KING OF KINGS 2019 感想①

■1回戦第1試合 Hardy vs Authority〇

開幕は、実力のある若手同士の対決。初戦から2019年の主人公Authorityが出てくるという展開に会場もわきます。しかし、Authorityはエンジンが温まるまで時間がかかるタイプ。(このバトルのバース中にも「スロースターター」と自虐しています。)巧みにライミングを重ねますが、決定打となるような一撃を打てず、焦る様子が伝わります。一方Hardyは相当な舞台度胸。安定してHardyらしいクオリティの高いラップをし、会場を沸かします。勝負の転換点となったのはラスト4バース目。Hardyが「cimaもEroneもいねえなら俺が優勝で異論はねえな?」とレペゼンする関西の先輩を引き合いに出すと、Authorityが即座に「俺はcimaもeroneもいるステージから来た」とバイブスを込めてアンサーし、会場を盛り上げました。余談ですが、この後Authorityの口からふぁんくの名前が出てきて、梅田好きの自分としてはうれしかったです。

■1回戦第2試合 DDS vs SAM〇

春選抜の再選となったこのマッチアップ。ゆったりとしたビートにDDSのラップが抜群にあいます。バトルで決め手となるようなパンチラインはなくとも、思わず聞き入ってしまうようなラップで、音楽性の高さを感じさせます。一方でSAMは、いつものようにきっちりと小節の最後でライミングしながらも、かなりバイブスが高く、気合が入っている印象です。後攻で「今日のチャンプは俺しかいないぜ」とバイブス全開できっちりしめたSAMが勝利。

■1回戦第3試合 Randy Wati Sati vs 梵頭〇

面白い試合でした。youtubeにも公式でアップされているのでご覧になった方も多いと思いますが、ランディがなかなかいいキャラしてます笑 バトルが始まる前からステージ上でバチバチ。Randyはのっけの1バース目から梵頭のことを「サービスやくざ」よばわり。恐れを知らないイケイケの若手というキャラはいますが、ここまでやれるのは少ないんじゃないでしょうか。Randyが、自分をにらみつける梵頭の後ろ側に回って後頭部をdisるくだりが個人的にツボでした。それに対しても梵頭は「俺の背中にあこがれてんの?」と返して盛り上げるなど、やや勢い任せ気味のRandyと比べて、梵頭のバトル巧者っぷりが発揮されました。

■1回戦第4試合 スナフキン 〇vs ACE

人気mc同士の対決。やはりというべきか、踏みあいの対決になります。スナフキンが踏み、ACEが踏み返すという構図。ライムの応酬のなか、スナフキンの「ヒースレジャー、火付け役」「軽い言葉の分、罪が重い」などのラインが要所で決まっていましたが、ACEも安定して踏みまくるラップで食らいつき、1戦目はドロー。

延長はRAWAXXX vs がーどまんのビート。スナフキンが「俺はぶれない、魂は売れない」というとACEが「HIPHOPに魂も売れねえのか」的なアンサーを返し、盛り上げます。しかし、最終的にはスナフキンがラップスキルの高さで押し切り勝利しました。個人的には延長前延長後ともにかなり拮抗している印象で、先攻後攻やプロップスの差など、微妙な要素が勝敗を分けたように感じます。しかし改めてACE強いですね。

■1戦目第5試合 ムートン〇 vs CROWN-D

かなりノるのが難しいビートに感じましたが、さすがにムートン。余裕で乗りこなします。先行1バース目からかなり声を荒げ、ムートンの気合の入りっぷりが伺えます。それにしても、ムートンのラップはムートンにしかできませんね。CROWN-Dの1バース目に対して「わりい、なんもわかんねえ」で返す荒業にはほれぼれしました。 2バース目でムートンは「鎖でつながれたあいつ」と、逮捕された紅桜にふれ、ムートンの気合が入っていた理由が明らかになります。バックボーンやストーリーはMCバトルでは武器になりますが、ムートンがそれをやると鬼に金棒状態ですね。CROWN-Dも安定してかっこいいラップをしていましたが、ムートンの独壇場でした。

