AV新法並びに困難女性支援法を読んでみようの巻

前段とあらまし

色々と物議を醸し出している「AV出演被害防止・救済法」。
俗に「AV新法」と呼ばれているこの法律だが、ツイッタランドを見ると、「禁酒法の再現」「ジェンダー利権」「新手の貧困ビジネス」「反社のシノギのサポート」などと酷評の嵐である。

個人的にはさしてその分野には興味はない。
だが、その内容から成立過程、更には法案成立後の関わった人間のアレっぷりを見るにつけ、酷評がまだマシなんじゃないかと思い、改めて読んでみる事にした。

これはAV新法可決前後から反対の立場を表明しているAV女優・月島さくらさんのツイートである。
本来なら当事者としてこの新法で保護される立場の方ですから賛成するかと思いきや、ずーっと反対の立場を貫いておられる。
他にも紗倉まなさんや稲森美優さんといった、有名どころの女優さんも反対の意見を述べられているようだ。

その彼女の文面を見るに、AV出演被害防止・救済法の制定に関わった団体・個人に対する不信感がありありと見える。
果たして彼女の危惧は本当なのか、被害妄想なのか。

霞ヶ関節の本当の狙い

まずはこちらがAV出演被害防止・救済法(AV新法)。

そしてこちらが困難女性支援法。

法文あるあるなんですが、まず読みづらい。
素人に読ませる気ゼロです。霞ヶ関節が炸裂です。
自分はこれでも士業の端くれなんである程度耐性はありますが、普段法文読み慣れてない人からすると苦痛でしょう。

最もそれが法を作る側の狙いだったりします。
「悪党として、法を破るのは三流、法の網の目を掻い潜るのは二流、法を作るのは一流」なんて言われますからね。


法律内容は最近流行の「中小事業者潰し」

日本の法律というのは言い回しこそ複雑ですが並びはテンプレートに近く、法律制定の目的が第一条に来て、法律内の用語の定義が第二条に来ます。

AV出演被害防止・救済法に関しても傾向は同じでありますが、「性行為映像制作物」「電磁的記録」「特定電気通信役務提供者」等々、内閣法制局が無理くり日本語にしようと悪戦苦闘しているのを見ると、ちょっと笑えてしまいます。

内容に関してですが、感想は当事者達が散々酷評している、というのが全てではないかと思います。

そこらは検索して頂ければいいでしょうが、最近はどの業界であろうと(某ブ○カスのエコノミックヒットマンの主張そのまんまな)「資本力があり法整備についてこれる少数の大企業だけを残そう、ゾンビ企業は非効率なので潰すしかない」という、現代日本人が大好きな構造改革、産業整備誘導的法整備がされていますので、この業界にもその余波が到来したんだろうという印象です。

(ヤツの場合はその先も見ていて、利益が良さそうな日本の中小企業は買い叩いてやろうという目論見もチラチラ見えるのだが、これは本稿とは関係ない話なので割愛させてもらう)

問題なのは「法」より「人」

最大の問題は第四章です。
この章は3つの条文から成立しているのですが…

第十七条(相談体制の整備)
第十八条(その他の支援措置等)
第十九条(被害の発生を未然に防止するための教育及び啓発)

例の騒動後なのでどうしても穿った見方をしてしまうんですよね。
「相談体制の整備やその他支援措置って、要は例のNPOが入り込む為の法的根拠ではないか?」とか、「教育や啓発って、オルグの事指してるのかな?」など。

この疑念は困難女性支援法をより読み進めていくと明確化する。

第二条
「この法律において「困難な問題を抱える女性」とは、性的な被害、家庭の状況、地域社会との関係性その他の様々な事情により日常生活又は社会生活を円滑に営む上で困難な問題を抱える女性(そのおそれのある女性を含む。)」
(NPO団体がそう見做せば適用されるという恐ろしさ)

第三条第二項
「困難な問題を抱える女性への支援が、関係機関及び民間の団体の協働により、早期から切れ目なく実施されるようにすること。」
(最初からNPOありき)

第九条
都道府県は、女性相談支援センターを設置しなければならない。
(そこに自分たちの『同志』を送り込むんですね。っていうか、自分たちが散々批判していたハコモノ行政やろ)

第十二条
都道府県は、【中略】(以下「女性自立支援施設」という。)を設置することができる
2 都道府県は、女性自立支援施設における自立支援を、その対象となる者の意向を踏まえながら、自ら行い、又は市町村、社会福祉法人その他適当と認める者に委託して行うことができる。
(ハコモノ利権、そして委託業務請負で二重にオイシイビジネス)

もう疲れたので、困難女性支援法にツッコんでいるtoggetter見つけたので貼っておきます。

前にも言ったんですが、そもそも法施行が「NPOありき」な時点でおかしくないか?という話ですが、これも「官から民へ」というのを無邪気に信じている現代日本の民意の現れなので。


悪法でも法、それが法治国家

「どんな技術であろうと、便利な道具であろうと、用いる人間によっていくらでも悪用できる」というのを、工学系の出身者は技術者倫理で叩き込まれます。
医師や薬剤師、看護師といった直接的に人命に関わる職業もそうでしょう。

これは法律にあっても同じです。
法を運用するのは人間、法で人を救うのも人間ならば、法で他人の人生を終わらせる事もできるのも人間です。

残念な事ですが、一部の法曹界関係者はこの視点が抜けているように見受けられます。
それどころか、独善性を発揮して、言外に「言う事聞かなきゃ法でお前の人生終わらせようか?」と脅してくる始末です。
(直接的表現だと脅迫罪なのを熟知しているので、物凄く嫌らしい言い回しをしてきます。手慣れた人間は特に。)
ロースクールで、定期的な講習で、それらを学ばないのだろうか?とも思ってしまいますね。

「悪法でも法は法である」、これは法治国家だからこそ。
だがこの法律は法の下の平等という理念を無視し、利権として悪用する気に満ちており、法治国家としての根幹を揺るがしかねないのでは…と危惧せざるをえません。

良心に期待しましょう。
(無理だろうが。)

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