オタクが好き勝手にウマ娘舞台を語ってみた

 

ウマ娘舞台アーカイブを鑑賞し完走した感想


 昨日草野球に行く間に熱心なオタク(@gunmk12 )に、私が運転中にも関わらずタブレットで舞台動画を見せつけられたことで、なんだかんだ触れなかった舞台を見る機会を得た。
 シフトレバーの傍にタブレットを置いて音声メインで聞いていたのでちょっとわからないことも多かったが、しっかりと内容を受け入れることはできた。
 シフトレバーでギアを落とす時にタブレットに引っかかりそうになり何回か(アカン事故る)と思ったのはご愛嬌。

ダイタクヘリオス
 キャラクターの解像度がアプリ以上に広がった。ファンの間でも曇らない太陽とされていたし、実際そうだった。それでも曇らない太陽のまま、悩み、答えを出していくヘリオスの物語もちゃんと組み込まれていた。
 ただ、やっぱり明るくてかっこよすぎるから、完全に主人公のアニキポジのキャラ造形してんだよな。「爆逃げする」と心の中で思ったならッ!その時スデに行動は終わっているんだッ!
 パーマーから見たら光を与えてくれるアニキだし、今回もルビーからしたら光を与えた太陽だった。
 ヘリオスの覚悟が!言葉でなく心で理解出来た!
 アニキポジのキャラクターの視点から物語を描写した結果、この主人公メンタル最強だなと感想になる。
それでも常に明るいわけではなかったというか、感情の振れ幅はちゃんと声優さんの演技とシナリオで見せてくれた。喜怒哀楽をハイテンションのままに乗せて表現する生きたキャラクターだった。
 ヘリオスはアプリでも言われていたけど走ることそのものが楽しくて、勝つことに執着がないんじゃないかと言われていた。でも負けると悔しくて悶絶していたし、変な鳴き声をよく上げていた。フクキタルといい勝負だと思う。負けたくないし勝ちたいと思ってるけどそれは楽しく走った上でそうならないと意味が無いと捉えている。楽しさが至上で、楽しく走って負けたなら次は勝つというおおよそ年頃の少年少女が抱える嫉妬や羨望を完全に克服してるあたり精神性が一段階上にいるんだ。
 飲み会にいたらよくわからんが盛り上がるタイプなのはもうアプリでも披露されてるな。端っこでスマホ弄ってる陰キャがいたらそいつが楽しそうにするまでひたすら場を盛り上げる。例え相手がちょっと嫌そうな顔をしていようとやめない妖怪パリピ。わりと容赦なく照らそうとするあたり、太陽って感じだし、価値観押し付けるエゴイストなところもあるんだよな。ブレなさすぎて強い。
 ハイテンションの上に出番が多く、ダンスや歌の場面が複数ある声優さんの負担が大きいだろうなという感想。明らかに息が切れてるシーンもあったし、あんなもん息切らさないわけないだろ。だからこそコロナで公演休止になったことは無念だったことは想像に容易い。とはいえなんとか最後公演できて良かったと思う。努力が少しでも報われたなら、と願うばかり。

