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エッセイ403.虫のサイズ(2)

さっき、キーボードに乗っていたノミバエ(動き方でわかる)を叩きましたが、キーの間に飛び込んで、私が手を上げたら、飛んで行きました。こういうときってすごく悔しいですよね。

さて、私が手で潰せるのは、コバエと蚊までというお話をいたしました。
しかし、大きさがちょっと大きいだけで手が出ないのはGのベビー。
なぜなのだろうと二日間考えていて、その理由は、
甲虫が苦手
なのだということでした。

カフカの「変身」の最初の1行。

ある朝、グレーゴル・ザムザがなにか気がかりな夢から目をさますと、自分が寝床の中で一匹の巨大な虫に変っているのを発見した

うーむ、名文です。
そして、グレーゴルは後日、家政婦から
「このクソコガネ!」
と呼ばれているので、甲虫の一種だろうと言われているそうです。

そして私は、甲虫が大嫌い。
手に乗せて可愛がるのは、久我山の蛍祭りで放虫される平家ボタルのみです。

だから、いくら小さくても、甲虫にしては平たくても、Gーbabyは絶対にダメなのでした。でも見つければ走っていって、ティッシュで捕まえて捨ててしまいます。それをするときの嫌悪感より、家具の後ろに逃げていかれて順調に成長して大人になられるほうが嫌だから。

では、私が嫌いな甲虫を、サイズ順に発表します。
左上、タバコシバンムシ。その右、ウリハムシ。
下左、平家蛍、その右、コガネムシです。

タバコシバンムシ:
漢字で書くとすごいです。煙草死番虫。たくさん集まると、メイティング期には、コチコチという時計のような音を発するために、人の寿命をカウントダウンしているようだと、英名「death watch」と名付けられました。watch は、見る、ではなくて「番人」という意味です。これが、きちんと封をされていなかった粉類や、自然素材の籠などを食べながら増えます。最初に発見したのは、なぜか半開きだった「粉末からし」の小さな缶の中。失神しそうになりました。
次は、畳素材の小さなカゴに・・・その数と言うたら。・・具体的には、書けません。
発生すると、家の中をノコノコ歩いていてすぐに捕まりますが、一匹見たらその発生源というか、餌場にはたくさんいて、自然にいなくなることはありません。いくら捕獲しても、また出てきます。見つけたら家中を探して発生源を見つけ、それごとビニールに入れて捨ててください。


ウリハムシ:
瓜葉虫と書き、その名の通り、きゅうりやメロンなど瓜科の植物の大きな葉が大好きです。葉がレース状になってしまうまで食べ尽くします。殺虫剤が効きません。よく見ると顔は可愛いですが、追い払っても追い払ってものんびりと逃げていきます。そうこうするうち、きゅうりの葉っぱは毎日食われていって、光合成ができなくなってしまいます。
動きはとろいので、ペットボトルの口を近づけて一匹ずつ追い込むことはできます。

ホタル:
大抵、暗い中で光っているのを捕まえるだけなので、自分が甲虫嫌いだということを忘れて、
「うお〜、見て見て〜」
など浮かれて掌に載せていますが、今、写真を見て大後悔。
全然可愛くありません。
そして、他の甲虫に共通のことなのですが、ホタルも飛ぶ時にあの、メタリックな、硬そうな羽をパコッと持ち上げるんですね。で、その下に隠してある、透明な繊細な羽をブーンとか言わせて飛ぶわけです。
なんか、すごく嫌じゃないですか!?
おじゃる丸の家来のデンボも、可愛い顔をしていますが、そういう飛び方をします。
本当に嫌いです。

コガネムシ:
直接に被害を受けた4種の甲虫うち、一番大きいのが黄金虫です。
エジプトでは、聖なる虫として敬われているそうですが、とんでもない。
ちょっと玉虫色に光ってて、ちょっとそこを好かれているからといって、いい気になっている。
許せないレベルは、黄金虫がダントツです。
嫌われる理由は、

・一回発生するとすごい数の卵を産んでから死んでいく。
翌春にびっくりするぐらいの、カブトムシの幼虫に似た幼虫を土の中に残していくところ。
・一回野菜に取り付くと、あっという間に丸坊主にするところ。
私など、
「取れすぎてどうしよう。明日はジェノベーゼにしよう」
と思って楽しみにしていたバジルと、
「取れすぎてどうしよう。明日は青じそジュースにしよう」
と思って楽しみにしていた大葉を、一夜にして食い尽くされました。
頭に来て2階の出窓に並んでいたハーブを全部室内に入れたら、その夜から、その部屋に灯りがついていると、窓ガラスに体当たりをするようになったのです。
そしてコガネムシは、夜になるとときどき室内に入ってくるのですが、電気の周りを、あの、硬い羽根をパカ、と持ち上げたまま、下の羽根でぶんぶん飛んで、あちこちにぶつかるのです。
本当に迷惑でした。

しかもおまけがあって、ある春の日、使おうと思っていた鉢やプランターを持ち上げたら、中にも周りにも、驚くべき数のご遺体が。

そう、ヤモリと同じで、死んでからも御生前のままのお姿を長く保つのが甲虫の特徴なのでした。
あの色艶、あの変な飛び方、食害をするときの貪欲さと、あの、亡くなってからもなんかしつこい感じ。
もうどれを取っても、どんな大きさでも、甲虫って好きになることはできませんね。

まだまだ書きたいことはいっぱいありますが、甲虫以上に嫌がられるのも辛いですので、この辺にしておきますね。


ところで私はパスティーシュ小説の清水義範さんが大好きなのですが、こういう出だし(記憶頼りなので少し違うと思いますが)の短編があって、すごく笑いました。

ある朝、ミズコール・サムサが なにか気がかりな夢から目をさますと、自分が寝床の中で一つの巨大な氷に変っているのを発見した。


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