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ボカライフ2019年の話

はじめに

 新年あけましておめでとうございます、B,Fです。年越しはずっと行きたかった「nagomix COUNTDOWN」で過ごしました、どちゃくそ楽しかったのでマジで行ってよかった。

 さて、2020年最初のnoteは、2020年を迎えるために2019年に別れを告げた「VOCALIFE」のセトリの話をさせて頂きます。(2019年の内に終わらせておけってのは言わないで)

 「VOCALIFE」のオファーが来たのは10月下旬、リスナー仲間での限界飲み会のさなかでした。周りのリスナーはいつの間にか皆DJをしている中、私たち生き残ったノーマルリスナーはあの手この手でDJ化しようとするリスナーDJの甘言から逃れてきた訳ですが……。この日はお酒が美味しかった。

 普段ウィスキーをパカパカ飲んでも酔わない私ですが、この日は結構酔っぱらってしまっていて、気持ち良さに浸っていました。そんな中、割と唐突にもなか最中さん(@minaaa1267)が

もなか「B,Fさん、今回のボカライフ出ません?」
私  「いや~でも機材買うお金とか無いんで~」
もなか「貸しますよ???
私  「貸しますよ???????????」
もなか「だから出てくださいよ~~~」
酔払い「……出ちゃうか~~~~~~~~~~~~~!!!!」

……と、まあ凡そこの様な会話の流れで酔っ払って気の大きくなっている私はOKしてしまったのであります。
(因みにこの後私は急性アルコール中毒で救急搬送されました。良い子はマネしちゃだめだぞ☆)

 そんなこんなでDJデビューをする事になった私は、無い頭を捻ってどんなセトリにするか考えました。2019年といえば、色々な方が仰っている様に「人間の年」なんですよね。人間の、VOCALOIDに対する叛逆、VOCALOIDとどう向き合っていくか、そんな事を考えさせられる年でした。

 なので最初はシンプルに「VOCALOIDと歌ってみた」特集にしようかな、なんて考えていたんですがセトリを組む内に「なんか……なんかコレじゃないな私がしたい人間。」と思い直し、そうだ私の思う人間観をやろうと考え、「ヒト(僕/私と君/あなた)」を主軸に据えて組みました。そんなセトリがこちら。(※2020年8月21日 画像差し替えました)

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 さて、ではここからはそれぞれの曲について解説(私の限界オタクトーク)をさせて頂きます、やっていくぞ!

0曲目:a l m o s t b u t n o t (by 是) 

 いや早速セトリに入ってないやんけ!!!とおっしゃりたい気持ちは良く分かります。けれどこの曲から私のDJは始まっているようなものなんですよ。私は3番手を務めたのですが、直前の2番手であるてむらさん(@temura₋vit)のラスト曲がこの曲でした。最高の曲で繋いでくれてありがとうてむらさん。

 こちらの曲は、音として聴こえてくるのは日本語なんですが、MVに表示される歌詞は英語になっています。例えば最初の歌詞「黒い熱と飲んだ」と聴こえますが、表示されているのは「I took with coffee」と言ったように。コーヒーを黒い熱と表現するの、すこなんだよなぁ

 私にとってこの曲の肝は「もう去年のこと(last year)」という歌詞です。全体的な内容としては、「君が僕のことを見ていた事に気付いていたけれど、僕はそれから逃げ出してしまった。そんな君に『あと少しああだったら……』と思いを馳せている僕。」と解釈しています。つまり過去を思う曲なんですねこれ。

 2018年から2019年に、2019年から2020年に、2番手から3番手に、”今”はどんどん過去に塗り替わっていきます。泣きたいくらいに寂しいけれど、でもそれも思い出として大事に抱えて生きていけるのも人間です。いや本当に最後にこれ持ってきてくれてありがとう。

1曲目:ホロー (by pond)

 2019年でpondさん入れない訳がないんだよなぁ!
はいここから私のセトリ、1曲目です。狙い澄ましたかの様に前曲と対比できる歌詞「空っぽのままで 息をつないでた 君の後ろ姿を ただ見てただけだ」が初っ端から来るんですよ。こちらは「君の後ろ姿を見つめることしかできなかった。」という悔恨の曲となっています。

