予備試験合格者の司法試験合格率が高いワケ

予備試験合格者の司法試験合格率は上昇傾向にあり、令和4年にはタイ受験者数比の合格率は97.5%の上りました。
両試験を受けてみた上で、(数少ない予備合格司法不合格者となりそうな私の目から)なぜ予備試験合格者の司法試験合格率が高いのかを考えてみたいと思います。
司法試験の勉強の上でも役に立つと良いなと思います。
(再現答案は心が折れたので希望があれば、また)

両試験の難易度

前提として両試験の難易度を確認します。
まず、2つの試験ともに「受からない試験」ではない、というのが私の印象です。
もちろん、学習範囲は広く、大変な試験ですが、何を勉強すればよいか、ということは明確になり、そのための教材も揃っています。たとえるなら、昔の司法試験を囲碁や将棋のプロになるようなものとすれば、今の司法試験は攻略本の出ているRPGゲームをクリアするようなもの、という感じだと思います。

では、予備試験と司法試験を比べてみるとどうでしょうか。
対受験者比の合格率ベースで見ると予備試験は受験者比の3.6%、司法試験では45.5%となっており(いずれも令和4年)、予備試験の方がかなり難しい試験のように思われているのではないでしょうか。

しかし、実感として、予備試験は試験自体が司法試験に比して難しいわけではありません。
たしかに、短答は司法試験は三科目のみであるのに対し、予備試験は七科目プラス一般教養がありますし、論文でも実務科目があるなど特殊な対応が必要だとは思います。
しかし、論文で問われている内容を見ると、予備試験の方がかなり素直な(有り体に言うと、法律構成を間違えず、要件を検討でき、問題となる箇所について判例の規範が書けてなんかしらの当てはめができれば足りるような)ものが多いのに対し、司法試験では、事案が複雑化・長文化して問題の把握が難しくなるとともに判例の射程、学説などを問うものがあり、(実際できるかは別にして)より深い理解が必要となるように思われます。
 過去問を解いていても、こんなのまともに解けるかな、というのが正直なところであり、予備試験に合格したなら当然に司法試験も、とは感じませんでした。(結局相対評価なので、というところはあるのですが)


予備試験合格者の合格率はなぜ高いか

では、なぜ、予備試験合格者の司法試験合格率は(法科大学院修了者に比して)高いのでしょうか。

(1)基本知識の網羅度の高さ

予備試験では、短答が法律系7科目すべてに課されるため、論文頻出ではない知識、いわゆる短答プロパーの知識についても、7科目分学習する必要があります。そうすると、短答に出るような基本的な知識について、より幅広く学習することになるわけです。
短答プロパー、などと言われますが、論文対策として勉強するにはうまみが少ないとしても、論文で出題されないわけではありません。そのようなとき、短答問題としてでも頭を通しておくと、条文(や関連の判例)を思い出すことができる、というわけです。それだけでも、(論文知識を中心に勉強している)周りの受験生と比して有利に働く、というわけです。

(2)要件事実や構成要件などの基本の徹底

予備試験の口述試験では、民事系では訴訟物、要件事実、刑事系では犯罪の構成要件(やその定義)が頻出です。
論文を突破すると、9割以上が口述にも合格するのですが、それだけに落ちたくない気持ちが強くなります。そこで、要件事実、構成要件の定義を必死で覚えることになります。論文に受かると思っていなかったので、合格発表から口述の当日までは司法試験受験の中で一番勉強したと思います。
直近の司法試験の出題傾向とはずれますが、要件事実の理解は民法や民事訴訟法の問題を解く際の、構成要件は刑法の問題を解く際の基礎となるものですので、ここをみっちりやっていることは良い方向に作用するものと思われます。
論文までにやっておけという話かもしれませんが、口述後、司法試験論文の勉強を始めたときに、問題を解く感覚が変わったように思います。

(3)選抜効果

それをいってもおしまいよ、というところかもしれませんが、結局のところ、予備試験において既に選抜されている、というのは大きなファクターと思われます。特に、予備試験合格者のボリューム層(3/4くらい)は、学部生・法科大学院生でしたから、予備試験に合格するとしないとにかかわらず、結局司法試験を受ける人が多いわけです。そうすると、ある時点において、勉強が進んでいる(=予備試験で高得点をとれる)人が、同じだけの期間勉強すれば、司法試験にも合格する確率が高いだろう、ということです。

司法試験受験までの習熟度

便宜図示すると、上図のような感じでしょうか。
予備試験に合格な習熟度を80,司法試験では100とします。
2022年7月時点で80を超えている人は、同年の予備試験に合格します(誤差はあります)。そうすると、そのような人は、2023年7月時点で司法試験の合格に必要な100に到達する可能性が高いわけです(勉強していれば)。
一方、80に到達するのにより時間が必要な人や遅れて勉強を開始した人は、100に到達するまでにもより時間がかかる、ということになります。
一方、社会人受験生などでは、これが当てはまらない(時間が確保できず習熟度が上がらない、予備合格までに時間がかかっているパターンでは上記が妥当しない)ことがあり得るでしょう。

なぜこんな記事を書いたか

一銭の得にもならないのに、なぜこのような記事を書いたか。
上に書いた理由の真逆を行ってしまったという反省があるからです。
私の場合、そもそも短答を一般教養でカバーし、論文も法律知識をないがしろにしつつ受かった部分があります。そして、予備試験後も、知識面よりも、過去問を中心とした学習に振り切ってしまいました。
そうすると、上記のような基礎知識の徹底などのメリットを生かせないわけです。
後進の方々には、ぜひ私を他山の石として、しっかりと学習をしていただきたいと思い、このようなエントリーを書いてみたわけです。
また、法科大学院から司法試験を目指される方々にも、予備試験受験生から見た予備試験を通じた学習のメリットというのはこういったものなのだ、というのを見ていただいて、お役立ていただければと思います。

他にどんなアドバンテージがあるか、お考えを伺えたらうれしいです。
https://querie.me/user/bibliolaw1

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