令和5年司法試験 刑事訴訟法 追記(評価)

こりずに、再現答案をあげてみようと思います。
今回は刑事訴訟法(刑事系第2問)です。

(11/23 追記)
刑事系第二問の評価はBでした。刑事系はBBで百点ちょっとだったので高め〜標準的なBではないでしょうか。必要性やら相当性やらの検討全くしてなくてこれだからな…

再現答案

第1 設問1
1 捜査1
(1)Pは、アパート敷地内のごみ置き場において、特徴を確認しておいたゴミ袋の任意提出を受けているところ、これは適法に「領置」(刑事訴訟法(以下法令名省略)221条)されたものといえるか。
(2)アパート敷地内のごみ置き場に置かれたごみ袋は、公道上のごみ集積場に置かれたものとは異なり、その占有が管理人(大家)に移転すると考えられる。そして、アパート敷地は、「住居」に準ずる私的領域であるから(憲法35条参照)直ちにこれに立ち入ってゴミ袋を「遺留した物」として領置することはできない。
(3)では、管理人の承諾がある場合には、これに立ち入ることが許されるか。真意から出た承諾がある場合には、「強制」(197条1項ただし書)は観念できない。そして、そして、ごみ集積場に廃棄するごみを一時留め置く場であるごみ置き場は、プライバシーの要請が低く、家宅捜索の場合のようにおよそ真意からの承諾が考えられないような場合にも当たらない。したがって、場所の管理者から承諾を得ればごみ置き場に立ち入ることも可能である。
 本件では、あらかじめ居住者は、ごみ置き場にごみを捨てること、これを大家が分別して公道上のごみ集積場に搬出することについて合意しているから、大家はごみの占有を取得した「保管者」に当たると言える。そして、本件のごみ袋は、「保管者」が「任意に提出した物」であるから、適法に領置できる。
2 捜査2
(1)Pが領置した容器はプライバシー保護の要請の低い公道上に投棄されていた容器であって「遺留した物」に当たるから、適法に領置できるようにも思われる。
(2)もっとも、当該容器は、甲が食事の提供を受けていることを認識したうえで、そのDNA型を採取するため、あらかじめ容器にマークを付して食事を提供したものである。そして、その容器を回収してDNA型を鑑定するための唾液を採取したのだから、これらの行為を一連一体のものと見た場合、無令状で行われた「強制の処分」(197条1項ただし書)に当たり、違法なのではないか。
(3)「強制の処分」の意義が明らかでなく問題となる。科学的捜査手法が発展した現代では、有形力を伴わなくても重大な権利を侵害する場合があり得るから、有形力の行使を基準とするのは適切ではない。一方、強制の処分は、強制処分法定主義、令状主義(憲法35条)の両面から強力な規制を受けるべきものに限定されるべきである。そして、承諾がある場合には強制を観念できない。
 そこで「強制の処分」とは、相手方の明示又は黙示の意思に反して、その重要な権利利益を実質的に制約侵害する処分を言うと解する。
(4)DNA型は個人を特定するものであり、場合によっては病気等の身体的な問題の把握にもつながり得る、プライバシー関連情報の中でも特に要保護性の高いものである。そして、これを無断で採取鑑定することは、重要な権利利益の実質的な制約侵害に当たる。また、一般的に相手方はその意図をしれば、そのような処分を受けることを拒否するものと考えられるから、少なくとも黙示の意思に反すると言える。
(5)よって、Pによる、マーク付き容器による食事の提供、当該容器の回収、唾液の採取、DNA型の鑑定という一連の行為は、「強制の処分」にあたる。具体的には、身体から発出される物を採取する処分だから、身体に対する捜索差押令状(218条1項)を要すると考える。本件では、当該令状なくして処分が行われているから違法である。
第2 設問2
1 実況見分調書①
(1)実況見分調書①は、「公判期日における供述に代え」た「書面」(320条1項)であって、証拠能力を認められないのではないか。
(2)もっとも、伝聞法則の趣旨は、供述証拠は、知覚・記憶・表現・叙述の過程で誤りが入り込みやすいため、反対尋問等によってこれをチェックする機会を確保する必要がある点にある。そうだとすれば、供述内容の真実性の立証に用いられない場合には、これを証拠として排除する必要はない。供述内容の真実性立証に用いられるかは、要証事実との関係で相関的に決せられる。
(3)実況見分調書①全体
 実況見分調書①全体の立証趣旨は、「甲がV方の施錠された玄関ドアの錠を開けることが可能であったこと」である。そして、検察の立証趣旨がおよそ不合理であるといった事情がない限り、これを要証事実と見るべきである。上記立証趣旨が証明されれば、甲がV方に侵入可能であったことが推認でき、そこから甲が犯人であり得ることが推認できるから、これは要証事実と認められる。そして、実況見分調書①全体については、要証事実との関係でその内容の真実性立証に用いられるといえるから、伝聞証拠に当たる。
 もっとも、実況見分調書については、321条3項の伝聞例外が適用可能であると考える。「検証」と実況見分では、強制処分か否かの違いしかなく、泉温化が適式に作成した文書の信頼性という趣旨が当てはまるからである。よって、作成者であるQが「公判期日において証人として尋問を受け、その真正に作成されたものであることを供述」した場合には、証拠能力を認められる。
(4)甲が開錠している状況を連続で撮影した写真部分
 当該部分は、甲の動作による供述を録取したものとみることができる。もっとも、甲が実際にV方にあったのと同型の写真を開けて見せている連続写真の存在そのものから、甲がV方の錠を開けることが可能であったことが推認できる。したがって、その供述内容の真実性が問題となるものではないから、非伝聞証拠である。写真部分については証拠能力を認められる。
(5)当該写真の下部に付された説明中の甲の発言部分
 このようにすると錠を開けることができるといった甲の発言は、上記の写真と相まって、実際にそのような発言をしたことそのものから、甲がそのような動作を行い、実際に鍵が開いたことを推認できるのであって、供述内容の真実性が問題とならない。したがって、当該部分についても、非伝聞証拠として、証拠能力を認められる。
2 実況見分調書②
(1)実況見分調書全体
 実況見分調書②の要証事実は「被害再現状況」である。そして、その内容は、検察庁において、Vの説明内容を動作によって再現したものであるから、その内容の真実性が問題となると言える。
 実況見分調書全体については、実況見分調書①と同様に321条3項の伝聞例外が認められるから、作成者Rが「公判期日において証人として尋問を受け、その真正に作成されたものであることを供述」した場合には、証拠能力を認められる。
(2)再現写真部分
 上記の通り、当該写真は、Vの供述を動作によって再現したものであるから、動作による供述に当たる。そして、これが実際に犯行の状況を示すかどうかが問題となるから、要証事実との関係でその内容の真実性が問題となると言える。
 そこで、検察官Rの面前での供述を録取した書面(321条1項3号)として伝聞例外が認められないか。まず、写真については、機械的光学的に作成され、録取過程の正確性は担保されているから、署名・押印は不要と解する。
 Vは「死亡」しており、供述することができない。
 よって、321条1項3号の伝聞例外が認められ、当該写真部分については、証拠能力を認められる。
(3)再現写真の下の説明部分について
 上記写真下部に付された「犯人は、右手に持っていたゴルフクラブで私の左側頭部を殴りました」との記載については、Vの供述を録取したものと考えられる。そして、この供述は、実際に犯人がどのような行為を行ったかを述べるもので、要証事実との関係でその真実性が問題となるから、伝聞証拠に当たる。そこで、321条1項3号の例外が認められないか問題となるが、Vの署名・押印がない以上、これは認められない。
以上