■1戦目第6試合 呂布カルマ 〇vs T-TANGG

個人的ベストバウトの一つです。お互いの良さが出た試合でした。人気mcであるタングに対して、「ラップが一般客レベル」と、完全に子ども扱いし、貫録を見せつける呂布。それに対し、タングも「ペニバンつけろ」「目に焼き付けろ」など攻撃性の高いライムで食らいつきます。3バース目で色の話題になり、タングが「いろんな色が混ざって黒になる」みたいな(ありがちな)話をすると、呂布は「いろんな色をごちゃごちゃまぜるなんてガキのやること」と芸大卒らしいアンサーを返し、勝利しました。終わってみれば「呂布強い」といういつもの話でしたが、タングもかなりよかったです。それにしても、タングはその攻撃性の高さゆえに、どうしてもヒールになってしまいますね。バトルに勝つためのバチバチなスタイルのせいで勝てない試合があるという、何とも皮肉な感じがします。個人的な感想になるんですけど、タングのラップは完成度が高すぎて台本感がぬぐえないですね…実際はネタじゃなく、即興の部分が多いのは間違いないんですが、完成度が高すぎてそう感じてしまいます。就活の面接で、やけにスラスラしゃべるやつを見ると、「頑張ってるけど、考えてきたんやろな」と妙に冷めた気持ちになるのと似てる気がします。僕は就活の面接もトップオブザヘッドで挑み、全落ちしました。

■1回戦第7試合 智大〇 vs Hiking Takase

こういう大人の色香を持った渋いMC同士のマッチアップは、KOKらしい感じがします。智大は全国的にもかなりの人気MCになりましたね。入場時の歓声が大きいです。バトル中も、相変わらず智大のワードセンスが光ります。言葉に艶がありますね。思考回路が読めない、ぶっ飛んだことを急に言い出すので笑ってしまいます。しっかりバイブスも高くて会場を沸かしています。Takaseも自分のラップを貫き、しっかりライムを落としていましたが、イマイチ沸いていませんでしたね。ダサい部分は一切なかったんですが、、

■1回戦第8試合 DANIEL aka 464underground vs RAWAXXX〇

満を持して登場した大本命RAWAXXX。対するはフリースタイル歴1年のDANIEL。1番プロップス差が大きいバトルだったんじゃないでしょうか。個人的にDANIELは好きなMCだったので期待していたんですが、自分の熱量をうまくコントロールできていない印象でした。完全即興故の事なのですが、、「フリースタイル歴1年」「最年長ルーキー」の部分を前面に出していましたが、その売り出し方も少し違うなあ…と歯がゆい思いをしながら見ていました。RAWAXXXは相変わらずの圧倒的スキル。無名のことなど歯牙にもかけないという余裕の態度でラップを続け、勝利しました。DANIELは折角プロップスを得るチャンスだったのに…と思い少し悔しかったです。初めて見るお客さんは初見のイメージがどうしても強くなってしまいますからね…最後の4小節諦めてたし…本当にかっこいいMCなので、これで埋もれてほしくないですね。 それにしても、終わってみれば本大会はRAWAXXXが主人公でしたね。呂布との再戦や、Authorityとの決勝まで運営の筋書き通りだったんじゃないかと思うくらい、よくできたトーナメントでしたね笑 自分は完全ランダムのトーナメントのほうが好きなんですが、他の大会との差別化という点では仕方ないのでしょうか。

■1回戦総評

終わってみれば大番狂わせもなく、順当な結果になりました。勝つべきMCが勝つという意味ではKOKらしいのかもしれません。やはりKOKの舞台はかなり独特です。アングラで渋いMCが映えるようになっています。UMB、戦極、凱旋、アドレナリンなど、今は様々なMCバトル大会がありますが、KOKでぶちかますのが一番難しいような気がします。スキルはあって当然ですし、表面的な熱さだけでは通用しません。

それにしても、トーナメントの組み方がやはり気になりますね。トーナメント作成の時点で、運営の「大いなる意思」が働いていて、ヘッズもそれに少なからず感化されているような感じがします。次はだれが主人公になるんかな~やっぱりAuthorityあたりですかね。そうなるとムートン、呂布あたりと再戦するように調整されて…なんて勘ぐってしまいます笑

疲れたのでベスト8以降は次のノートに。



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