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エッセイその34.タイムカプセル2011 裏声で歌へ歓喜の合唱

とうとう今日が最後の日になってしまいました。
私の仕事は、盆暮お正月が関係ない人たちが全員です。
仕事納めは今日で、仕事始めは明後日です。
え〜、もっと休みたい。

生徒の中でも、日本に住んだことがある人と、
今住んでいる人はさすがに、
「先生、年末年始は休みたいですか?」
と訊いてくれますが、
まあ、1日に1つ2つレッスンがあったほうがだらけませんので、
毎年つい、やっております。

今朝、三密マックスのスーパーに行き、買い忘れたものを買ってきて、
さっきからぽつぽつとお節料理を作っています。

と、引き戸を隔てた居間から、旦那の聞いている音楽が流れてきました。
ヘンデルのメサイヤでした。
ふう〜ん、第九じゃないんだ・・・。

年末になると第九を聴きたくなるのは、日本人だけだと聞いたことがあります。

第九かぁ・・・
懐かしい。

と、また、ぞんざいに埋めたタイムカプセルが、簡単に開きました。

2011年11月と書いてあって、ひらひらのブラウスに、
黒のロングスカートを履いた私が中に入っています。
ひねたフランス人形みたいです。

そう、2011年、友達も行くところもない私は、
引っ越して2ヶ月目のその年の6月から、
名古屋で「年末に第九の歓喜の合唱を歌う会」
に入って、合唱の練習を始めたのでした。


小学校か中学校の音楽の時間で、これを歌った人はいらっしゃいますか。


は、れ、た、る、あ、お、ぞ、ら、
た、だ、よ、お、くーもよ

膠着語である日本語を、このメロディに乗せると、
どうしても、スタッカートになりやすいようです。

続きはえ〜と。


小鳥は歌えり林に森に
心は穏やか悦び満ちて 
なーんとか、わ・れ・ら・の、
よ・ろ・こ・び・のーう・た

でしたっけ。
ちょっと思い出せなくて残念ですけど。

そういえば、だいぶ昔、「隅田芸者第九を歌う」
というようなタイトルのドラマがあって、
「へぇ、第九の合唱って、一般人が歌えるものなんだ」
と思ったのを覚えています。

その後、年末近くになると、何千人が歌ったとか、
ギネスにはこういう合唱が載っているとか、ニュースが流れ、
私もいつか、一回ぐらいやってみたいなぁと思っていました。

それが叶ったのが、名古屋に来てからのことです。

申し込んで、入れていただくことができて、
週に一度、7時から2時間、指導を受けて練習しました。

練習会場が4、5箇所あり、毎週のように変わります。
土地勘が0で、ガラケーでしたので検索もできず、
暗くなった道を迷ったりしていると、
なんとなく物悲しくなり、知り合いのいない我が身のさびしさを、
なんか 惻々と感じたこともありました。

しかしすぐに、隣で練習をしていたマダムが、

あなた、飴あげます

と、飴をくれて、出た、名古屋にも飴ちゃんのおばちゃんが。
この方と仲良くしていただいて、練習も楽しみになり、
無事に12月の本公演を迎えることができました。

合唱のときになってゾロゾロとステージ出ていくのではなくて、
最初から楽譜フォルダーを小脇に、出て行って並ぶのでした。
ソリストの皆さんがたくさん歌って、いよいよ我々が歌います。
それまでが長いのですが、緊張していますので、苦になりません。

団員は大半がシニアで、当日はDVDも CDも制作はなく、
客席からの録音・録画も禁止でした。
名古屋フィルと、錦織健さんがソリストに入っていて、
こっちの技量がやっぱりあれですので、後世に残すのは、
やはりその、大人の事情があるらしかったのでした。


歌ってみて初めて知ったのは、アルトが本当に縁の下の力持ちで、
あんまり聴衆には聞こえてこないんだということ。
でも、アルトとテナーは、難しいメロディが多くて面白いです。

そのあと、そういう機会に恵まれないまま、10年近くが経ちました。
今年は、日本全国でみなさんが楽しまれていたこの歓喜の合唱、
中止が相次ぎ、28人の少人数編成で行ったところもあったとか。

私が以前習っていた声楽の先生は、

あれは交響楽団にとってよい収入源だし、
私も音大生の時は、トラちゃんと言って、
バックアップのために紛れ込むバイトをしていたわ。

とおっしゃっていました。

最近までそれを思い出すと、

虎ちゃん?
アマチュアの団体を、力強く支えてくれる虎?

と思っていたのですが、この前 急にひらめきました。

それって、エキストラのトラ、ではないかいな?
コロナが終息して、横浜の声楽の先生と会えたら、
覚えておいて、確認してみようと思います。

そろそろお煮〆に味が染みた頃です。

大変な一年をご一緒に過ごしましたが、
みなさん、安全になおなお気をつけて、
無事に新しい年をお迎えください。

今年もありがとうございました。


おまけ。
歌詞を覚えるための無茶な語呂合わせがあります。
10年ぐらい前はなんとか覚えたドイツ語ですが、
今はこれが私も必要かも。

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