 またMVは全体を通して海、または水が映されていて、実は前曲の歌詞にも水が出てきます。どちらも恐らく、夏の海や温かい水ではなく、冬の凍てつくような冷たい水。こういった面でも主人公の心情が表現されている様に感じます。

 曲の音もまたそういった静かな、されど重量感のある感情を表現するものとなっており、間奏部分が波立つ海を背景に進行していきます。私は基本歌詞優位で聴くため、間奏部分がメインとなるタイプの曲はあまり聴かないのですが、これにはボコボコにされましたね。

2曲目:ありふれたさよなら (by ピコン)

 ここで明確に「別れ」を提示した曲に繋げましたピコンさんの曲大好き本当に2019年に投稿してくれてありがとうございます。

 こちらも実は前曲と繋がっているんですよね、2番の歌詞が「空っぽのままで 耳を塞いでた 電線を覗く月は 少し歪んでた」なんですが、この曲は「嗚呼 月が咲いていた 覚えたいのに 見失っていた」で始まります。前曲を1番+間奏まで流し、こちらに繋げたのですが歌詞の親和性もあって綺麗に繋げました。

 先ほどまでと違い、こちらは死別の曲なんですね。数ある別れの中でも最上級の、絶対的な別れ。しかも多くの時間を過ごした「」との永遠の別れ。何も考えられず、耳を塞いで、別れを拒絶しただ泣くことしかできない。そんな日がきっと、私にも、これを読んでいるあなたにも訪れるでしょう。

3曲目:灯/夜 (by amahisa)

 こちらは先ほどまでの曲と少し毛色が違います。また流していない部分での歌詞繋ぎなのですが、この曲は「透明な器に、太陽の光が差し込んで 透明な器に、月の光を満たしていく 空っぽのまま、私は」から始まります。前曲では「君を亡くした」空っぽな「私」、こちらは「自分が見当たらない」空っぽな「私」。そんな「私」が「あなた」を含めた周囲の人間と交流することで満たされる、それをポエトリーリーディングという形で描かれています。

 タイトル「灯/夜」の通り、暖かな日差しの後には冷たい夜がやってきます。今回は夜から暖かい方へと展開させたかったため、夜に当たる部分から繋ぎました。そこでまたこの子「私は、私を見つけるために、ここにいる」って言うんですよ、強い。君は空っぽなんかじゃないよ。

 そして、自分が夜空に寂しくも輝く、誰にも触れられない声も届かない星であることに気が付く。それでも、「誰かの希望であるならば」と「自分のために」輝き続けることを選ぶ。「空に輝く孤独な星が 夜を照らす光になりますように あなたを照らす灯でありますように みんなが、いっぱい、幸せでありますように」と祈る。私も、あなたも、みんなで幸せになろうという美しい星を、皆さんに知って頂きたかったんです。

4曲目:ヒト (by シバタユウ)

 今回のセトリの要がこの曲、「ヒト」です。限りなく近い「」と「」、この先も共にできたなら……。けれども、「君」が悲しくてしょうがないのなら、「僕」を置いても良いから。そんな情けなくも切実な祈りです、前曲とは祈り繋がりですね。

 「五月蝿く揺れる心臓の音 きっと僕らはヒトだったんだ」、サビで何度も繰り返されるこのフレーズが私が思う人間観が最大限に抽象されています。

 私たちは、誰かとの関係性の中でしか存在を証明できません。私一人では、私は成り立たないのです。この曲ではその誰かは「君」に当たりますね。そしてその誰かに出会う度に、誰かは去っていきます。どんなに近しくとも。その度に、私たちの心臓は五月蝿く揺れる事でしょう。けれど仕方ないんです、だって私たちはヒトですから。涙を拭って生きていくしかないんです。

5曲目:月夜陰り (by ほっくま)

