KING OF KINGS 2019 感想②

■ベスト8 第1試合 SAM vs Authority〇

互いに人気MCとして鎬を削るライバルでありながら、マイメンでもある二人。先行のSAMはAuthorityに対して「お前がUMBをとった時、誰よりもうれしくて、誰よりも悔しくて」とリスペクトと勝利へのバイブスが入り混じった気持ちを表現します。それに対してAuthorityも「どんな称号を並べても、今日の王冠が1番重いんだよ」と、KOKに対する熱い気持ちをラップに載せました。UMB、凱旋、SPOTLIGHTなどバトル大会の王冠を総なめしているAuthorityだからこそアガるバースです。SAMはこの後も仲間であるAuthorityをリスペクトしながら、情熱をこめてラップを続けますが、いまいちオーディエンスには響いていない印象です。いつものようにクールにラップして、しっかりライムを落とすというスタイルのほうがわきやすいし、ヘッズからもそれを求められているような感じがしました。Authorityは「勝たなきゃ意味ねえ」とSAMのリスペクトを返し、最後は「勝つべき手段、豊洲ピットに集合イカれた拡声器集団」とバースを締め、会場の盛り上がりが最高潮に。まずはAuthorityがベスト4にコマを進めます。

■ベスト8 第2試合 スナフキン vs 梵頭〇

アングラな雰囲気が漂うこの対決。スナフキンはいつも通り安定感のあるラップをしますが、リスペクトするマイメンあいてに言うこともなく、攻めあぐねている様子。梵頭は、スナフキン相手に「大麻吸いてえ畜生」と舐達磨のサンプリングをするなど、おなじみの草ネタで着実に場を盛り上げ勝利しました。それにしてもスナフキン、「火付け役」で踏めるライム何個持ってるんだろう。

■ベスト8 第3試合 ムートン vs 呂布カルマ〇

人気MC同士のバチバチな対決。本大会のベストバウトの1つです。ムートンは相変わらず紅桜の名前を出し、「負けられない理由がある」と勝利への闘志をむき出しにします。熱いムートンと対峙しても呂布は冷静。「ほかのバトルMCと何も変わらなくなっちまった」とdis。さらに、「中身が空っぽだから紅桜からもらった何かを詰め込んでる」と、ムートンの言葉を拾いながら痛烈にdisります。 反撃に出るムートンは「手が震えてるぜ」と、どこかできいたようなdisを返します。客席からは見えないので少し汚い感じもしますが、ムートンの勝利への執念が伺えました。この試合で呂布は「いつまでバトルに出てるんだ」的なことを言われるんですが、呂布も同じことばかり言われて大変だなと思います。呂布カルマはほかにあまりdisる部分もないし、またそう言いたくなる他のMCの気持ちもわかるんですが、あまり同じ内容のdisが多いとみていて辛いですね。珍しくバイブス全開だったムートンがかなりかっこよく見えましたが、前王者呂布カルマが貫録を見せ勝利。好みにより勝敗が分かれるタイプのバトルだったと思います。

■ベスト8第4試合 RAWAXXX〇 vs 智大

いわずとしれた宮崎対決。両MCとも言葉選びが独特で、聞いてて楽しいですね。RAWAXXXはリスペクトする智大が相手、「お前のDNAは天才だ。俺は右脳でお前を殺すMC」と敬意をこめながらも刺しに行きます。対して、智大はRAWAXXXに対し「力みすぎて文句ばっか」「ライブに成長がない」と、とらえどころのない話をすることが多い智大には珍しく具体的なdisをします。(リアルな先輩の説教感がありました)話の内容は拮抗していましたが、リズムキープなど、ラップの基本性能的な部分でRAWAXXXが圧倒していました。全然関係ないですけど、智大のマイクの持ち方かっこいいですね。智大以外がやるとダサくなりそうですが

■ベスト4第1試合 Authority〇 vs 梵頭

いよいよベスト4に入ります。KOKではよくあることですが、ビートがクソ難しそうでした。やはりAuthorityは強いですね。梵頭が自分の名前がa.k.a 鷲 だと明かすと、鳥の名前を使いライミングを重ね、即興のスキルを見せつけます。さらに、梵頭に対し「あんたは深い煙を吸ってる。俺は深い言葉を吐いてる。」とパンチラインを打ち込み、一気に会場の空気をつかんで勝利しました。梵頭もなかなか面白いことを言ってたんですが、、、ていうかa.k.a鷲だったんですね。正直そこばかりが記憶に残りました。あとAuthorityに対し「若い血ってやつはうまいらしいな」といよいよ化物じみた事を言っていて笑ってしまいました。

