令和5年司法試験 民事訴訟法 追記(評価)


はじめに

はじめまして。
司法試験を受け終わったので、noteを始めてみました。
はじめに私の背景情報から。
10年ほど前に文学部を卒業し、法律とうっすら関係する調査系のお仕事をしていました。2児の父親(3歳と1歳)です。
仕事と育児・家事その他の社会活動の傍ら、2021年4月に司法試験に向けた勉強を開始、翌年予備試験に合格し、今年、司法試験初受験となります。
予備校などには特に再現答案債務を負っていないので、思い付きで再現答案を書いてみます。最初は、予備論文で散々だった、民事訴訟法から。
(ほかになにか書くべきことがあれば、Twitterでお知らせください)

(11/23追記)
成績通知がきました。民事第3問はAでした。
民事系はBAAなのに200点を超えていてAAAの人より高かったりしたので、商法、民訴は相対的に高かったはず。

再現答案

第一 設問1
1 証拠能力が否定される法的根拠と基準
(1)民事訴訟における証拠については、刑事訴訟における令状主義(憲法35条)のような厳格な規制は及ぼされておらず、その提出は原則として私的自治の原則にゆだねられていると考えられる。
 もっとも、証拠の収集方法そのものが犯罪を構成し、あるいは重要な利益に対する強度の侵害を伴うなど、その証拠を証拠として採用することが著しく信義に反するというような例外的な場合には証拠能力を否定すべきである。
(2)そこで証拠能力を否定する根拠としては、訴訟上の信義則(民事訴訟法(以下法令名省略)2条)が挙げられる。
(3)そして、重要な利益に対する強度の侵害に当たるかは、侵害される権利の内容、証拠収集の方法、態様、当該証拠収集方法を用いる必要性等を衡量して決すべきである。
2 本件文書の証拠能力
(1)本件文書は、Xの自宅において、机上に閉じた状態で置いたあったノートパソコン中から、収集された電子メールの一部である。私人間の通信は、特に高いプライバシー上の要保護性を有する(憲法21条2項後段参照)。そして、その収集の方法、態様は、当該ノートパソコン上の電子メールをすべて保存した上で、その内容を確認するというもので、無関係なメールをも対象とするものであって、例えば、机上に開いた状態で置いてあったノートなどを写真で撮影した、というような場合と比べて強度の侵害を伴うものであるといえる。
(2)一方、本件文書は、XY間の契約の事実関係を証明するためにもちいられるものであって、他の証拠を用意することが困難であるということはなく、当該手段に訴える必要性は乏しい。
(3)よって、本件文書は、重要な利益に対する強度の侵害を伴う方法によって収集されたものといえ、これを証拠として採用することは信義則に反する。
 以上より、本件文書は証拠能力を認められない。
第2 設問2
1 Xが控訴を提起し、Y及びZは控訴も附帯控訴もしていないから、第一審判決の取消し及び変更はXの申立ての範囲のみで行われ(304条。不利益変更禁止原則)、Xの不利益となる判決をすべきとの心証が形成された場合には、控訴は棄却されることになる。以下これを前提に検討する。
2 甲債権が弁済に所滅したとの判断に至った場合
(1)まず、相殺の抗弁に先立ち他の抗弁の成立が検討されるべきである。相殺に供される債権は、本その遡求債権に付着したものではなく、相殺の抗弁が認められることは一部敗訴としての性格を有するからである。
(2)仮に甲債権が弁済によって消滅したとの結論に達した場合には、甲債権に対する乙債権による相殺の抗弁に先立ち、弁済の抗弁が検討されることになる。そうすると、Xの請求は棄却されることとなる上、甲債権の不存在には既判力が生じ、乙債権の不存在には既判力が生じないことになる(114条2項)。
 この結果は、Xにとり、第一審判決よりも不利益に当たる。よって、控訴裁判所は控訴を棄却すべきである。
3 甲債権と乙債権はいずれも弁済による消滅はしていないが丙債権の存在は認められないとの判断に至った場合
(1)この場合、Xの請求は棄却され、甲債権と乙債権の不存在に既判力が生じることになる。
(2)これは第一審判決よりもXに不利益な判断である。よって控訴裁判所は控訴を棄却すべきである。
4甲債権は弁済による消滅はしていないが、乙債権は弁済による消滅したという判断に至った場合
(1)この場合、乙債権による相殺の抗弁は認められず、甲債権の存在が認められることになるから、Xの請求は認められる。
(2)一方、乙債権が存在しない以上、乙債権に対する丙債権による訴訟外における相殺の再抗弁は判断されないことになり、丙債権の不存在について既判力が生じる余地はなくなる。
(3)上記の判断は、第一審判決よりもXに有利といえる。したがって、控訴裁判所は、判決理由を変更し、改めて請求認容の判決をすべきである。
第3 設問3
1 課題1
(1)既判力
 補助参加人に既判力が及ぶかが問題となる(115条1項参照)。
 補助参加人は、「当事者として」訴訟に参加するものではない(47条1項参照)。また、補助参加人の訴訟行為は被参加人の訴訟行為と抵触する場合はその効力を生じない(45条2項)のであって、補助参加人が可能な訴訟行為は制限されていると言える。自由な主張立証に対する自己責任としての性質を有する既判力を補助参加人に及ぼすことは酷であるといえる。
 したがって、補助参加人は既判力の拡張を受けない。
(2)参加的効力
 では、Zに参加的効力(46条)は及ぶか。
 本件では、Zは免除の事実及び弁済の事実を主張して自身の証人尋問の申出をしたにもかかわらず、Yはその申出を撤回している。Zの主張する事実が認められた場合には、Xの請求が棄却される可能性があった以上、「被参加人が補助参加人の訴訟行為を妨げたとき」(同条3号)にあたる。
 したがって、本件では参加的効力は生じない。
(3)信義則
 訴訟に参加し訴訟行為を行った場合には、信義則(2条)上、後訴において、その内容を争えないことがあり得る。
 しかし、本件では、上記の通り、Zの主張立証活動は制約されていたのであり、その主張を尽くしたとは言えないから、Zは後訴において信義則上前訴確定判決の拘束力を受けるとも言えない。
2 課題2
 ZはYに対し、参加的効力を援用できるか。上記の通り、本件では46条各号事由が認められるところ、Yがこれを主張して参加的効力の発生を否定できるかが問題となる。
 参加的効力は、敗訴当事者間の責任分担としての意義を有し、その効力は判決理由中の判断にまで及ぶと解される。
 そうすると、被参加人が補助参加人の訴訟行為を妨害して、敗訴した場合に、これをもって参加的効力の発生を否定するのは著しく信義に反する。よって、被参加人の行為によって46条各号事由が生じた場合には、被参加人の側からこれを援用することはできないと考えるべきである。
 本問でも、Yは46条3号の事由の存在を主張できず、参加的効力が作用すると考える。