 さて、生きていくしかない事を悟った私たちは今度、変わり映えのしない日々をどう生きていくかを考える。それがこの曲「月夜陰り」です。

 「何か愛してた頃を 思い出して焦がれる 人並みの幸せってどこ?」そんな思いを抱えつつも、大切なもの無しで生きていけるほど強くもない。「ちぐはぐに覚えてきたこの生き方で どこに向かっているんだろう 何を探しているんだろう」と、自分を見つけられずに迷ってしまう。遂には自分をごまかしていた「ずっと繰り返した『大丈夫』も聞き飽きてしまうよ」と、ある種の諦めさえ窺えます。

 自分の生き方は自分で決めるとはよく言いますが、けれどもその生き方は周りから幾つもの影響を受けたものでもあるのです。歌詞には直接、自分以外の誰かは描かれていませんが、ここでも誰かの影は見え隠れしていますね。

6曲目:シャングリラ ガール (by takamatt)

 この曲では先ほどの様な、どこにでもいる普通の人間である「」が虹色の翅を持つ破天荒な「キミ」と異種族交流を果たします。「前髪掻きあげて広めのおでこ フラミンゴみたいに合わせてみたら 見られるのかな?誘い出してよね キミのハチャメチャシャングリラへ」と、散々振り回されるけれどそれが心地よいそんな関係性の二人のお話になっています。

 変わり映えのしない生活はたった一人の誰かによって目まぐるしく変化していきます。結局、変わるためには誰かからの影響が不可欠であるのだろうと読み取れます。そして、「僕」の世界を変えてくれた、自分とは種族も異なる「キミ」もまた、孤独と仲良しな人間だった。つまり、自分に救いを与えた人間もまた、救いを欲する人間であるという二面性を備えている可能性があるのです。

 この二人は最後、手を取って踏切の向こうにあるシャングリラへと旅立つのですが、これは解釈が二つに分かれると思うんですよね。ひとつはそのままの意味で、踏切の向こう側にある別の土地へ行き、そこが二人にとってのシャングリラとなったというもの。もうひとつは、踏切に飛び込む、つまり心中することで決して存在する筈のない理想郷、シャングリラへと逝ったというものです。果たしてどちらなのか……。

7曲目:ミドルノート (by 平目季祥)

 こちらの曲も、「あなた」によって変えられる「」の恋の曲です。恐らくですが、「私」は大人と子供の境い目にいる無知な少女であり、大人である「あなた」に騙されていると薄々気付き始めています。「あなた」にとって愚かで可愛い少女でいられなくなっていく自分と、肌を合わせる事によって香るミドルノートに包まれたままでいたい自分との間で葛藤してしまいます。だから「私」に、ミドルノートを残してほしい、あなた好みに調香してほしい。けれど、もう無知なままではいられなくなってしまったから「これから先は あなた次第」。

 結果として、「あなた」が忘れたことによって二人の関係は終わってしまいます。「二度と香るな 恋の甘美」と叫ぶ少女。二人の関係は一瞬の煌めき、「二人のページ お伽話」であり、残されたミドルノートは「内緒の話 恋の香り」だったのです。そしてその甘い毒はきっと、今後もジクジクと彼女の中を蝕み続けるのでしょうね。

8曲目:ƸӁƷ Break new ground ƸӁƷ

 さてこちらは今度「さよなら 甘く無知な過去」と今までに手を振り、地平辺を掴んだ「僕たち」の曲です。なんとなく、シャングリラ ガールの生存エンドとミドルノートの未来に繋がったら良いな……なんて希望をこの曲に見ています。「夢の奥に 駆り立てる声 疼く背中 衝動に 戸惑いながら 虹の先に 爪を立てる」、小さい翅で懸命に夢に向かって飛ぶ彼らは虹の先、つまりは不可能に爪を立てることができたのでしょうか。

 答えは「どちらでもない」です。冒頭で記した「甘く無知な過去」はつまり、不可能を可能にしてやると息まいていた姿です。目指した新天地は、タイトルの様に崩れ去ります。しかし一方で、夢を共に目指した仲間と手を取り合い、絶望をも乗り越えました。その結果として、地平線をもつかむことが出来たのです。