ダイイチルビー
 名門お嬢様。声優さんの所作が瀟洒で「オジョウサマァァァ」という擬態語を常に幻視した。この人だけ歌声が別格に美しかった。地声と言うよりは素人が想像するミュージカルの歌声で、歌が上手いとわかる。透き通った声と突き抜ける芯の強さからまたしても「オジョウサマァァァァ」という擬態語が見えた。元祖ウマ娘お嬢様枠がだいぶバラエティ慣れしてしまったので、ルビー……お前はウマ娘お嬢様枠の柱になれ。
 キャラ造形としては貴族に近い名門の出から生まれて、その責務を一身に背負うわりとありがちなバックボーンなんだけど、ありがちだからこそ随所に散りばめられたエッセンスが光っていた。
 まずこの手のキャラにありがちなのが「結果を残さないなんて家柄にふさわしくないザマス!」「落ちこぼれザマス!」みたいな家族の声だけど、それはあんまりなくてルビーの母や家族からは愛情がたっぷりだったんだよな。
 幼い頃に「体が弱い」と言われて周囲は落胆する。それでもルビーの母は、ルビーが元気であればよなったし、ルビーが走れるようになったらそれだけで母は嬉しかった。
 ルビー自身も最初は走る喜びを味わって高揚していた。別に生まれついての責務とかそんなものはなかった。
 ルビーが何のために走っていたかというと、愛情に応えるためだったと思う。親が喜んでくれるから走るという子供らしい素直な感情が第一にあった。でも次第に名門一族というフィルターを通してルビーを見る外野の声を聞いて、ルビーは一族の責務や一族を通した自分への期待に応えるという気持ちで愛情の周りにコーティングしていったと解釈したよ。
 そのコーティングを溶かしたのがヘリオス。まぁその心の殻を破る勢いが凄まじくて、温めて溶かしたってより火炎放射器浴びせ続けてたんだけどな。
 ヘリオスによってルビーは自分はただ走るだけで楽しく、そしてそれだけで喜んでくれる人がいることを思い出した。ルビーはわかりやすく不器用なタイプでレースに持ち込んでいい信念は1個しかダメだと思ってたんだろうな。子供らしく柔軟さにまだ欠けていたが、立派なもんだよ。ルビーくらいの歳のときはオリジナルのサーヴァント考えてたのに。おいは恥ずかしか!
 ヘリオスによって思い出したあとは、期待や責務に応えるという想いと、自分を愛してくれる、自分が楽しむことで喜んでくれる人のために走るという想い2つを持つようになれたと思う。憑き物がとれたというよりは他者との交流で成長したって感じ。ヘリオス視点の物語から思いをぶつけられることでルビーが成長していく物語に繋がっていく流れが綺麗。
 殻を破った努力の人は超絶強い。当然だし、俺はそういう展開が好き。この先ボス倒す時の共闘では絶対息ぴったりになるんだよ。戦わないと思うけど。
 それはそうとアプリの時からナチュラルに短距離路線を見下していたけど、そこにはあんまり触れられなかった。育成実装された暁にはアプリトレーナーに多分そのへん諭されるからだと思う。
 結構不器用でところどころ配慮に欠けるようなナチュラル畜生なところがあるけど、責務とかそういうもんに視野狭窄に陥っているというわかりやすい描写だと思う。
 それはそれとして、飲み会ではノブレス・オブリージュといわんばかりに食い物を皆の皿によそってくれるけど、他の人が嫌いなものやアレルギーなんかはあんまり気が回ってないタイプだと思うよ。ナチュ畜の素養が多い。
 できれば夏のイベントでルビーをサポカとかで実装して欲しい。そして白いワンピースと麦わら帽子を被せてくれ。

 “麦わら”のルビー……!!

