エジプト古王国は交易で滅んだか。

 次はエジプトの第一中間期から中王国と第二中間期で纏めようと思っていたのだが、資料を読んでいるうちに古王国についてピラミッド以外にも書きたいことがでてきた。素人の分析と主観が大きく入っている文章なので、世界史その~のナンバーには入れないことにする。

 エジプトは初期王朝時代からヌビアとの交易にファラオが直接関与し利益を確保していた。第2王朝時代には兵士に守られた商人が、遠く第2急湍付近のブヘンという土地まで送られていた。この頃、下ヌビアの人口が減少していたらしい。エジプト人の活動の結果人口が減少したのか、人口が減少したためエジプト人が介入できるようになったのかはわからない。第4王朝のカフラー王の時代にはブヘンに交易植民地が開かれ、金鉱や採石場を直接開発した。
 第5王朝時代に下ヌビアの人口が増え、ブヘンの植民地からエジプト人は撤退する。これがヌビア人がエジプト人に対抗できるようになったためか、エジプト人が現地人に任せることを選択したためかはわからない。ともかくこの変化によってエジプト最南端のエレファンティンの地位が上がった。エレファンティンは交易の窓口であり、国防の最前線でもあった。
 また西の砂漠にあるオアシスを結ぶ交易ルートが開かれた。黒檀や象牙、野生動物の皮革、香料などがヌビアからエジプトへと輸出された。
 第6王朝時代にはヌビアから遠く離れたシナイ半島やパレスティナでの軍事行動にヌビア人傭兵が参加していた。シナイ半島やパレスティナへ、あるいは海路で紅海沿岸から東アフリカへと軍事的な遠征を通じて交易路の安全確保を図っている。ヌビアへも幾度も交易や採掘を目的とする遠征隊が派遣されている。アフリカ内陸への交易ルートを拓くために、ヌビアへの介入を深めていく。エレファンティンの歴代知事はヌビアへの遠征隊を組織し、首長同士の争いに介入してヌビア支配を強めようとした。

 ここから先は全くの個人的見解になるのだけれど、このような積極的な対外政策が結果的に古王国の崩壊に繋がったのではないかと思える。ヌビアとの交易はエジプト南部のエレファンティンやヘラクレオポリスの知事の権限を強化した。絶対権力者であるファラオの元での中央集権国家と言っても、現代のようにそれぞれ中央に本部を持つ役所が、地方に支部を持つ形にはならない。地方の知事にはその地方の行政・司法・軍事・経済の権限が集中したはずだ。ヌビアへの軍事行動が南部の知事の主導で行われたのなら、それは知事の持つ軍事力を強めただろう。多くの産物がヌビアから中央へと移動すれば、知事を始めとする地方役人の経済力も増しただろう。それは正当な報酬取り分もあったろうし、不当な中抜きや賄賂といった形を取るものもあったろう。西アジアとの交易は中央の主導だったとしても、それは中央の官僚の権力を強化することになったろう。
 エジプト人にとって永遠の生命はファラオの特権であり、高級官僚たちは死後もファラオに仕えることで死後の生命にあずかれると考えられていた。しかし早くも第5王朝の時代には、地方の有力官僚は自分の任地に墓を持つようになっていた。中央に任命されるべき職務が世襲化されていたかもしれない。
 エジプト経済の拡大が、エジプトの多くの人々に恩恵をもたらした。しかし相対的にファラオの権力と権威は低下したようだ。社会構造の変化にあわせた制度改革で危機を乗り越えることは、神としてのファラオの権威に依存したエジプトの社会には無理だったのではないだろうか。必然的にエジプト古王国は崩壊した。これがここまで勉強してきた、今のところの僕の見解だ。

 国全体を豊かにするための政策が、結局は国家の構造を揺るがし不幸と混乱をもたらすことは、この後の世界の歴史でも何度も繰り返されることだ。だからといって進歩や努力を放棄して極端に保守的な社会に閉じ籠っても、時代の変化は否応なく押し寄せる。しかし現代人は古代エジプト人に比べて有利なところがある。過去数千年に渡って人類が経験してきた成功や失敗だ。社会は理系の学問の実験のように全く同じ状況を再現できるわけではない。過去の成功をトレースしても成功するとは限らない。それでも最善の解決策を見つける手がかりになるし、何より社会がどうなれば現在の問題が解決したのかのヴィジョンを見いだすことができる。
 うん、ずいぶんフワッとした話になってしまった。でも具体的な話をすると政治的な話に深入りし過ぎるので、場を改めたい。歴史解釈と政治的な立場の表明は切り離せない部分もある。このシリーズはだいぶ暴走ぎみではあるけれど、父から子へのメッセージとして一応12歳くらいから読めるようにというつもりで書いている。そしてあまり早くに僕の政治的思想(嗜好?)に影響されてほしくないと思っている。政治的な話は15歳からとか18歳からとか断り書きしたシリーズで書けたら良いけど、まずはこの世界史シリーズを完走することを考えないとね。
 世界史その~のナンバーに入れられないほど脱線した章はこれで終わりにして、次は第1中間期の話から再開することにするよ。

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