 望み挑んだ夢は叶わなかったけれども、それに引けを取らないほどの眩しい未来に向かって今度は命を懸ける彼ら、結局変わっていないんですよね。故に「変われなかった過去」と最後に歌っているのかなと。

9曲目:クラッシュ (by DAI)

 こちらは逆に、背中を傷だらけにしながらも歩き続け、一人になってしまった「」の曲です。

 恐らく比喩表現でしょうが、憎い人たちも、愛した人でさえも殺してしまった「私」は、この世界を「苦しみ憎しみぶつけ合い 互いに体を傷つけ合い」「交じり合わない命の世界」だと思っています。「臨み叶うことを捨てたい」し、「失くして消えた世界」を捨てたい。そんな魂の声が世界に届いてほしいなんて歌ってしまう。

 これはある種の真実でもあると思います。「ƸӁƷ Break new ground ƸӁƷ」のように誰かと協力し支えあうこともあれば、この曲のように互いに憎しみをぶつけ傷つけ合うこともある。きっとこの分岐は、ほんのちょっとの差なのかもしれないですね。

10曲目:シスターピロー/シエスタ (by クロワッサンシカゴ)

 次は逆に、傷だらけで煤だらけになりながらも、共にいることを選んだ二人の曲です。この曲の歌詞は抽象的であったり、暗喩が多かったりと解釈が難しいので、他の曲のように細かい解説が出来ないです……申し訳ない。

 「空の飛び方 忘れたの あんなに自由だった 笑いながら 叫び合ったの」とか「恋をした 思い出せるかな 君となら」など「君」との日々に何だかんだ満足している光景に、穏やかな気持ちになりますね。辛い曲が続いていたので、傷だらけになりながらも笑い合える二人が存在するという事が、救いになるように思います。

11曲目:レイトショーの悪魔 (by 物煎餅)

 教室の中で何となく疎外感を感じている「」と夜中に映画へと誘う「レイトショーの悪魔」。学生時代、特に10代の頃はどうしても学校という閉ざされた世界が全ての様に思えてしまいます。そんな世界を窮屈に感じた事がある人は多いのではないでしょうか。そんな彼女の逃げ場を作ったのが「レイトショーの悪魔」です。「私」が自分以外の教室の人間を主人公だと思っていて、それを鼻で笑うように「人波に掻き消えて」「本質が減るから」「夜中に観ようぜ」と映画に誘う。そして最後には大人になった後、今度は悪魔を泣かせてやろうと考えて笑う少女。

 関係性のオタクもびっくりなくらい美味しい関係だな???

 そんな美しくも儚い関係性の二人が紡ぐ物語と感情とが、軽快な音楽に載せて駆け抜けていく。その気持ち良さを味わって頂きたかったんです、私はもう一人で無限に感情になっていました。

12曲目:落ちる水のこと (by aquabug)

 2019年でaquabugさん入れない訳ないんだよなぁ!(2回目)

 前曲でもそうなのですが、人間やその関係性を語る上で学生時代は欠かせない瞬間であると思います。そんな瞬間を今まさに生きている少年少女、ここでは「」と「」ですね。水や砂のように指の隙間をすり抜ける何か、またそれは「止めようとすればするほど すり抜けていく」ものです。

 そして「君」はきっと、色々なものに気付いているんだろう。じゃあ、わかり始めた「僕」のことは誰が受け止めてくれるのか。そんな悩みや不安を抱え、色々なものを分かるようになっていく。

 この曲のすべては、MVのこの言葉に詰まっています。
Children Grow Up By Understanding

13曲目:花束を捧ぐ (by はるりん)

 今度は今を生きる学生ではなく、学生だったあの頃を振り返るこの曲。「」は22歳で、16歳であったあの頃を思い出し、あの時と同じ花束を「」に捧ぎ煙草を吹かします。

 「君に向かった 貶し言葉の全てが 耳を塞いだ 僕の足を掬うのだ」と、もうこの言葉で大方の事を察せます。そしてその後にくる「怖くないよ 期待は遣い尽くしたし 命の方が 可哀想だ」と、「君」に起こった事と自分に対する諦めが伺えます。

