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猫と金木犀と私の地球会議⑥

「了解!」と猫が縁側のふちに体をすり寄せ、金木犀の根本に座った。
「それには想像力が必要なんだ。そして、寄り添う心」
 金木犀がまた、話をしてくれた。
「かつて、偉大な大樹が人間に大きな気づきを与えた。生命の樹や菩提樹。人間はいつも、人間に視点を合わせる。どこまでも、人間は自分主義。最近よく聞く発達障害?ASDを自分主義とか言っているけれど・・・私たちからすれば、人間はみんな自分主義よ。だって、まさか木が気づかせてくれていたなんて、誰ひとり思わないでしょ?君くらいさ」
 想像力が、また大きな世界に連れて行ってくれた。
「人間は植物が話すはずがないという固定観念を持っている。話をするというのが、言葉を使うものだけだと思っている。そりゃそうよね。人間界のルールでしか物事をとらえないのだから。そもそも地球が生まれたのが今から46億年くらい前の話。その時点で、宇宙の始まりからすでに100億年は経っているんだよ。いわゆる、君たち人類の誕生なんて、20万年前くらいのこと。君が生きてる時代、君の生きる時間なんて・・・地球がくしゃみしたら終わっちゃうくらいさ」
 
 私はびっくりした。「本当だ」と思った。なんて短くて、なんてちっぽけで。さっき、金木犀が空高くつれていってくれたみたいに自分をまた飛ばしてみたら、自分がアリより小さく見えて、地球や宇宙の始まりまでさかのぼって、長い長い歴史の本を広げてみたら、今、自分が生きている期間が、ちっぽけな黒い点のように見えた。
 
 私は少し、声を大きくして言った。
「あなたは生命の樹や菩提樹と同じくらい素晴らしい!ううん。私にはあなたが最高の木。だって、たくさんのことを気づかせてくれた。こんなにたくさんお話してくれた」
「そんな風に言ってもらえたのも初めてだよ。ありがとう。誰と話しをするのかはとっても大事ね。意識しなくても、話す人が変われば会話は変わる。そして、君とだから、私もこんな話が出来たんだよ」
 金木犀は続けた。
「寄り添う心があれば、世界中の誰とだって話はできる。想像力があれば、広い世界が見えてくる。やりたいことは、その心、手や足があればなんだってできる。間違っても失敗しても大丈夫。もう気づいてるでしょう?だって、君の一生なんて、地球からしたら一瞬のくしゃみみたいなものなんだから!」
「黒い点、アリみたいなもの!」
「そう!」
「だからこそ、君がその人生でひらめいたこと、出会った人、訪れた場所は奇跡のような出来事なんだ。目の前を大切にしてほしい」
 私には、金木犀の心が伝わってきた。
「そして最後にもう一つ、伝えておきたいことがある。君が何かをやってみようとする。誰かに新しいアイデアを話したとしよう。何言ってるんだ、変わっているねと笑う人が出てくるかもしれない。自分主義の人間たちは、自分の価値観でしか物事を判断できないからそう言うんだよ。あとは何も考えないから簡単にそう言うの。脳も心も使わないで。空想だ、今までと違う!とかね」
 金木犀は話し続けた。
「でも、それが大事なことなんだよね。何度も言うけど、今までが今の世界を創造しているなら、いつだって今までと違う想像が未来をつくるんだ。それが、未来で歴史になる。そしてそれは、君が過去ではなく、未来を見据えている証拠なんだよ」
 私はうなづいた。
「チャレンジして笑われる。批判される。ねたまれる。憐れまれる。でも、その選択をしたこと自体が新しい未来、歴史を創っているんだよ。最初に話したよね。日常の君の選択が未来の世界を創るって」
 ついさっき、自分はちっぽけな黒い点だと思ったけれど、ふと子供の頃に読んだ「スイミー」を思い出した。
「君のチャレンジが、いつだって未来に繋がる新しい点になるの。子供たちの夢になるんだよ。地球がくしゃみをする間、みんなと一緒に、ただ隣の人の真似をして生きていくなら、君という世界でたった一人の人間は、いったい何をしに生まれてきたんだい?」
 
 私はぶわっと涙があふれてきた。
「大きなことじゃなくていい。君のママやパパ、グレートマザーやグレートファーザー、そしてずっと君たち人間を信じて見守っている私や海や川、地球というマザーアースが願うことはただ一つ。地球がその役目を終えるまで、美しく生きてほしい。そのために、君たちに渡したギフトをおおいに役立たせて、人間一人ひとり、地球の一部として命を表現してほしいって思っているの」
「命を表現するってどうゆうこと?」
「それが、自分の声を聴くってことだよ」
私は天を仰いだ。


読んで頂き、誠にありがとうございました🙇‍♀️未来の地球を生きる方々に活かしていきたいと思います。時々、アイスカフェラテ代に使わせて頂きます。初めてサポートして下さった方が、そうおっしゃったので🤭🎶