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エッセイ131.おうちでロスト・イン・トランスレーション(4)ああ、海外編


回を重ねて4回目です。

家では次女とだけ日本語、夫とは日本語で話し始めても、途中でムッキ〜🙉となり、英語に切り替えることが多いです。
私が丁寧に日本語で話す忍耐力が、少しあっても、生徒相手に昼間のうちに持ち分を使い果たしてしまうからです。
夜は夫婦、たいがい頭が疲れていますので、どうでもいいことで喧嘩になるのを防ぐためもあります。

次女は、私とは日本語、夫とは英語、私がそこにいても、モードが切り替わっているので英語のままです。
また、父娘二人でアニメとか、二人の好きなドラマを見ていて、私は趣味が合わないので一緒に見ないことが多いし、そのことで二人が盛り上がっていることが多いので、激しく疎外感を味わったりします。
まさしく、ロスト・イン・トランスレーション。

こういう家族の間での、言葉や、各人のアイデンティティ。
これは私が飽くなき追求するテーマの一つですが(大袈裟)、
それというのも、自分の家庭でくつろぎながらも、
言葉のせいで「どっひゃ〜!」となることの種が尽きないからです。


いいなぁ〜、何も考えずに生まれた時からのマルチリンガルの人。

第二外国語をあとから獲得した人は、認知症になると、
第二の方を忘れてしまうんですって。
私なんかもう、すごく脳が疲れているので、ほんと心配です。
夫が先に認知症になると、英語しかしゃべらなくなった夫と英語で話すのでしょうし、私が先にそうなると、夫はもう、すごい大変でしょうね。
今からお互い、覚悟しておいたほうがいいですね。



今日は思い出話をさせていただきます。

ニュージーランドは、アクセントが強いとよく言われます。
夫の里はオークランド市で割と都会なのでそうでもないですが、
北の島の、また北の方の親戚に会うと、
わからないということはさすがにもうありませんが、
その話し方には、独特なものがあります。

初めてニュージーランドに行った時、アクセントの強い親戚たちと話していて、
私は夫の脇腹をチョンチョンとつついて言いました。

「ねぇねぇ、この人たちの話してるの何語?」

ふざけていたわけではありません。英語に聞こえませんでした!

夫(当時は婚約者)、びっくりして

「英語だよ。あと、声が大きい」

注意されてしまいました。
赤面です!

そしてこれは、よく生徒に言う話なんですが、
私は夫の家族や親戚友人知人とは喋れるのですが、
その他の人、お店の人とかレストランの人、つまり、知らない人とは、
最初の2回の帰省までは、恥ずかしくて絶対に話せませんでした。
子供かっていう話です。
人見知りだったんです。

なので、お店で買うものを手にして、いよいよ買う段になると、
ちょこちょこと夫のところへ小走りで近づき、

「はいこれ、買って」

と言っていました。

なんだそりゃ。

夫はもちろん、

「え、何言ってんの。お金あるでしょ。自分で買わなきゃ」

と言うのですが私はブンブンと頭を振って、

「いやだ恥ずかしい」

と言うなり、夫の手に品物を押し付けたり、
バスケットに放り込んだりして、逃げていくのでした。
ふざけているわけではありません。

そんな帰省を2回ほど重ね、あるときドライブ途中で雑貨屋に車を停めました。
店先に、大きな袋に入ったアボカドが積んでありました。

(あっ、こんなにたくさん入っている。
いくらだろう、値段がついていない、でも欲しい)

もちろんすぐに、

夫、買ってきて!

いつものように言ったのですが夫は意地悪。

もうね、いい加減にしましょう。
君は大人でしょう。
はい、自分で買ってきな。
そら、行った行った!

って、その場をとっとと離れていってしまったのです。

ええ〜、そりゃないぜベイベ!
でもアボカドは欲しい。
日本で買ったなら、いっこ150円とか200円である。
安いのを買うと、硬いままであったりする。
これ、この、大きな袋にこんなに入ったアボカドがほしい。
しかも触るとほどよく柔らかい・・・。

しかたない、もうね、子供も生まれています、私は大人。

アボカドの袋を手に、生唾を飲み込むようにして店内に入り、
レジのおじさんのところへ行きました。

そのとき私が言おうとしていたことは!

ハウマッチイズディス?

ですよね〜、当然。

ところが、意を決してそれを言おうとして口を開けたら、おじさんが、

ハロー、ディア? 
アボカド欲しいの?
1袋5ドルだよ!

って、おっしゃったのでした。

せんきゅ〜・・

とつぶやいて、なんとなくクレカを使うのも怖かったので、
お財布からお札をもたもた出したら、またおじさんが、

はい、5ドルいただきね〜。

と言いながら、私の手からお札を優しく抜き取るのでした。

おじさんの目には、背のちっちゃいオカッパ頭のアジアンガールは、
お札の区別もつかない小学生ぐらいに見えたに違いない。

結局私は、2ホリデーで溜め込んだ恐れを解消することなく、
お店にとことこと入っていって、お札を引っ張り出して、
そこから5ドル分を引っ張り出されて、そのまま
とことこと、車で待っている赤ん坊と夫のところへ戻ったのでした。

私がアボカドの大袋を下げて車に乗り込んでくるのを見て

「おっ、ついにコミュニケーションを始めましたね! 立派立派!」

と褒めてくれた夫に対し、件(くだん)の経緯をしおしおと話したところ、

君って、何やってんの?

って爆笑されてしまいました。

まだあるんです。

もったいぶるわけではないのですが、続きはまた次回。


あ、今では世界のどこに行ったって、

ハウマッチ

ぐらい言えますよ。


あ〜あ、知ってる人と、生徒相手にだったら、
どの国の人にも、どんなややこしいことでも
言えないことはないのになぁ〜・・・。

場面シャイの旅は続く。

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