 16歳の頃、美味しかったラムネの味は「反芻したって薄れて行く」。そして22歳の今、もうあの頃のように無敵ではいられなくなってしまった。そん時、時が止まった「君」を思い出してしまう「私」。そう、6年も「君」に囚われてしまっているんです。そして「ずっと 君はさ 望まれぬ神だ」「きっと 放せない 痛みを伴う愛なら」「ずっと 僕らは 報われない侭がいいな」と、永遠に逃れられない「私」がそこにいます。

14曲目:カッタル等 (by ギー)

 残念ながらこちらの曲はニコ動・youtube共に動画が削除されてしまいました、もっと皆に聴いてほしかった……。

 前曲とは夏、世界に思いの丈を吐き出すという繋がりですね。この曲は他の曲とは異なり、「」以外の特定の「誰か」が存在しません。人ではなく「」と「世界」との関係性がフォーカスされています。「いっそ全員 死んじまえばいいのに」なんて吐き出してしまう「僕」に対して、太陽も夜も世界も、ただそこに存在するのです。

15曲目:春風に殺される (by Δ)

 この曲は前曲と似通っているようで、少し異なります。世界を呪う「」というのは同じですが、歌われているのは「僕」と「春風」、そしてそんな「僕ら」です。

 好きだった季節である春ですら、今の自分には眩しすぎて暖かな日差しに対してすら下を向いてしまう「僕」。「どうか春の風よ 最低な僕の何もかも全部を ああ 奪い去ってくれよ」と、今の自分に対する諦めが強く出た言葉を吐き出しています。そして独りぼっちが何より怖い「僕」は「不器用だって片付けられたら どんなに楽だろうな」と言い訳を溢します。

 自分自身への諦めというものは、一度心に芽生えると中々拭えないものです。若さ故の全能感から、加齢による落ち着きという意味での諦めであれば、それは成長であり発達段階として正しいものです。しかし、人生や世界にに対する絶望、それによる自分に期待をしない、何をやっても上手くいかないという諦めは……。

 私はこの曲で言うところの「僕ら」の一人でした。今は完全に違うとは言えませんが、「僕ら」の中の奥まったところにはいません。だから敢えて、この曲を流しました。「花束を捧ぐ」「カッタル等」「春風に殺される」は、21歳になった私が振り返る過去です。あの時確かに感じた痛みを、ようやく過去として受け止められるようになった今だからこそ、自分という人間をここでやりたかったのです。

16曲目:ヤーウェ (by ミクミク向上委員会)

 そして世界を呪う私たちは、一方で誰かに救いを求めるのです。この曲でも「」は「子どもの頃 夢見た ヒーローなんて いやしないんだ」と、故に誰も守ってくれず、残酷な迫りくる恐怖に晒され、打ちつける冷血な滴は心を塗り潰していきます。

 先ほど述べた通り、世界への呪いはすなわち世界へのSOSです。「誰でもいいから、助けて。」そんな祈りです。ここでは古代ユダヤ教における唯一絶対の神であり、人類の救済者「ヤーウェ」へ縋るように助けを求めています。「僕を見つけ出して ヤーウェ」と、声が滲むほど叫んでしまう、救いの象徴である「ヤーウェ」に、この想いが届いてくれと。

 けれどもそんな想いこそが、「ヤーウェ」もとい「」を傷つけて失ってします。想いとはSOSの裏にある世界への、自分自身への呪いです。呪いは刃となり、「君」に傷を負わせてしまう。そして気付きます、憧れていたヒーローではなく人を傷つける悪者になった自分に。救いを求めた相手は一転して、救いを求める側へとなります。

 「君を救い出して」でも「夢くらい見させて

 「錆び付いた空は 今日も晴れず」……。

17曲目:GOOD SLEEP FOREVER (by ヨナカ)

 「君の体温が 解けていった」。

 そして、新しい風が吹き始めます。「」と「」はさよならをするけれど「またどっかで逢いましょう 地球が回り続ける限り 絶対なんてないのだ」「だから泣くのは やめにしようよ

