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花屋兼コーヒー屋になる話〜開店編〜

ということで(前の記事参照)、コーヒーも学んだし、花の仕入れ用に運転免許も取ったし、お店も借りたし、泣きたくなるくらい高いエスプレッソマシンや道具も揃えたし…まあ…あとはなんとかなるでしょ。ってことでいよいよオープン!の回です。


静かなること無響室の如し、誰も来ぬこと禁足地の如し。

2019年の9月28日。
B.H.R COFFEEが目黒区東山にオープンした。
開店当初の営業時間は6:30〜20:30。
どの時間帯にお店の周囲に人がいるのかを知るために14時間営業を実施したのだが、実際営業してみると花の仕入れから開店準備、閉店作業、行き帰りの通勤時間を足すと、なんと実働19時間。
家にいる5時間で晩御飯、入浴、睡眠、その他いろいろをやらなくてならず、だらしないクイックターンで40歳という人生の半分(おおよそ)を折り返したいい歳の僕には本当にしんどかった。

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そんな大変な毎日。じわじわと僕を苦しめていたものの筆頭が、花屋を始めるずっと前からやりたかった「花のサブスクリプション」だった。

今ではうちの店の看板となったこのサービスだが、どう考えても儲かる計算が立たなかった。
それでも始めたのは「そのうちなんかいい方法見つかるだろう」それだけ。
どんどん赤字を作り出すサブスク。そのため、せっかく取得した運転免許を使うことなく節約のために自転車にリアカーを取り付けて、15年以上前に買ったThrasherのボストンバックを改造した花用バッグを背負い「ぼぼ人力」の仕入れをしていた。24時間では到底足りない1日を送る毎日、睡眠時間を削って自転車を漕ぎ、急いで花を買って店に向かうっていうのがとにかく忙しかった。
開店に間に合わせるには家をでて45分かけて市場に到着し、30分で数日分の花を仕入れ、また45分かけて店につかなければならないのだから。

それでもやって来れたのは大変だと思う暇もないくらい忙しかったからだろうなと今は思う。

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結局、フードトラックを導入するまでの1年間自転車で花を仕入れてたんだけど、「早朝、大量の花を背負いリアカーをひく妖怪がいるので調べて欲しい」という依頼が探偵ナイトスクープに投書されるのではないかと本当にヒヤヒヤしていた。
それくらいすごい格好だったのだ。
でも、せざるを得なかった。

そうまでしてもこの街の人々の生活時間を知りたかったんだけど、3ヶ月やってみて気付いたことがある。

「時間とか曜日とか天気と関係なく、そもそも店の前、ぜんっぜん人通らないじゃん…」

僕はやっと理解した。
縁もゆかりもない土地な上、店の前は急な坂道、しかもこの近辺で唯一の山手通り(大通り)に出られる一方通行。大体の車は店の前の細い道を曲がってくるし、スピードもそれなりに出すから歩行者はこの道をさけるだ。
あと、大きな公園があるということは家がないのと同じ意味だということも。

「はい、終わったー。」

僕は心のなかで叫んだが、弱っちい僕は妻に「ノーサイドだ。俺の負けだ。無収入になる俺を養っておくれ」と握手を求める勇気などあるわけもなく、翌日からはあの手この手で草の根全開の広報活動を開始した。思いつく限りのことをとにかく毎日。本当にいろんなことをやった。
開店から3ヶ月が過ぎ店主として初めての年の瀬、そして新年を迎えようとしていた。

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遠くから / 聞こえる羽音 / 60000の / 「いいね」を運ぶ / チルチルの鳥

久々の連休。
そして年明け。からの営業再開。
営業時間は見直したものの、年末と同じ日々が始ま…

いや。
全然違う一年が始まった。

その日は朝から当店のInstagramアカウントのフォロワーが増える通知で画面が埋まり続けている。
なんと、超数少ない常連のお客さんのTweetがバズったのだ。しかも内容はうちの店のこと。
なんと、花のサブスクが僕は何もしてないのに(当時はTwitterすらしてないのに)バズったのだ。

このサービスはお店を始める際に最初からやろうと考えていたもので、そこらじゅうの店が既にやってることだと思っていて、コーヒースタンドと併せることで初めて新しいサービスになると思っていたもんだから、驚いたと同時に「なぜ??」という気持ちでいっぱい。

でもその疑問は、すぐに明らかになった。

うちの店では元々
「“当店指定の花”はどれでもお持ち帰りOK」
だったのだが、
Tweetでは
「お店の花はどれでもOK!」
な感じで書かれていて、それが他の店にはないサービスだったようで(そりゃそうだ。そんなの無理だもん)それがバズったのだ。

なるほどこりゃ大変だ。僕はすぐに訂正を…

じゃなくて、こうなったらTweetの通りにしちゃおう!!


というわけで、その日以来Twitterの通りカウンター上の全ての花をサブスクの対象とし、あたかも最初からそうだったような顔をして営業をしています。
このことがきっかけで本当に多くの方にB.H.Rのことを知ってもらうことができた。
バズるってすごい。本当にすごい。
これを経験できたのはマジ人生ぬ宝。

でもこうして皆さんに「すごい!」って言っていただいたサブスクサービスですが、近所の人のような通える人しか基本的には恩恵がないからバズったところでお客さんがそんなに増えたわけではないのが実際のところ。
(現在はたまにしか来られない人向けのサービスもあるよ)
でも、日本中のたくさんの方から応援してもらったり、うちの店に興味を持ってもらえたり、お客さんがいなくて弱っていた心に最強の栄養をくれました。
本当に僕はラッキーなんだと思うし、そのラッキーをくれたつっきーさん @olunnun 宅方向には偶然にも足を向けて寝ていません。もう、一生感謝!!

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https://twitter.com/olunnun/status/1215193404583202819?s=21

そんな年明け早々超絶ラッキーパンチを当ててしまったわけですが。その後もいろいろと取材などお受けしたりして、おしゃれな雑誌に載ったりして”なんかいい感じ“なB.H.R COFFEE。

と、完全に浮かれてた開店から4ヶ月目。
この翌月から新型コロナウィルスで状況が一変する…

<次回>
「コロナ禍!!そもそもお客さんいないからそんなに状況は変わらない。」
お楽しみに!


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