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シンデレラガールズのアイドルにおける短所とその克服のバランス。

『アイドルマスターシンデレラガールズ』には実に190人ものアイドルがいる。
彼女たちはひとりひとりが非常に個性的で、190人いてもそれぞれのキャラクターが立っており、いわゆるキャラ被りというものがほとんどない
何か1つの属性が共通していたとしても、第2第3の属性があって、きっちり差別化がなされている。
それは私がこのコンテンツを愛する大きな理由のひとつでもあり、190人それぞれに担当プロデューサー(濃い~ファン)が付いているのが他コンテンツのユーザーからすると驚異的に映るそうだ。
なんとも誇らしい話ではないか。

アイドルの個性の話を先程したが、その個性というのは、趣味や特技であったり、好きなものや嫌いなもの、得意不得意などがそれに相当する。
中でもいわゆる長所・短所はそれぞれのアイドルのバックボーンを補完し、キャラクターに深みを出すためのとても重要なファクターだ。

シンデレラガールズはアイドル育成コンテンツである(『アイドルマスター』の名を冠している以上当然だが)。
アイドルたちは各々自分の長所と短所を自覚し、プロデューサーや仲間たちと協力しつつ、長所はより伸ばし、短所は克服しようと懸命に日々努力しながらさらに上を目指す。
その姿が美しく、我々プレイヤーはそんな彼女たちの手伝いをあらゆる手段で行なうのだ。

さて、シンデレラガールズにおける「成長」とは何だろうか。
アイドルとして成功すること、そして人間としての魅力の増強がその二本柱だろう。
アイドルとしての、人間としての成長は同じではない。
「アイドル◯◯」はみんなもので、「人間◯◯」はあくまでその人個人のものだからだ。
だがその2つは密接に関わっていて、個人の成長はアイドルとしての自分の魅力を引き立たせ、アイドルとして成長すると個人としての魅力も当然増す。

ところが、特にフィクションの世界においては短所は必ずしも欠点でしかないとは限らない
「短所=チャームポイント」という図式が成り立つのだ。
いわゆる「ドジっ子メイド」なる存在がその典型的な例であり、現実ならメイドさんがドジばかりしていては即解雇ものだが、フィクションならそれでも努力する姿が共感を呼び、魅力的なヒロインとして描かれる。
ここで注記しておきたいのは、「だから短所はそのままでいい」のではなく、「それを克服しようとし続ける」ことが重要だということだ。
甘やかしの上で胡座をかき続けるアイドルなど愛されはしない。

実は難しい問題がもうひとつある。
完全に克服してしまってはいけないということだ。
先程とは矛盾することを言っているようだが、正鵠を射ているのだから仕方ない。
端的になぜかを説明すると、チャームポイントの1つが失われてしまうからだ。
そう、「短所=チャームポイント」なのだから。
そこで、完璧に克服しない絶妙なバランスこそが大事になってくる。
99%まで治したとしても、1%は残すべきで、「そうそうこんな設定あったあった!」と良いタイミングでファンに思い出させる武器の1つを放棄してしまうのは下策だ。
0か100に極振りしないことで人間性が生まれる。

ではでは、甚だ前置きが長くなったが、シンデレラガールズの場合を見ていくことにしよう。
シンデレラガールズの場合、私は「ほぼ克服」「改善途中」「ほぼそのまま」の大体3段階に分けられると考えている。
以下にその内訳を列挙する。

<ほぼ克服>
○ 関裕美:笑顔が苦手
○ 北条加蓮:病弱

<改善途中>
○ 一ノ瀬志希:失踪癖
○ 大沼くるみ:人見知り
○ 黒埼ちとせ:虚弱体質
○ 白菊ほたる:不幸体質
○ 多田李衣菜:にわかロッカー
○ 双葉杏:働きたくない
○ 星輝子:孤独癖
○ 前川みく:魚嫌い
○ 三船美優:流されやすい
○ 三村かな子:過食
○ 森久保乃々:閉じこもり

<ほぼそのまま>
○ 梅木音葉:不器用
○ 瀬名詩織:海が好きだが泳げない
○ 道明寺歌鈴:ドジっ子
○ 松尾千鶴:本音ダダ漏れ
○ 夢見りあむ:炎上癖
○ 和久井留美:猫アレルギー

パッと思い付くのはこんな感じだろうか。
抜けがあったり解釈違いはご寛恕願いたい。
以後この情報を元に語る。

「ほぼ克服」は実に少ない。
それは前述したチャームポイントを失うことにつながるからで、失ってもいい短所であった裕美の「笑顔が苦手」と加蓮の病弱体質がここに入っている。
だがこれらは決して黒歴史扱いではなく、「昔はこんなんだったよね」と笑って話せる過去の話となっている。
いわば「持ちネタ」として昇華された設定と言える。

やはりと言おうか、最多なのが「改善途中」
その度合は各自様々だが、それを克服しようとする姿が、まさに現在進行系のエピソードとしてキャラストーリーの一部になっている。
特に李衣菜のにわかロッカーや杏のだらけ体質が完全克服されてしまってはキャラ崩壊につながるのは明らかで、「完璧に克服しない絶妙なバランスこそが大事になってくる」と前述した理由がよくお分かりいただけることだろう。

そしてラストの「ほぼそのまま」だが、ここにカテゴライズされているのは、そこにあえて極振りさせてしまうからこそ面白い、キャラの魅力を際立たせている要素だ。
炎上したくないから気を付けているつもりでもやっぱり炎上してしまうりあむ、猫が好きでたまらないのにくしゃみが止まらない和久井さん、神社の境内以外では筆舌に尽くしがたいレベルのドジっ子の歌鈴。
それでこそ、なのだ。

ありとあらゆるものが変わっていく。
変わらざるを得ない世の中。
シンデレラガールズもその例に漏れない。
変わっていく部分、変わらざるを得ない部分がある。
その過程でどうしても反発も生まれてしまうこともあるだろうが、最終的に幸せになる人が多くなってくれることを望んでやまない。
だが、変わらないもの、変われないもの、変わらない方がいいもの、は確かに存在する。
運営には極力その匙加減を間違えて欲しくないものだが、運営もユーザーも人間である。
人間に失敗は付き物だ。
だったらその失敗の経験を元に成長すればいい。
コンテンツが継続している間はそれができる。
アイドルとともに運営もユーザーもいっしょに成長できる、それこそが理想のコンテンツ像ではないだろうか。

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