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2.1 生き残るD2C事業とは? | D2Cスタートアップの教科書

※「D2Cスタートアップの教科書の目次」に一連の記事をまとめています

前回の記事では、青汁王子が販売していた「すっきりフルーツ青汁」を題材に現代のD2C事業に応用できそうな知見について記載してみました。

この記事では、D2Cに興味はあるけどいまいち決めきれない人、アイデアがあるけどまだ初めていない人のために、生き残るD2C事業とは何か?についてまとめてみました。

普通の事業は生き残れない

まずは普通の商品を売る普通のPLを引いて考えてみます。

創業融資や自己資金などの一般的な手段で、立ち上げ時に2000万程度は集められます。
一般的な単品定期通販を始めたとしたら、資金2000万だと以下のようなPLになります。

各KPIは単品通販のあるあるな数値を使っていますが、月商500万の営業利益は単月50万程度で投資回収期間は約3年超となり、めちゃくちゃ渋い。
事業を伸ばそうにも追加の借り入れもほとんどできません。

またトレンドの変化もあるはずなので、おそらく回収し切れないでしょう。

さらに、物販事業はアプリやWebメディア等と違い、ユーザーから直接お金をもらい商品を渡すため、サポートやオペレーションの負荷がとても高い。

その負荷を耐えてまで、月35万円のビジネスオーナーを勤め続けるのはおそらく無理でしょう…

収益性が高ければ生き残れる

例えば商品の粗利率が25%程度の商品を販売したとしましょう。
するとPLはこんな感じになります。

月商1500万営利500万となります。

これだけリターンがあればオペレーションの負荷も耐えられますし、事業売却も視野に入れられます。

原価率が低いだけでなく、獲得コストが以上に低い商品や、顧客獲得コストの回収期間が短いなどでも同じことが言えます。

初期資金が確保できれば生き残れるが…

では初期資金が5000万円あるとしたらどうでしょうか?

収益性は同じなのに、2年で回収しきれて単月で売上2000万営利300万ほどの中規模な事業が作れます。

しかし、この初期資金5000万という数字は絶妙に多くて、創業時の融資や借り入れなどを駆使しても3000万程度止まりです。
残り2000万を自己資金で確保するか、エクイティで手に入れる必要があります。

2000万を自己資金で確保できるならば、現預金としては3000万以上はあるはず。普通に働いている人だとまず厳しい金額。

エクイティ投資を受ける場合は、基本的にイグジットが前提になるため、「2年後に月商2000万で安定して稼げます」なんてビジネスではダメで、「急成長」や「スケール感」が求められます。

スケール感はターゲットの市場規模の大きさが必要ですし、急成長させるには堂々巡って「収益性の高さ」が必要になります。

生き残るD2C事業の見つけ方

前述のように、生き残るには「収益性の高い商品を売る」が結局大事です。

ユーザーの課題を見つけ、解決する手段を商品化するという方法も一つはありますが、この方法をとると多くの場合長く使われはするものの、収益性が低いアイデアになりがちで、結局継続できない事業になりがちだと思っています。

ですので、あえて「収益性の高い状態」から逆算してアイデアを考えるのがおすすめです。

■商品原価率が低い

収益性の高い商品で最も手っ取り早い方法は、商品原価率が低いと言うことです。
たとえば「アパレル」「化粧品」「健康食品」あたりの通販あるある商材は原価率が低いことで有名です。

ただ競合も多く、すぐに価格競争になるので差別化は必須です。

ブランドは差別化の一つにはなりますが、それは認知度が一定以上大きくなって初めて有効になりますので、機能面でも他社との違いを十分に示せることが重要です。

そのため、化粧品や健康食品やアパレル等の原価率が低い分野で、差別化できる機能を見つけられれば生き残るD2Cになる可能性はあります。

■商品単価が高い

原価が高くても、それ以上に売値を高く設定できるものであれば生き残る可能性はあります。

アパレルやお酒など、商品カテゴリ内のボラティリティが高いジャンルはチャンスがありそうです。

また価格が安いものでも、高級品というポジションを取れるならばありかもしれません。

■獲得単価が低い

商品のプライシングで収益性を良くしようとすると、最終的にユーザーに負担が回ってくるだけなので、安定する規模に成長するまえに伸び悩む可能性があります。

ですので、獲得単価を下げられる商品というのが事業者にもユーザーにもハッピーなのかもしれません。

一昔前であればSEOをひたすらハックして獲得単価0円で集客することが出来ましたが、最近では資金力勝負になってしまったので割に合わない説もあります。

そのためハックする先はインスタなりtiktokなりYouTubeなりと別のメディアに移ってしますが、メディアハックの方法から考えて、そこで売れそうな商品は何か?という順番で考えるのがオススメです。

■回収期間が短い

獲得単価や原価率が高くても、新規獲得単価がペイするまでの期間が短いなら、急成長しやすくなります。

定期購入の回数を縛ったり、先に入金させたりと売り方を工夫して回収期間を短くする方法は色々ありますが、利便性が落ち悪評が広がる可能性もあります。

そのため、評判を広めにくいコンプレックス系商品だと相性がいいかもしれません。



以上です。

サイドビジネス的に一時的にD2Cをするのならば問題ないですが、本業として取り組もう・長期的なライフワークにしようと考えるなら、「収益性の高さ」が必須です。

収益性が高い状態を目指し、それが見つからないならば手を出さないのが懸命かもしれません。


次回は、D2C事業におけるKPIの置き方と、事業計画の引き方についてまとめてみたいと思います。

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