 本当はただ強がっているだけの「僕」ですから、涙は浮いてきているのです。手を繋いで居続けたかったのに、今は手の中は空っぽ。けれど「いつか慣れるんだ」と。

 どんな形でも、新しい風は吹きます。「君」がいなくなっても、「キミ」と出会えても、「僕ら」で地平線を掴んでも、死んでも、世界を呪っても。時間は平等に過ぎていき、私たちは生きていきます。

 それがヒトなのです。

 2020年を迎えるために、2019年とそれより前の私、生きていたかもしれない「誰か」たちを見つめ、新しい風を一緒に受けてもらいました。

18曲目:シケイダガール  キルズ ミー (by HaTa)

 私がHaTaさんをかけない訳ないんだよなぁ!!!!!!(3回目)

 私がやりたかった一連の物語は、前曲で一区切りついたのですが、やっぱりHaTaさんをかけたかった。だから私の大好きな曲の中でも特に「」と「」の関係が強調されているこの曲を繋ぎました。

 HaTaさんの曲は全てオマージュ作品であり、元となった小説をブログで公開されています。こちらの曲はメフィスト賞を受賞した白河三兎氏の『プールの底に眠る』が元となっています。鬱屈したものを抱える少年「イルカ」と苛めを苦に自殺しようとした少女「セミ」。互いに好きだと思いつつも、それを決して愛なんて呼ばない。ここではHaTaさんの該当ブログから文章を引用させて頂きます。

「でも私も愛が何なのかわからなくなる時があるよ。世界には様々な愛が蔓延しているでしょ?」
「確かにそうだね。愛は実態がなくて何にでも姿を変えられる。だから何でも愛で片付けることができる」

 そして最後、この曲の一番好きな部分ではこう歌われているのです。

この醜い世界で僕は何を見ればいい? この醜い世界で僕は何に触れたらいい? この醜い世界でくだらぬ愛を歌おう この醜い世界で偽物の愛を歌おう

19曲目:世界と私の複数性に関する小考 (by HaTa)

 最後に、HaTaさんの最新曲を皆さんと一緒に聴きたかった。この曲のオマージュ元はデイヴィット・ルイス氏の『反事実的条件法』です。以下該当ブログから引用。

「われわれがたまたま住んでいる世界の他に可能な世界が存在すると私は信じている。」

 世界も私も、可能性の数だけ存在するという考え。この説を私は支持しています。この曲ではそんな世界と自分の存在は奇跡なのかという問いが歌われています。

 数多の世界線、そこに存在する数多の自分。そんな中から今の幸せな世界線を引けた私は奇跡なのだろうか?いや、くじを当たるまで引けばその奇跡は当然である。世界も私もひとつしかないからこそそのひとつが特別に思えた。けれどもそれは起こった事象分の無数の世界のうちのひとつに居ることを知らないから

 そして「全ての世界、見渡し、笑えている世界があれば 幸せは『可能』なんだ」、反対に「全ての世界、見渡し、泣いていない世界があれば 不幸は『必然』じゃないさ

 泣きたいほど優しい世界観です、大好き。

 最後にこの曲の中で一番好きな歌詞を載せて終わります。

全ての世界の中で、私は何番目に幸せ?
最下位なら嫌だけど、一番ならそれ以上にもっともっと嫌だから

おわりに

 あの場にいてくれた方にも、いれなかった方にも少しでも私がやりたかった事や伝えたかった事がお見せできたかなと思います。ここまで読んでくださってありがとうございました!

 Twitterでも言ったんですが、本当はDJは今回っきりのつもりだったんです。けれども今回思っていた以上に皆さまから好評を頂きました。私自身も、とても楽しかったし、最高に気持ち良かった。

 なのでこれからも続けていこうかなと思っちゃいました、完敗です。まずは機材を買うところから始めないと……。




 ところでAmazonの欲しいものリストってあるじゃないですか?
実はそこでアマギフ募金を募っておりまして……もしこの限界オタク感情noteを読んでくださった方の中に募金してやっても良いぞという懐の深い方がいらっしゃればこちらから募金を……。(乞食してすみません……)

※追記
再現MIXようやく録りました、あれからDJも続けています。こちらからお聴きくだされば嬉しいです。


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