感想等

その場では悪くないのでは、くらいに思っていましたが、あらためて再現してみるとひどい出来ですね。
ぎりぎり耐えているとよいのですが。
一番文字数を書いたように記憶していますが、新しく買ったタイムライン(ボールペン)のおかげか、予備の時のように手が動かなくなることはありませんでした。タイムライン良いです。

設問1


(現場での思考)
領置か…過去問でもあったな、またごみ集積場か、公道じゃないからダメなのでは…と思ったけど大家の承諾があるのか、何が問題になるのかな。捜査2は…こっちも遺留物?普通に認められそうだけど。
1の方は、大家に占有が移っているのか、承諾があれば問題ないのか(承諾家宅捜索の否定との対比)あたりでいくか、2の方は全体としてみると強制捜査の潜脱っぽさもあるな。令状の種類は…なんだろうなぁ。
(感想)
せめて任意捜査の比例性の話は書いておくべきでした。事実1のあたりの事実がほとんど使えておらず(罪質等)大きな減点は免れないでしょうね(1の方は、東京高判令和3.3.23あたり?)。2の方は、東京高判H28.8.23あたりが下敷きでしょうか。だとすると強制捜査を論じるのも筋としては悪くないか。
設問2
(現場での思考)
実況見分調書、伝聞か。これも類題はあったような。322の例外使うパターンはまだ出てないからそれかな…いやしかし、非伝聞で処理できないかな。②の方は、うーん再現状況、写真まではいけるとして、録取部分がなぁ。
(感想)
今になってもよくわかってませんね。




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