みんなカッコ良くて困ってしまう、2016年以降に発表されたコンテンポラリーど真ん中なビッグバンド作品4選

はい、ビッグバンドファンです。今日は2016年以降に発表されたまさに現在のビッグバンドが分かる作品を4つ紹介していきたいと思います。いや〜、どれもカッコいいよ。

Thierry Maillard BigBand

さぁ、早速一つ目からもう読み方が分からないwwwというのも、この人フランスの方なので、多分英語読みじゃないでしょ。「ティエリ・マイラール」でいいのかな?そういうことにしておきましょう。で、「フランス・ビッグバンド・コンテンポラリー」と3条件揃うとONJの略称でもお馴染みフランス国営ビッグバンド「Orchestra National de Jazz」やフランスの首都の名を冠した「Paris Jazz BigBand」という名前がパッと出てきて、聞く前から妙に緊張してしまうわけですが、安心してください。このビッグバンドはこの2バンド程ぶっ飛んでなくて、割と普通にカッコ良く聞けます。

このビッグバンド、Pursuit Of Happinessというアルバムを2018年に発表後、昨年2020年にZappa Foreverという文字通りFrank Zappaを取り上げたアルバムを発表しています。

木管楽器の使い方が特徴的ですね。かなりビートがきいた楽曲においても丁寧にラインが聞こえてきます。また高音でピーキーにならず、サウンドのまとめ方にもセンス、そしてエンジニアリング含めた工夫をすごく感じます。

あと余談ですが、このティエリ・マイラールさん、デボラ・セファーというヴァイオリニストの夫さんらしいのですが、このデボラ・セファーさんもかなりカッコいいです。ヴァイオリニストといってもまぁ普通じゃないんですが、それがまたセンスが良い。個人的には夫よりもチャレンジャーな雰囲気を感じます。夫婦揃ってまぁなんというか、スゲェなぁ。

Alan Ferber BigBand

続いてはアラン・ファーバーさんです。1975年生まれということでキャリアは割とある方です。これまでグラミー賞に3度ノミネートもされており、ダウンビート誌をはじめアメリカのメディアで“現代において最も注目すべきアレンジャー/ リード・トロンボーン奏者”と絶賛される方です。そんなファーバー氏が2017年に自身のビッグバンドからリリースした作品が「JIGSAW」です。

ダウンビート誌では2017年のベストCDのひとつに挙げられ、2018年のグラミー賞Large Ensemble部門にノミネートもされていますが、聞けば一発で分かるほど出来の良さに驚きます。メンバーにJohn Fedchock氏や兄のマーク・ファーバーも参加するなどしっかりとしたキャリアを積んできたことが分かる陣容にも注目です。

サウンドは全体的にコンテンポラリーであるものの変に小難しくならず、聴きどころをしっかり押さえたバランス感覚が本当に見事です。タイトル曲の「JIGSAW」も冒頭こそ無調性な展開で幕を開けますが、しばらくするとマイケル・ギブスを彷彿とさせるような物語性のあるアンサンブルが現れフレーズを紡いでいきます。

また全体的にソロとアンサンブルのバランス、絡み合い方が絶妙で実に聞き応えがあります。

Christoper Zuar Orchestra

そして今度は1987年生まれの新鋭です。2016年に発表したMUSINGSですが、このサウンドの落ち着き方、熟練っぷり、パッと聞いて只者ではない感が凄いです。

一般的にコンテンポラリーというのはいつの時代においてもいわゆる革新ですから、少なからず攻めの姿勢に重心を寄せていく、そこに魅力があるわけです。しかし、いわゆる攻めすぎてしまうとよく分からない話にもなるわけで、そのバランスが勝負だったりするわけです。ティエリ・マイラールにしてもアラン・ファーバーにしてもその辺りは絶妙なわけですが、それでも少し攻め感というか、悪くいえば腰が少し浮くような側面は否めないわけです。それが、このクリストファー・ズール、若いのになんでしょう、この完成度。いや、聞けば分かりますが、別に落ち着きすぎているわけではない、十分攻めてるし革新的な音使いも随所に見えるのですが、それでも全体で聞くとどっしりとした落ち着きを感じさせる。レコーディング当時はまだ27歳だったというんですから、これはもう驚くしかないです。2曲目のChaconneはバッハの対位法をモチーフにしたということですが、これも実に見事。ピアノソロ明けにブラスと木管にそれぞれフレーズを割り当て、ブラスの中でも細かくフレーズの割り当てを変えつつ、絡み合いながら進行させていくわけですが、当然対位法であることを踏まえると音色や強弱を揃えていく必要があるわけです。普通に演奏すればブラス優位になるので、それでは対位法的に響かない。この辺りの立体感と絶妙さの表現はまさに芸術そのものです。かと思えば、6曲目の「Anthem」ではサンバのリズムを用いながら軽妙かつリリカルにフレーズを紡ぐ。なんていうかお茶目な顔が想像出来るぐらいセンスが良い。そして、兎にも角にも全体的な完成度の高さ、思わず「あなた人生何回目ですか?」と聞きたくなります。ちなみにTbセクションには先程紹介したAlan Ferberも入ってます。

Phronesis & Frankfurt Radio BigBand

これはどっちをとりあげればいいのか分からないのですが、企画メインとしてはPhronesisになるのでPhronesisを取り上げます。PhronesisはUKのピアノトリオです。近年UKのジャズはかなり熱いそうです。また他ジャンルの音楽とジャズの距離感が近しいそうで、その為か全般的にいわゆる時代性の取り入れ方に無理がなく、Phronesisもそんなトリオの一つになります。そんなPhronesisがFrankfurt Radio BigBandと組んでセルフカバーをビッグバンドでやったという作品なのですが、まぁ元の曲がかっこいいのでビッグバンドでやってもかっこいい。

変にこねくり回さず元のラインを活かしたアレンジですが、輪郭がはっきりして魅力が増すというビッグバンドの現代的で理想的な活かし方が見られます。この辺りのセンスは日本で言えばWONKあたりがやってくれるととても嬉しくなるんですが、どうだろうなぁ。

TRI4THやSoil、DC/PRG、Jaberloppなんかもいい感じなんですけど、本当にあともう一歩という感じがしますね。ビッグバンドでね、ここまでのセンスの良さを発揮出来るんだということ、それをまずは知ってもらえたらというところですかね。

というわけで、いかがでしたでしょうか?現代をひた走るビッグバンド、カッコいいでしょ?一点どうしても気になるのが、どの動画も再生回数が少ないということ。配信で聞いてるからYouTubeでわざわざ聞かないのかな?んな訳ないよな。こういうカッコいい音楽はどんどん聞きましょ、ね?はい、そういうわけで、以上ビッグバンドファンでした、バイバイ〜



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