(大体こんな感じだっただろうか。キーボードで適当に書くと意外と短時間で済んでしまった)

感想

民訴は予備でも点数がとれなかった科目で、一応その後力を入れていたものの、難しくて差がつかないのは歓迎ですね。
あらためて書き出してみると、基本的な事項の理解の甘さが目立ちますし、事実を引用できていないので、あまり点数はこないのでしょう。

設問1

(現場での思考)
民訴で違法収集証拠の排除がでるとは。しかし、アガルートの論証集には何か書いてあったような(書いてあったことくらいは覚えている)。
普通に考えて、刑事訴訟の場合に比してより例外的な場合にのみ、証拠排除が認められるということになるのだろうな。犯罪ではない、って書いてあるから、犯罪を構成するような場合はあたるのかな。自由心証主義から行くと247条を根拠にするのは難しそうだから、信義則で行っとくか。あとは考慮できそうな事項を判断要素に持ってきて、と。
(反省点・感想)
手帳の無断コピーが問題になった名古屋高決昭56.2.18あたりが下敷きだろうか。机上に残した手帳くらいであればまだしも、というような対比をしたのは(偶然の要素が大きいとはいえ)よかったかもしれない。
一方、必要性については完全に問題文見落としており、大きな減点対象だろう。犯罪を構成するような場合については338条1項5号を参照すべきだった。

設問2

(現場での思考)
不利益変更禁止原則の話っぽい、が、何をそんなに論じればよいのだろうか。1行とかで終わったらまずいんだよね。既判力の生じる範囲の比較徒過するか。訴訟外の相殺の再抗弁に供された債権ってどうなるんや?(相殺の再抗弁だめ、という理解だった者)
(反省点・感想)
有利・不利を論じている割に第一審判決がどのようなもので、どの範囲に既判力が生じるのかが明確にされていない。移審の範囲などが明示的に論じられていない。
訴訟外の相殺の再抗弁についても、114条2項が適用されるというのが一般的な考え方らしい(和田吉弘『基礎からわかる民事訴訟法』商事法務, 2012, p.457。なお筆者は反対説)ので、(ウ)の部分についてもあながち間違っているというわけではないように思われるが、いずれにしても説明不足が否めない。

設問3

(現場での思考)
 なんだっけなぁ、これ。既判力?は補助参加人だめだよね、参加的効力、は敗訴当事者間じゃなかったっけ…信義則、もあるけどこの流れだとダメか。
 参加的効力、課題1で×にしたから、それを否定できるか、ってあたりを論じとくか…
(反省点)
課題1については反射効とか書くべき説も有力でしたね。全般的に補助参加をした場合に生じる効力について勉強不足が目立ってしまった結果。
課題2もそもそも通常被参加人が援用する性質のところ、という誘導を落としてしまっている。

需要があれば(いや、ない)、ほかの科目もやってみたいと思います。ご意見等歓迎です。(有料にしないとコメント機能が使えないことに気が付いた)
質問箱的なものもあります。
https://querie.me/user/bibliolaw1

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