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ドイツを代表するビッグバンドコンポーザー・・・なんだけど、読み方がいまいち分からなくて、長くて必ず噛んでしまう「Peter Herbolzheimer」さんの紹介

はい、ビッグバンドファンです。今日はドイツを代表するコンポーザーであり、ビッグバンド作品を数多く世に送り出した「Peter Herbolzheimer」さんを紹介したいと思います。

ドイツはジャズもビッグバンドも盛ん

ドイツは放送局付きのビッグバンドが4つ(WDR、NDR、SWR、hr)もあるうえに、ティル・ブレナーなど世界的に活躍するジャズミュージシャンも数多くいます。last.fmのgerman jazz artistsでも300以上出てきます。

サウンド的にはボーダーレスな試みが多い印象があります。あくまで今カッコイイ音楽の在り方の一つとしてジャズやビッグバンドを活用しているという姿勢がみられ、変に懐古的ではなければ奇を衒いすぎてもいないところが素敵だなと感じます。

そんなドイツのジャズの歴史の中でビッグバンドの楽曲を数多くリリースしてきたのが「Peter Herbolzheimer」さんです。

Peter Herbolzheimerさんの生まれ育ち

Peter Herbolzheimerさんは1935年にルーマニア人の母親とドイツ人の父親のハーフとしてルーマニアのブカレストで生まれ、2010年に75歳で既にお亡くなりになられています。楽器はトロンボーンを扱っていましたが、ここではバンドリーダーとしての足跡を見ていきます。

時代は第二次世界大戦後、冷戦体制に突入する中、Peter Herbolzheimerの10代前半は共産主義のルーマニアから民主主義の西ドイツ、更にアメリカへの移住という激動の時代を生き抜いていくことになります。その中で1954年にアメリカのミシガン州ハイランドパーク高校を卒業します。その後は1957年にドイツに戻り、「オープンマイク」という店のマイクを飛び入りの客に開放するステージでバルブ・トロンボーンを演奏したりしながら音楽活動を始めつつ、1年間ニュルンベルグ・コンセルヴァトワールで学ぶ等実力もつけていきます。

1960年代に入ってからはニュルンベルグのラジオダンスオーケストラやベルトケンプフェルトのオーケストラで演奏した他、1968年にはHans Kollerがディレクターを務めていたハンブルク劇場)のピットオーケストラのメンバとしても演奏していました。

その後ついに1969年になり自身のビッグバンド「Rhythm Combination and Brass」を結成、ここからコンポーザー&アレンジャーとして活躍を始めます。1972年にはミュンヘン五輪のオープニング曲を作曲、1974年にはゴールデンスワン賞を受賞、同じく1974年にモナコで開催された国際ジャズ作曲家コンクールで優勝しています。更に1970年代後半の「Jazz Gala」というツアー企画ではエスターフィリップス、スタンゲッツ、ナットアダレイ、ジェリー・マリガン、トゥーツ・シールマンス、クラーク・テリー、アルベルト・マンゲルスドルフといった著名なゲストミュージシャンとの共演が話題を呼び人気を博すようになりました。また70年代~80年代にはエラ・フィッツジェラルド、ベニー・グッドマン、サミー・デイビスJr.、ディジー・ガレスピー、アル・ジャロウといったジャズジャイアントとも共演しております。

86年からはユース世代の育成を目的としたビッグバンド「the Bundes Jazz Orchestera」のディレクターを務め、ビッグバンドのクリニックを定期的に開催、2007年には「the European Jazz Band」のディレクターも務めヨーロッパツアーを敢行する等、後進育成にも尽力されてきました。

こうやってみていきますと、40年代50年代は戦争とその後の冷戦体制の中での激動の時代、50年代後半から60年代はオープンマイクからオーケストラメンバーとして活躍するといった演奏家としての下積み時代、69年に自身のビッグバンドを結成後の70年代はオリンピックのオープニング曲を担当したり数々のジャズ・ジャイアントとの共演を果たすなどコンポーザー&アレンジャーそしてバンドリーダーとして飛躍の時代、80年代に入ってからは更に飛躍を果たしつつ後進育成にも尽力していった、そんな方になります。

Jazz Galaの名演

上記のように70年代以降に数々の名演および作品を世に送り出してこられたPeter氏ですが、その中でも有名なものとして「Jazz Gala」シリーズがあるかと思います。こちらは現在Apple Musicでvol.1からvol.3まで聞けるようになっています。

オリジナル作品、アレンジ作品共に意欲的な作品が並んでおり、まさに氏の真骨頂がサウンドからよく分かるアルバムとなっています。基本的にスタイルを固定しないのが特徴で、スイング、ラテン音楽、ロック音楽といった様々な音楽スタイルをいい感じに取り入れながら楽曲を作り上げていきます。これは冒頭に話したドイツのジャズやビッグバンドシーンの今にも通じる部分で、変に懐古的であったり奇を衒うのではなく、音楽としてよいものを作り上げるという姿勢がとても鮮明に打ち出されています。またSpain、The One Stepといったチック・コリア氏の楽曲、Giant StepsやNica's Dream、Lester Left Townといったスタンダードナンバー、The Age of ProminenceやWheeler's Choiceといったオリジナルナンバー等選曲のバランスも良いです。

膨大な曲は音源と譜面も購入可能

勿論その他の楽曲もApple Musicで聞くことが可能ですが、これらをご自身のホームページの「Discography」として公開されていまして、検索することも可能になっています。

また、晩年後進育成にも尽力されていた方だけあって、譜面に関してはこんな記載があります。

To almost every arrangement by Peter Herbolzheimer we do purchase printed sheet music from our archives. Just drop a line and leave your email address and we will get back to you.

というわけで、問い合わせフォームより連絡頂くと購入出来る譜面もあるそうです。この方に限らないのですが、ヨーロッパのビッグバンドの譜面はなかなか日本で流通していないということもあり、入手が難しいケースもあるのですが、こうやってご自身がしかも亡くなられたあともきちんと窓口を公開されているというのは非常に有難いなと思います。

というわけで、いかがでしたでしょうか?ちなみに日本語読みではピーター・ヘルボルツハイマーとピーター・ハーボルツハイマーと2通り程ありそうなのですが、私は前者で読んでます。どっちがいいんですかね?ネイティブの方の発音を聞くのが一番なんですが、知り合いにドイツ語ネイティブがいないので、もし分かった方、こっそり教えてもらえると嬉しいです。以上、ビッグバンドファンでした~、ばいばい~

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