ドミナントガシャが内包していた2つの大きな「誤算」。
『ドミナントガシャ』は『アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージ』(以下『デレステ』)にて2023年9月23日に登場した新規ガシャだ。
それまでのボイスなしアイドルの希望だった『プレミアムオーディションガシャ』の枠を使い、『シンデレラフェスノワール』の新規アイドルの追加を廃止してまで実装した鳴り物入り。
センター効果の『ドミナント・デュエット』はミューチャルのようにステータスを2つ参照しつつも、さらに「〇〇楽曲で××アイドルにタイプボーナスが発生しボーカルアピール値150%アップ、〇〇アイドルのダンスアピール値160%アップ」と2属性の効果を増強。
特技の『ドミナント・ハーモニー』は「〇〇楽曲で××と〇〇のアイドルのみ編成時、13秒毎、高確率でかなりの間、××アイドルのスコアアップ効果と、〇〇アイドルのCOMBOボーナス効果をそれぞれの人数に応じてアップ」。
説明文が長い!
遊戯王カードのテキストかいな。
これまでデレステは新特技が出る度にスコアが跳ね上がってきた。
アンサンブルしかり、ミューチャルしかり、オーバードライブしかり、トリコロール・スパイクしかり。
まあオバドラは育ちきったライフスパークル編成よりもスコアが出なかったりするのでアレとしても。
そしてこのドミナント・ハーモニーも例外ではなく……いや、これまで以上にスコアのインフレが起きた。
実装直後にSNS各所で「デレステくん壊れちゃった」報告が見られたものである。
それほどまでにセンセーショナルだった。
当然最高スコアを出そうとしようとすると、理想編成を組む必要がある。
だがこのドミナント理想編成はとにかく編成難易度が高い。
前述のように参照属性が二重にあり、ドミナント・デュエットをセンターとし、さらにミューチャル、オルタネイト、オーバードライブ、オーバーロードを最適の秒数で揃える必要がある。
あのオバドラですらも早速ドミナント編成のパーツになった。
だがまだこれは「誤算」ではない。
ユーザーにとっては誤算だったかもしれないが、運営にとっては意図したものであってもちろん誤算などではないからだ。
むしろ誤算どころか運営にとっては計算通りだったことだろう。
最初の内は。
『ドラゴンボール』世界さながらの突然のパワーインフレにスコアアタック勢が息を吹き返し、ライバルに遅れを取るものかとドミナントガシャを回した。
運営としては思惑通りの展開にさぞやほっと胸を撫で下ろしたに違いない。
が、そんなスコアタ勢でも全員が全員ガシャを回せるわけではない。
デレステは他のソシャゲに比べて同じカードを重ねる恩恵がかなり少ないゲームだ。
1枚引ければ大抵の場合は事足りる。
とはいえ、毎月毎月新規カードは追加される。
前述したように属性の参照部分が違うので、なおさら状況に応じて使い分ける必要がある。
人はデレステにだけ金を遣うわけではない。
あっさり引ければ苦労はないが、そこはソシャゲのSSR排出率、沼る時はとことん沼る。
しかもドミナントガシャはSSR排出率2倍のフェスではない。
ひとり、またひとりと歴戦の廃課金兵たちが脱落していく。
言ってしまえばデレステにおける急激な貧富の差の拡大を招いたのだ。
ボイスありの人気アイドルばかりをピックアップし、ヘビーユーザー相手に向けての商売にシフトチェンジしたデレステ運営。
持たざる者たちからの不満もいずれは沈静化するであろうし、かつての勢いまでは取り戻せないものの軌道には乗るかと思われた。
しかし、ここで大きな「誤算」が発生する。
デレステの縮小運営方針の決定である。
その報は瞬く間に拡散し、「デレステサ終(サービス終了)」「オワコン」の文字がインターネットに踊る。
嘘か真か「2025年内にはサービスを終了するとのリークが中国からあった」などのニュースも飛び交う。
長くてあと2年。
その噂が本当だろうがそうではなかろうが、縮小運営方針自体は厳然たる事実だ。
終わりの見えているコンテンツにこれ以上金を注ぎ込むのってどうなの?
ならばその金を他に回した方がよほど将来のためなのではないか。
当然そういう結論に大多数が辿り着く。
事実、縮小運営方針が発表されてからセールスランキング上位50位の常連だったデレステは見る影もなくなってしまった。
そしてもうひとつの誤算。
ドミナントガシャに最初に登場したのはSSR[ラブリー・ラブミー]渋谷凛。
この記事のサムネイルにもなっているものだ。
なるほどかわいい。
凛の普段ではなかなか見せない部分の魅力の強調にプロデューサーたちが沸き立ち、キャラの魅力でもガシャが回った。
次に登場したのはSSR[孤星のプライド]城ヶ崎美嘉、その次はSSR[スプラッシュ・マイ・ラブ!]佐久間まゆ。
いつものようにクール、パッション、キュートと属性が持ち回り、人気アイドルたちの新たな魅力でひとしきり盛り上がった。
だが、その盛り上がりも長くは続かない。
ひとりが気付くと、ひとり、またひとりと気付き始める。
「コンセプト、シンデレラフェスノワールと同じじゃね?」
と。
ご明察。
まさにその通り。
クールアイドルがキュートな一面を見せ、パッションアイドルがクールに魅せる。
別側面を見せ続けてきたノワールと何が違うというのか。
運営にしてみれば「2属性スキルなんだからしょうがないじゃん!解釈一致じゃん!」と声高に叫びたいところだろうが、確かに間違ってはいなくともそこに新鮮さはない。
そういった意味でもデレステというコンテンツの限界を感じたユーザーは多かったと聞く。
デレステにこれ以上新しいものは期待できないのか。
「失望」の下り坂に歯止めは利くのか。
ドミナントガシャはこれからどうすべきなのか。
実のところ、いっそ下手なことならしない方が良い。
このままの路線を貫いてしまった方が良い。
幸か不幸かシンデレラフェスノワールはすでにその役割をほぼ終えた。
新規SSRは追加されず、その代わりSSR排出率はさらに倍になった。
ドミナントガシャをどうこうしてブレさせるよりは、ノワールの方をこそ変質させたのは不幸中の幸いならぬ悪手の中の妙手だったと言える。
これ以上どうにかしようとするならもう常設化するぐらいしか手は残されていないだろう。
「ドミナント」とは、「支配的な」「優位に立つ」との意味を持つ。
確かにスコアを出すことにおいては現在支配的だ。
対して優位に立てたのはシンデレラフェスノワールにぐらいのものだ。
いや、ドミナント編成を組める者が組めない者に対しての優位か。
『アイドルマスターシンデレラガールズ』王朝の末期に現れたドミネーター(支配者)。
なんともとんだ暴君だ。
何かのきっかけで名君と生まれ変わるのか、それとも我が道を往く裸の王様か。
支配されるだけの民の声がその耳に届く日は来るのだろうか。
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