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エッセイ201.小田急線の車内であったこと

今週末、私たち夫婦は用事があって都内に来ています。
オミクロンがこのようになる前に決めたことで、予定が動かせず、
気をつけようがないけれども、気をつけて、感染せず・させずで
無事に過ごせますように・・という気持ちです。
京都の長女は先週末にコロナの隔離期間が終わったばかりです。
私は家に帰ったら、10日間外に出ないでいることは可能ですが、
夫はすでに、10日間のリモートワークを申請してきております。
感染ありきで動くしかしかたありません。

そんな状態で、昨日の昼間、ゴロゴロとキャリーケースを引っ張りながら、
目的地に向かう小田急線に乗り、空いているシートに座った途端に、
目の前の人の異変に気がつきました。

座席に横に体を倒し、すこし手足は動いています。
車内は、各シートに三人ぐらい座っている状態で、前後の車両の中まで見通せる空き具合。誰も動いていませんので、すでに同行者や周りの乗客が異変を知らせに走っているかと思って、前を見て、後ろを見てみましたが、慌ただしい動きもなく、周りの人はスマホを見ているか、ときどきちらちらとこの人を見ているだけです。

小さな年配の女性で、マスクが目のところまでずれていて表情は見えませんが、
私がそこへ行って、

大丈夫ですか?

と言いますと、

だめ

と。

お連れの方は? いらっしゃいますか?
誰かが車掌さんを呼びに行かれています?

と訊いても、

だめ

始発駅で、ドアが開いたまま電車はしばらく停まっているようです。
夫にキャリーケースを預けて、

発車ベルが鳴ったら車内に戻るので心配しないでね

と言って、すごく久しぶりにホームを走り出しました。

駅員さんが見つかる前に発車のベルが鳴り始めてしまったので、一旦車内に戻り、今度は車内を歩いて、女性と夫のところへ戻りました。
ちょっとこの駅で降りてもらうのは間に合わないかも。

今度は最後尾の車掌室に行きました。
考えたら、最初からそこに行き、発車の合図を出すために待機しているにちがいない車掌さんに知らせればよかったのです。
慌てていたと思います。

電車が走り出してから、こちらに向き直った車掌さんに合図し、小さな窓を開けてもらい、事情を伝えますと、車掌さんが出てきて女性のところに来て、

どうしましたか。次でおりますか?

と聞きました。女性はまた、

と言います。何を訊いても嫌とだめしか言わないので車掌さんは首から掛けた何かを使って何処かと連絡をしながら、戻っていきました。
意識がもうろうとしていたかもしれません。

私たちは女性の寝ているところへ行き、

次で降りられませんか?

と言いましたがお返事はありません。

酔っているようでも全くありません。

次の駅でドアから出て、やっぱりドアから出てきた車掌さんに合図をすると、車掌さんは走ってきて、また駅のホームには、たたんだ車椅子を手にした駅員さんも走ってきます。今度も女性は降りたくないと言っているらしく、結局町田で降りていただきますよ、このままで列車の遅延が続いてしまうので、と車掌さんが言っているところで、私たちの降りる駅が来てしまい、あとをおまかせして電車を降りました。

夜遅い電車で、明らかに酔っている男性だったりすると、私も何もしないと思うのですが、この人はみなりのきちんとした女性です。そばに行って触らなくても、駅員さんや車掌さんに知らせることは誰かできたでしょう。
特に、始発で、5分以上は停まっていたのですから。
(私がその間に、電車に車掌さんが乗っているはずと気がついて、電車の最後尾に行けばよかったのですが)

子供連れのお母さんも、心配そうに見ている人も、周り中にたくさんいました。
その人は一時は座席からほとんど床にずり落ちて、ご自分で手すりを探って掴んでシートに戻っていたりしたのです。周りの人たちの気持ちでは、私たちが動いたので、それでいいということになったのはわかるのですが、その前だって、乗ってからずっとそうだったのでしょうから、誰か声をかけてあげなかったのかしら。そこに私と夫は結構驚きました。
急を要することだったら、町田まで乗って行ってしまうのはまずかったと思います。

あの女性、たいしたことがなかったらいいのですが。
いつかは誰かがどうにかしていたでしょうけれど、
なんだか腑に落ちない気持ちになった出来事でした。

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