぱいふくらませて、本当に毎日を生きているのかい?」
猫がまた一つ、あくびをした。
「例えば、せっかく君の脳に生まれたひらめき!そいつをおろそかにしていないかってことさ。世界はいつも、君をヘッドハンティングしているんだよ。環境活動をしよう、AIを、経済を、医療をもっとてあつく!とか、とにかくまぁいろいろだ」
三人の間に、とても静かで心地よい風が吹き抜けた。
 
「君は君の声をきいたのかい?それが、君の答えじゃないのかな」
 
「君は想像力を育んだから、きっと、私たちの声がきこえるようになった。人間は人間の言葉で話しをするのが当たり前だと思っている。私たち植物、木や花、蝶、トンボ、この庭にもたくさんいるカナヘビと話しができるなんてまさか思ってもいない。話せるはずがない、そう思い込んでいる。山や川、海という大きな命、エナジーの集まりが、神様としていつも君たちの近くにいてくれる。偉大な自然、地球から君たちは生まれたんだ。話をしようと寄り添えば、みんなと話しができるんだよ。この地球上にある全ての命と」
猫はスッと起き上がると、背筋を伸ばして話始めた。
「君のママやパパが、3次元というこの世界で生きるために、人間として君を送り込んできたのさ。そのママやパパをずっとずーっと遡ると・・・」
「自然、地球!マザーアースだ!」
「そう!」
今度は金木犀が話し始めた。
「だから、さっき君が上からのぞいた時、たくさんのことに気づいたね。
君が今、この地球で生きていることは確かなことだ。グレートマザーとグレートファーザー、ママやパパがいなければ無理なことなんだよ。君は今生きている。それが今の全てだ。そして蝶やトカゲと同じように友だちと遊んだりしているよね。学校にも行っている」
「学校には、、、あんまり行ってない」
「ん?昼間は家でみかけないと思ったけど」
「たいてい、近くにある秘密基地で遊んでいるの。受験勉強したり」
「なんと!それは素晴らしいことだね」
「そうなの?みんなはちょっとおかしいって言ってるみたい。風のうわさで」
 
猫と金木犀が顔を見合わせてふわっと微笑んだ。
「ずいぶん素敵な言葉を使うね。風のうわさか・・・その風は高かったかい?」
「え?どういうこと?」
 金木犀は続けた。
「私とお話できるまでになったんだもの。感覚、senseだよ。感覚を研ぎ澄ませて分からない?風は低かったの?それとも高かった?」
「うーん。低かったかな」
「じゃあ、信じちゃだめ。風は私たちの世界でも偉大な友人の一人だけど、やっぱり・・・君には言いにくいけど、人間が少し、空気を汚してしまったから、、、場所によっては灰色になったり黒くなってしまっているの。そうなると少し重くなって低いところを吹く風になるんだ。排気ガスみたいにね」
私は、オレンジジュースを一口飲んでテーブルに肘をつき、「考える人」のポーズをとってみた。


読んで頂き、誠にありがとうございました🙇‍♀️未来の地球を生きる方々に活かしていきたいと思います。時々、アイスカフェラテ代に使わせて頂きます。初めてサポートして下さった方が、そうおっしゃったので🤭🎶