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世界史 その3 古代エジプト文明のはじまり

 世界史その2でシュメールとアッカドの文明の最後となるウル第3王朝の終焉までをまとめた。世界史の教科書だとそのままバビロン第1王朝に続き、ヒッタイトなどを一気に説明してエジプトに移り、パレスチナのアラム人、フェニキア人、ユダヤ人を取り上げた後、アッシリアからアケメネス朝までで古代オリエントを一区切りして、古代ギリシアへと移る。
 古代オリエント全体を理解するにはよいだろうけど、どの時代が他の地域のどの時代と同時期なのか分かりにくいのが、高校生の頃から不満だった。そこでせめてものオリジナリティとして、古代オリエントの総まとめはどこかで行うことにして、一旦エジプトに話を移そうと思う。
 2回に分けてエジプト古王国あたりまで説明したら、ヨーロッパの巨石文化に進もうかと思っている。

 さてお約束通り、地勢の確認から。古代エジプトを語る時に出てくるのが、「エジプトはナイルの賜物」という言葉だ。古代ギリシアの歴史家ヘロドトスの言葉だが、エジプトの地勢の本質を突いている言葉として、日本の教科書には必ずと言っていいほど取り上げられる。
 遠く、現在ではケニアやタンザニアに囲まれた赤道の地にあるヴィクトリア湖を水源とする白ナイル、エチオピア高原から流れる青ナイルが合流したのがナイル川だ。エジプトに流れてくるまでに流れが急な場所が6箇所あって、エジプトに近い北側から第1~第6急湍(きゅうたん)と呼ばれている。最後の第1急湍から下流が、古代のエジプトの本土。それより上流はヌビアと呼ばれていた。
 エジプトの本土に流れ込んだナイルは現在のカイロまで、ほとんど枝分かれすることなく流れる。人の住む地域はナイルの両岸の細長い地域で、その外側には沙漠が広がっている。この地域が上エジプトだ。
 カイロより下流でナイルは多くの支流に別れ、平地が扇形に広がる。この地域が下エジプトだ。
 地中海に面した地域以外は極端に乾燥しているのが、エジプトの気候の特徴で、水資源はほぼ全面的にナイル川に頼ることになる。
 そしてナイル川と古代エジプトを語る上で欠かせないのが、毎年定期的に起こる洪水だ。エチオピア高原の雨季と連動して起こる洪水は、時期だけでなく規模までもが毎年同じように起こる。そのため破滅的な洪水の伝承の残るメソポタミアと違い、エジプトでは洪水を純粋に天の恵みとして享受できた。と、ここでシュメールの項で洪水伝説やギルガメシュ叙事詩について触れなかったのに気づいた。どこかで独立した項目で取り上げることにしよう。
 ナイルの洪水は水資源だけではなく、養分に富んだ土までも運んでくる。そして洪水が引いていく時に土壌の塩分を運び去っていくために、メソポタミアで問題であった塩害も問題にならない。これだけのナイルの恵みを聞けば、ヘロドトスの言葉が実感を持って響くだろう。
 そしてナイル流域の外側に広がる沙漠は完全にではないけれど、異民族の侵入を防ぐ役割を果たしたので、古代エジプト地域はハム系の民族による文化が長く続いた。

 この地域の新石器文化ではナブタ遺跡が知られていて、旧石器文化から新石器文化への連続的な移行が確認できる。アブシンベルの西方約100キロというからエジプトというよりはヌビアの地にあたる。紀元前6150年頃の遺跡では狩猟動物が中心の骨の中に牛の骨が含まれ、大麦の種子が発見されている。紀元前5500年頃にはエンマー小麦も加わり、動物の骨の中心は牛、羊、山羊となることから、農耕牧畜中心の生活に変わっていることがわかる。この遺跡は紀元前4350年頃放棄された。住民はおそらく乾燥化のため、ナイル川流域へと移動したようで、土器の紋様が類似したヌビアの第2急湍付近のワディ・ハルハ遺跡はおそらくナブタ文化に由来し、更に上エジプトのバダリ文化にも影響を与えた可能性がある。
 紀元前5500年頃下エジプトにメリムダ文化が登場している。豚の飼育から西アジアとの関係が推測され、上エジプトとは別の起源を持つようだ。
 紀元前5000年頃になるとナイルから少し離れたファイユム低地にファイユムA文化、上エジプトにはさっき名前の出てきたバダリ文化が始まる。

 紀元前4000年頃の上エジプトでナカダ文化が出現する。ナカダI期では生活の中で農耕の割合は更に増した。銅の使用が広がり、金属、石、象牙、粘土など工芸品の技術が発達。交易によって、銀や黒曜石、ラピスラズリが流入していた。
 ナカダII期に灌漑によって農業生産は安定、集落は大型化し貧富の差や階級の分化を示す遺物が見られる。西アジアとの交易も拡大し、メソポタミアからの文化的影響が見られる。いくつかの国家と呼べる規模の集落も形成される。
 ナカダIII期にナカダ文化はヌビアから下エジプトにも拡大した。下エジプトはメリムダ文化、オマリ文化、マアディー文化と文化を発展させていたが、それがナカダ文化にとって変わられた。

 上エジプトに生まれた国々の中でティニスが最も有力であり、遂に上エジプトを統一する王国を形成する。そして上エジプトの王国は下エジプトも征服してエジプトを統一する。
 エジプトは古代エジプトとしてよく知られる、ファラオの時代となる。
 次回は初期王朝と古王国時代のエジプトを扱うが、ピラミッドを軽く流すと、意外とボリュームが少なくなるかも知れない。

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