ケイエスミラクル
 俺という一人称だけど男勝りではなく、薄く積もった雪のように儚げで、男装の麗人という倒錯的な美しさを持ったビジュアル。
 そこから繰り出される内面がサバイバーズギルト丸出しの衛宮士郎とは思わなかった。
 プロフィールでも命を救われたということもあって、その人たちへの恩返しのために走るという感じどころじゃないんだよ。
 命を貰ったからには命を以って報いるべしと言わんばかりで、ドリフターズに出てきた武士のマインド。
 その上で自分の脚が故障しやすくいつまで走れるかわからないから、例え命を散らそうと栄光を掴まなくてはいけないというとんでもない強迫観念に突き動かされてるウマ娘。こいつだけシンデレラグレイの作画なんだよ。
 グラスワンダーやメジロアルダンみたいに覚悟ガンギマリ勢なんだけどグラスワンダーが「ナメられたら殺すし、勝てないならば腹を斬れ!」ってタイプの武士なら「この戦で死ぬことはわかっているけど、だからといって逃げることは有り得ないし、天命に身を任せて死に花咲かせようぞ!」ってタイプの武士。
 悪口ではないんだけど命を救ってもらった上で自分が死んででもGIを勝ってそれに報いるって、一競技に命懸けすぎだろ。能力バトルの世界から来ました?
 そりゃモンキー・D(ダイイチ)・ルビーも「死ぬことは恩返しじゃねえぞ!!」と言うわ。でも覚悟ガン決まってるし、自分もそういう立場だったからルビーもミラクルを言葉で止めることはできないことはわかってる。だからこそそれまで責務のために走っていたルビーが、成長した自分の走りを見せることでミラクルにわからせる流れがあまりに物語が上手すぎる。
 ヘリオスが叩きつけた熱を受け取ったルビーがその熱をさらに高めてミラクルが持つ狂気に近い炎を爆発で吹き飛ばして鎮火させた流れ。
 ヘリオス→ルビー→ミラクルと綺麗に軸が移っていったし、群像劇としての流れが綺麗に収まっていた。
 それはそれとしてウマ娘シナリオ班は容赦ないので故障発生させるんだけど史実では予後不良になったケイエスミラクルはウマ娘世界では再起可能な怪我で済むようになる。
 描写的に怪我した直後に「脚が折れようと勝ちを諦めることはできない/ここで折れて走れなくなるくらいなら死んでもいい」という思いだったんだろうけど、ルビーを見て「自分のために楽しんで走ってもいい」「自分が走るだけで喜ぶ人が必ずいる」ということを伝えられて結果的に脚を守るように失速したんだろう。
 それがぱっと分かるように演出されてるのはすげーと思う。
 ウマ娘世界ではケイエスミラクルが当時を考慮してもおおよそ重賞、GIを狙える馬にしては明らかな使い詰め状態になっていたのは、ケイエスミラクル自身の精神性が故にってところに落とし込んだのは納得。
 じゃあ史実はなんであのペースで使ったんですかと考えると謎。まぁ時代背景とか、色んな事情があったんだろう。あんまり言うと競馬やってるおじさんたちが突っ込んでくるから黙っておく。
 飲み会でゆっくり飲んでいると思ったら実はカロリー高いものは避けて低カロリー高タンパクなものとか、栄養にいいものしか食べてないストイックさを上手く隠したやり方で飲み会にいそうなんだよな。
 白鳥モチーフにされてるし、白鳥が軽く泳いでるように見えて実はバタ足でもがいてるように、ミラクルは冷静で優雅な外面をしてるが内面はとんでもないもの抱えてたってことを表してるのかなとも思った。
 調べたら白鳥はそんなにバタ足しないらしいけど。

ヤマニンゼファー
 今回は語り部役でやっていた。3人にがっつり絡む感じではなかったけど、だからこそ上手く語り部になっていた。
 普段からポエミーな語りだから語り部役が違和感なかった。もしポエミーな語り部をエアシャカールがやっていたらそれはそれで面白いと思うけど。
 ただ語り口かそよ風ってか暴風でところどころよくわからなかったんだよな。結果的におもしれー女(比喩なし)という評価に落ち着く。
 草野球行った帰りに銭湯に行ってたんだけどやっぱりヤマニンゼファーは寮の大浴場に入ってもタオルで隠したりしないで堂々としてるし、風呂上がりには扇風機の前を全裸で独占してるし、瓶牛乳を腰に手を当てた姿勢で一気飲みしてる。
 自由好きで飲み会でもとりあえずビールの流れで熱燗いきなり頼むし、熱燗だから乾杯もできないんだけど「ゼファーちゃんらしいよね」とみんなニッコニコで許すキャラなんだよな。
 俺が職場の飲み会でそれやったら無能の烙印を押されるぞ。最強だなゼファー。

 総括
 今回のシナリオは三人のウマ娘の群像劇だった。
 「今の光景を見つつ、終わればすぐに未来の光景を見るヘリオス」と「責務を背負って今、目の前の光景しか見れなくなっているルビー」と「未来がないから今を全ての人に焼き付けようとするミラクル」の三者三様のスタンスが最後には未来を向くようになるハッピーエンド。
 ヘリオスを原因とする未来への玉突き事故って感じで登場人物への感情移入もスムーズだった。
 舞台に触れたこと無かったから演出なんかが受け入れられるか不安だったけど、そんな自分でも楽しめる作品だった。演出やスクリーンの描写で自然とその世界に溶け込むことができた。 
 レースシーンに一部外野からの雑音もあったけど、物事にはその物事の楽しみ方があるので、別に私は気にならなかった。
 舞台を見ている間は正に魔法にかかったように、勝手に所々を補完できるあたりに舞台劇やミュージカルの素晴らしさを感じた。
 コストやスケジュール抜きにしてウマ娘同士の物語を表現するのに相性が良すぎる。ウイニングライブが間違いなくウイニングライブなんだよな。またやってほしい。


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