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誰でも使えるオンライン教材も充実!!イギリス発の若手ジャズミュージシャン育成機関「National Youth Jazz Orchestra」が激熱なので紹介

はい、ビッグバンドファンです。今日はイギリスの若手ジャズミュージシャン育成機関である「National Youth Jazz Orchestra」を紹介していきたいと思います。

National Youth Jazz Orchestraについて

このビッグバンドはイギリスにおいて若手ジャズ・ミュージシャンの登竜門的役割を果たしており、バンドメンバーも25歳までと年齢制限があります。

設立は1965年で、設立以来一貫して主要なコンサートホールや劇場、ラジオ、テレビで演奏する機会を作り、今ではイギリス全体で年間約40回程演奏をしています。メンバーはオーディションと招待によって選ばれているようです。

また、2011年からはロンドン近郊の小中高生の層を対象とした「NYJOアカデミー」が設立されました。これは参加費も1セッション辺り5ポンドと少額で参加できるもので、年に6回の公演も行い、18歳未満を対象に無料のジャムセッションを毎月開催しているそうです。こんなインタビュー動画もあります。

こうした長年の活動が実を結び、現在ではイギリス国内に90の教育パートナー組織を持ち、そのうち9つは「フィーチャー・パートナー」と呼ばれ、最低3年間のパートナーシップを結び、NYJOと密接に協力して地域のニーズに合ったジャズ教育の機会を作っています。また、このような育成実績が評価され、2015年4月には英国芸術評議会の英国国立ポートフォリオ機構(NPO)にもなっています。

更に昨年2020年にはこれまでの伝統的なジャズの形に囚われないより新しい音楽としてのジャズを追求していける、そんな現代的なコースとして「NYJO Exchange」も設立、ますます活動を活発化させています。

演奏が本格的にカッコイイ

さて教育機関としてのNYJOの紹介から入りましたが、この団体、勿論バンドとして演奏活動も行っており、アルバムも数多くリリースしていますが、これがとにかくカッコイイ。アメリカで言えばUniversity of North TexasのOne O'clock Lab BandやUniversity of Northern Colorado Jazz Lab Bandといった学生バンドもカッコイイ演奏を聞かせてくれますが比肩する出来です。

これが25歳以下で全員構成されている発展途上中の若手ジャズオーケストラの演奏ですから、いかに教育機関として高いレベルで機能しているかよく分かります。

なお、楽譜はStanza Musicより発刊されています。

ちなみに日本だと同様の機能を大学の学生ビッグバンドが果たしている状態ですが、上記UNTやUNC、NYJOとの大きな違いが専門的な教育リソースと本格的な演奏機会の有無です。音楽大学のビッグバンドになるとまた違うと思いますが、一般大学のビッグバンドサークルではいくら伝統とノウハウがあったとしても教育機関としてこのレベルに達するのはなかなか難しいところだと思います。勿論努力と才能によって道を切り拓いていく一部の人間に関しては論を俟ちませんが、全体のレベル感を上げていこうと思ったら、こうした仕組みを作り上げていくこともまた求められているのかなという気もします。

非営利団体につき寄付で活動資金が賄われている

凄いと思うのが、このNYJOは非営利団体につき、活動資金が寄付で支えられているという点。これ、要するにそれだけの寄付金を集められるだけイギリスで根強く活動が支持されているということですから、なかなか一朝一夕でどうにかなるものではないと思います。凄い。

Virtual Academy=登録すればオンラインでNYJOの教育リソースにアクセス出来る

そして、このオンライン全盛の時代ですから、当然のようにオンライン教材もあります。

こちらアカウント登録すれば国など関係無しに誰でも利用可能です。利用できるのは以下の4つのリソースです。

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一つ目のMINUS ONEは譜面と音源がセットになった練習セットです。勿論演奏も譜面も全てビッグバンドで、A Night In TunisiaやST. LOUIS BLUESなど全部で18曲入っています。

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これ強烈なのが、「PLAY ALONGS」をクリックすると、mp3の音源セットがダウンロードされるのですが、これがそれぞれのパートをマイナスしたバージョンのmp3になっていて、自分の楽器に合わせたバージョンのmp3をかけて練習出来るという代物です。更に「BACKING TRACKS」に関してはDAWで自由調整出来るフォーマットになっており、MACだったらGalageband、WINDOWSだったらAUDACITYといったそれぞれ無料のソフトウェアで読み込んで調整出来るというものです。ただ、これ2つともすごく容量が重くてダウンロードできないという方もいそうだということで、なんとSOUNDCLOUDに音源も上がってます。こちらはMP3音源をそのままクラウドにアップしているようなので、「PLAY ALONGS」と同じく自分の楽器がマイナスされたバージョンを聴きながら練習出来るというものです。なんていうか、お金ない中でも工夫しながら最大限練習出来るリソースを提供しよう、という情熱をとても感じます。

2つ目のVIRTUAL VIDEO SERIESはビデオ教材です。こちらも専用の譜面と音源がついていて、ビデオはこの譜面と音源に対してどのように練習をすればよいかの解説をしてくれているというものです。今のところ4つセットがあがっています。

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3つ目はListen & Learnで、これはYouTubeやSpotifyで配信されているプレイリスト「Jazz Tunes You Should Know」つまりジャズの定番曲集になりますが、これのPlay Along音源と譜面がセットになっています。いわゆるアドリブソロの練習セットになりますが、曲数は本日時点で40曲、一部の曲にはソロ例の譜面まで付いています。これは勿論プレイヤーにとっても嬉しい資料ですが、リスナーとしても譜面を見ながら聞くことで、聞き馴染みのある曲でも新しい発見が出来ると思います。

しかも元となる定番曲集のリストに関しては「BEGINNER」「INTERMEDIATE」「ADVANCED」「VOCALS」に分けて紹介されています。なので「ジャズが初めてだ」「まず何を模範演奏とすればいいの?」といった方に対してもきちんと道を示しています。

すごく丁寧に教育してきたんだなというのをこういうところからも感じますね。

そして最後の4つ目はADDITIONAL RESOURCESということで、こちらはビッグバンドの参考音源とNYJOのMDチームが調査してパブリックドメインで公開されている譜面のリンク集です。譜面に関しては以下のサイトへのリンクとなっており、こちら覗いてみますと700曲弱公開されています。

というわけで、いかがでしたでしょうか?ビッグバンドの教育はアメリカでもBob Curnowさん、Peter Erskineさん、Bob Mintzerさんといった有名アーティストは勿論のことUNTや政府機関が譜面のアーカイブを積極的に行ったり、更に民間企業であるMakeMusic社が500曲以上のビッグバンドの譜面と音源をセットにした教育Webサービスをリリースするなど、多面的にリソースが投入されています。

日本でも山野ビッグバンドコンテストを始め、小中高生向けの動きも広がりつつあり、層の厚さは年を追うごとに増していっております。

ヨーロッパにおいてもWDR BigBandがPlay Alongアプリをリリースするなどの動きがあります。

こうした中でイギリスでもこれだけ熱く、しかも継続的に教育にリソースを投入してきているというのは、やはりビッグバンドという音楽がグローバルに今も熱をもった音楽である、ということの証左ではないかと思います。

いかがでしたでしょうか?今後もこうしたビッグバンド教育関連の情報はどんどん集めて発信していきたいと思います。以上、ビッグバンドファンでした~、バイバイ~

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