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エッセイ 475. 面白い日本語

多くの方がはまる沼、日本屈指の相談サイトがあります。
私がついつい読んでしまうのは、投稿される皆さんの日本語が面白いからです。

一般の人が文章を書くことは、昔はそんなになかったと思います。
日記・手紙・好きな人は新聞などへ俳句や短歌を投稿。
そのぐらいではなかったでしょうか。

エッセイ教室や シナリオ教室に通う方はまた別枠な感じがします。

書くということは長年、私たちにとって、ごくプライベートな内容か、または作品として書き上げるものだったと思います。

でもブログやエッセイなどを投稿し、多くの人に読んでもらえるようになった昨今、(とても私が文章なんて・・)と思っていたかもしれない層も、どんどん書くことに参加するようになりましたね。
とにかく、書くということが、とても外向的な行為になりました。

中でも、他人の悩みに対して堂々と(匿名ですけれど)意見を述べられるポータルサイトは大人気。

相談者がいくら身バレ(この言葉も新しく習いました。自分が誰であるかバレてしまうだそうです)を慮って「フェイクを入れて」も、読者層が厚いですし、ときどき、人物が特定されることもあるのだそうです。
他人事ながら、はらはらしますね。

さて、言葉には、知ってはいたけれど、実際に口に出したり、自分が書くことがほとんどないという領域のものがあります。
そうすると、それまで間違えて覚えていたことを、そのまま気づかずに書くということが起こります。
実は私もあります。
以前に書いたブログに間違いを見つけて、ひやぁ〜っとすることがたまにあります。

「やむおえず」

と書いている人がいました。
これこれ、そこなご婦人・・「止む・を・得ず 」です。
それをすることを、止めるを・得ず、止められない、
つまり「仕方なく」の意なのですけれども、こう書いた人は、耳で入ってきて覚えていたのを、そのまま使っていた表現だったのでしょうね。
この人の脳内で漢字変換すると、
「やむ・終えず」とか、「やむ・負えず」
かもしれない。
どうなんだろう、教えてほしい。

「一応」を「いちお」と書く人も見かけます。
その人の中では、一応は、「いちお」なのです。

そう言えば、「雰囲気」を、「ふいん・き」と発音する子供が大変多い、ということを20年ぐらい前に聞きました。

面白いことに、「ふいんき」と入力して変換しようとすると、
なんとちゃんと「雰囲気」という選択が一番に出てきます。

ブルーのように入力した途端、選択肢のトップにちゃんと「雰囲気」と出ます。これでは 「ふいんき」→「ふんいき」 と 訂正されるチャンスはありませんね。
ちなみに、在日35年になる夫も、「ふい・んき」と発音していました。

それから、相談に対して意見を述べる人たちの文中に、面白いものを見つけることができます。

例えば、「巨大ブーメラン」というのがあります。

これは、因果応報という意味だそうです。
自分が人に向かって投げつけたものが、自分に返ってくるのです。
それに、巨大、とつけると、本当にそこはかとなく、可笑しいですね。

そして、ブーメランという武器が、本当にちゃんと投げた人のところへ戻ってくるのか。
これは是非、動画などを見て確認したいですね。


「寝言は寝てから言ってください」
と、書く人も多いです。
そういう言い方があるのは知っていましたが、相談者が本当に、認識不足というか、とんでもないことを書いていらっしゃるので、呆れて読んでいる時に、回答の中にこの「寝言は寝てから言え」があると、私は吹き出してしまいます。


「後出しジャンケン」

相談者さんの第一投稿に対して、すでに多くの人々が熱のこもった回答を寄せたその後で、

「字数の関係で書きませんでしたが、私は60歳です」
とか、
「ところで私はバツ3で、大きな子供がいます」
とか・・
要するに、それを知ったと知らないとでは、意見がすごく違ってしまうことを、後から出してくるやり方のことだそうです。

「壮大な後出しジャンケン」という書き方をする人もいて、これにもクスッと笑ってしまいます。

「二馬力」
「専業」
「子なし」

なんか、むき出しな感じの言葉も、普通なのですね。
私の子育て時代は専業主婦が多かったように思うのですが、長引く不況で、夫婦両方が働くのが特別ではなくなっていました。
現代事情に疎い私。

でも、「子供はいません」でよいところ、
35、バツ一、子なし。

と、ぎゅう詰めで書くのはなぜ。
皆さん忙しいのでしょうか。

それから、今は「専業志望です」と書くと、ちょっとまずいというか、「今時専業?」と言われやすいようです。

「専業志望ということは、
カリスマ主婦ぐらいに家事ができるのでしょうね?」

と書いてくる人も多いです。

「専業というからには、家事一切するのですよ?」

という人も。

え、そうなの?

「あたしんち」のお母さんは専業主婦ですが、お父さんは一馬力で一家の経済を担当しつつも、物を載せたら落ちてくる棚をせっせと作ったり、ホームセンターへ買い物に行くお母さんのためにしょっちゅう車を出してあげていますが、それはマメなことなのでしょうか。

それから、このサイトに書き込みをする人のうち、回答される皆さんの平均年齢は高いそうです。
なので、「ああ、こういうことを、前は言っていたね」という言葉遣いも散見されます。

「ルンルンと・・」
これは古い。
平成・令和生まれの人たちは、知らないのではないでしょうか。
「ルンルンを買っておうちに帰ろう」
でしたね。

「寿退社」も、女性をクリスマスケーキに喩えていたことも、私たちの世代が責任を持って、しっかし後進に伝えている最中のようです。

歌は世につれ、と言いますが、言葉も同じですね。

早起きしてしまった朝などは、だらだらと布団の中で、相談サイトを読んでいることが多い私。
ゴシップ好きなのではなくて、あくまで職業的関心です。

・・・というのは嘘です。

普通にゴシップが大好きなのに加え、
世間が狭い自分には、本当に勉強になります。

地方差というのが日本にこれほどあるということも、よく知りませんでした。

相談者の書くことを読んで、

昭和の生まれの方ですか?
今、令和ですが?

と書く人も多いけれど、

ものすごいど田舎なんですか?

と、率直にぐっさり書く人もたくさんいます。

ともあれ私の大好きな、悩める人と、意見を述べる人が集まるあのサイト。
これからも布団の中で、面白い日本語を探す旅を続けようと思います。


サポートしていただけたら、踊りながら喜びます。どうぞよろしくお願いいたします。