8月28日 苦しい夏の日を生きる詩

夏だった空


ひどくあつい夜だった
夜霧の降りる街を見下ろし
空にかかる靄を眺めて
満月
しっとりとして
鼻に清涼で湿った夏が残った

私は苦しかった
閉じ込められた室内での優柔不断な心の機微に
ずっと囚われていたようで

雨に濡れる雨どいの黴の臭いとともに腐った
心も濡れて黴が生えてた

けれどもやはり私は愛している
優柔不断で不安定で勇気のない踏み出せない私は
それでも甘い愛の中に溺れていたい

悩みを愛してしまうのはなかなかに罪だよ
だから私は悩みではなくその下を見よう
苦しみをどうか呑みこんで

耐えきれないというのならこの蒸し暑い季節から踏み出そう
更に清涼で簡潔で物事が移り行く
秋の季節へ
思うに私は今踏み出せず夏だった空を眺めている
たとえ今が三日月だとしても
私の眼は満月を眺めている
踏み出した先の景色なんか今はみえないのに


冷たい杭


脊髄と脳髄に楔が打ち込まれている
冷たい鉄の杭だ
無論痛く
恐ろしい
呼吸は浅く
腹は痛い
おれは罪人か?
そう心でつぶやく度に杭は打ち込まれていくのだ
無機質で冷たい塊が
頭の後ろ
背中の中枢から
じわりじわりと
にじり寄って
おれの心を
おれの胃を
おれの腸を
おれの心臓を
おれの脳を
食らいつくしてくるんだ


親愛なる私へ
そう苦しい時は
眼をゆっくり瞑るのだ
全ては君の思うまま
この見えているもの全ては
君の幻想に過ぎないのだから
笑顔の下の怒りや
苦しさの下の感情など
君の幻視に過ぎないのだから
人を想うことのできることを
突き詰めすぎてしまったら
幻視が表れてしまうこともある
人を想うことは
苦い嫉妬と表裏一体
優しさは酷い苦しみを背負うこと
ならば君は
本当に優しい人と成れたのではないか
罪人だというのならば
それでいい
自分の背負うものが今
見えている少ない者の一人だ
たとえ想いが悟られずとも
君は満足することを私は知っている
温かい援けの手は今君の下にあり
君の甘い秘匿が君を刺そうとも
歩むことを止めないで



そよぐ風 おれの湿気を 消してくれ 願い叶わず 想う月夜


鉄杭の 刺さる内臓 冷たくて 甘い記憶を 創る夜半


月なんかない月夜


消毒液があるいているような男


カッコつけ 空回って ダサくありたい


やることやれてもやるせない日


蒸し暑さ 少女漫画を 買い忘れ ゲームも動かぬ 霧の夜

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?