■ベスト4第2試合 呂布カルマ vs RAWAXXX〇

何回戦っているんだ?と思うほどの因縁の対決です。恐らく今のバトルシーンの最強格にあたる2人なので仕方ないとは思いますが。延長前は互いに腹を探りあっている印象。(戦いすぎて言うことがなくなってるだけかもしれませんが)RAWAXXXが「金もプロップスもあるが、何かが足りない」とdisると「何が足りないかは俺が一番わかってるし、俺にないものはお前にもない」と呂布は完璧にアンサー。RAWAXXXも一貫して不穏な雰囲気のビートで完璧なリズムキープをし、勝負は延長へ。

延長戦になると、舌戦がヒートアップ。RAWAXXXが「今の地位を守るのに必死」とdisると呂布も「弱い者いじめなのに2回もやらすなんて趣味が悪いね」とお客さんに放ち、沸かします。RAWAXXXはいつまでもバトルの現場にいるんじゃなく、ネクストステージに行けよ的なことを言うのですが、呂布は「この椅子(王座)座り心地いいからいつまでも座る」とユーモラスに返します。それに対してもRAWAXXX「お前の椅子なんて燃やして新しい椅子に座る」と、こちらも「らしい」ラップで負けていません。どちらも一歩も退かず、正面からぶつかり合いましたが結果はRAWAXXXの勝利。終わってみればこの因縁の一戦も「RAWAXXX優勝」というストーリーに必要な儀式だったように感じます。この対決の結果が出来レースだったというわけではなく、本バトルを通してRAWAXXXがKOK優勝という王冠をとる資格を得たように見えました。

■決勝戦 RAWAXXX〇 vs Authority

KOK本線決勝にふさわしいこのカード。ここまでくると語るのが野暮なレベルですね。延長前、延長後含めいくつもパンチラインがでました。特に延長後は両者のギアが一段上がっていたように感じます。RAWAXXXは一貫して「個性」という部分にこだわります。R指定の名前も引き合いに出し、Authorityに「個性がない」とdisり、「色がねえからカラフルに着飾るんだろ?」(この日Authorityは青とオレンジの派手な服を着ていました)というdisが決まります。Authorityも負けずに「あんたが色眼鏡欠けてるからそう見えるんだろ」と返しますが、この時のRAWAXXXはうまさだけではない気迫や凄味が感じられ、会場の空気をつかんでいます。「HIPHOPって勘違いされがちだ。フリーダムなんてハナから無ぇのさ」など、RAWAXXXだからこそ言える、武骨ながら力強いメッセージはRAWの気迫も乗り、会場をぶち上げました。最後は「マイク1本で2020、頂点をとる」とバッチリ締め、RAWAXXXの勝利。言葉にするとなんでもない、飾らないまっすぐなラストバースでしたが、にもかかわらず会場が一斉に沸いたのが印象的です。

総評

終わってみればRAWAXXXのための大会だったように感じます。RAWAXXXはKOK2017,18で2年連続の準優勝。何かと報われないRAWAXXXの優勝をヘッズも待ち望んでいたように思います。AuthorityがRAWAXXXを「まっすぐにひねくれてる」っと評していましたが、ぴったりな言葉ですね。いろいろあるけど、人を熱くさせ、応援させてしまう何かがRAWAXXXにあったと思います。ぶっちゃけ呂布戦も話の内容だけをとりだしてディベートとしてみると呂布に分があるように思えますが、己のスタイルを貫くRAWAXXXの姿は正しさなんてものを通り越した次元で心を熱くさせてくれました。ひたすら不器用で、煙たがられながらも、皆に待ち望まれたダークヒーロー。最後のウイニングラップでのバース、「300万、これでやり直せるよありがとう」というひねくれものの彼のまっすぐな言葉には目頭が熱くなりました。

前の記事でも書きましたが、KOKという舞台は難しいですね。小手先の技術では通用しない、KOKという大会のハードルの高さを感じました。あと、結構言われてることだと思うんですけど、MCの選抜もう少し何とかならないんですかね?王の中の王を決めるというコンセプトが崩れかけているような気が…正直vote枠とか設けてもいいんじゃないかなと感じます。

いろいろ言いましたけど、2019のKOKなかなか面白かったです。今ならitunesで格安でレンタルできるので、自粛で暇している方はぜひ。






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